中編3
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創作(S5)

Captain Gail

相変わらず人気の無い町中…

そんな町中を5分程歩いた場所にそれはあった。

『メイリーン市立図書館』

看板にはそう記されていた。

「…!?……メイリーン。」

「何だ?ニック?あんたの別れた奥さんの名前と同じだったか?」

「同じだ…」

「うそ、マジ!?」

マイクとダニエルが思わず声を揃えた。

「ほら、マイク。お前がデリカシーの無いこと言うから、ニックがあんなに落ち込んでるじゃないか…」

「いや、だってさ。まさか当たるとは思わんだろ?」

「2人とも、気を付けろ。」

「ん、ああ、そうだな。

カミさんには優しくするように気を付けるよ。」

「ああ、俺もだ。

傷口に塩を塗るような真似して悪かったな…ニック。」

「お前ら何を言ってるんだ?」

「いや、同じなんだろ?

その図書館の名前とお前の別れた奥さんの名前が。」

「いいや、俺の別れたカミさんの名はクリスティーナだが?」

「……はい、謝り損!

んで、それじゃ何が同じな訳!?」

「俺が昔ナイトメアと戦った場所にもこの名前の図書館があった。それどころか…建物まで同じだ…」

ニックのこの言葉にマイクとダニエルは血の気が引いた。

「まだ前の奥さんと同じ名前だった、の方が良かったな…」

ダニエルが力なく呟いた。

つまり、これでナイトメアがここにいる確率は限り無く高くなる。ニックは彼の過去の経験からそれを悟った。

「ニック、ここに入るのか?」

「ああ、隊長を探す。増援を呼ぶ緊急無線を持っているのは彼しかいないからな…」

「増援を…って、ニックお前、まさか…」

「失敗に終わった任務に、ここでカタをつける!」

そう意気込むニックにダニエルが言った。

「ニック、お前なんか、カッコいいな…」

「ダニエル。悪いが俺にその気は無いぞ。」

ダニエルは微妙な表情をしてしばらく黙り込んだ…

そんな彼の肩をマイクがポンッと叩いて、

「な、言われてみると結構へこむだろ?」

メイリーン市立図書館。

広さは何処にでもある図書館と同じぐらいだろうか。三階建ての中央が大きな吹き抜け造りになった昔ながらの図書館だ。

3人が中へ入ると、上のフロアから誰かの叫び声が聞こえてきた…

「うぉぉ〜!この化け物が〜!!!!」

間違いない、ゲイル隊長の声だった。

「隊長…まだあいつと戦っていたのか?」

「待て、ダニエル。様子がおかしい…」

確かに、ゲイルは誰かと戦っているような叫び声や怒鳴り声を発しては、銃を発砲しているようだが、聞こえてくるのは彼の声や動き回る音だけで相手の気配が全く感じ取れなかった。

不信に思った3人は静かにゲイルの姿が見える場所まで近付いた。

「…た、隊長?誰と戦っているんだ?」

「恐らく、ナイトメアの幻覚と戦ってる。」

「助けないと…」

「待て!」

飛び出そうとしたダニエルをニックが制止した。

「なぜ止める!?隊長を見捨てる気か!?」

「もう、手遅れだ。ナイトメアの幻覚に嵌まってしまえば最期だとさっき言っただろ…」

「そんな…」

「なぁ、ニック。何か対応策は無いのかよ?」

「無い。」

「じぁあ、ただ黙って隊長がナイトメアの餌食になるのを見てるしかないのか?」

「………。」

「おい、ニック!何とか言えよ!?仲間は見捨てないんだろ?だったら、隊長を助ける手段を探そうぜ!」

「止めとけ。それに、もう遅い…」

「……!?な、何だあれ!?」

3人の視線の先で何もない空間に向かい必死に戦っていたゲイルの後ろから、巨大な鎌を携えたゴーレムの様な肉塊が忍び寄っている。

「あれがナイトメアだ…」

ニックは冷静に言ってのけた。

そして…………

床には切り取られたゲイルの下半身と、ナイトメアに握り潰された上半身から滴る内蔵が散らばった。

図書館中が震えるような程の大きな咆哮を上げてナイトメアは動き出した。

3人は、銃のセーフティ装置を解除して、ナイトメアに対して、一応、銃を構えた…

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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