中編6
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遺産と誤算

実体験の話を毎度投稿しております。

恐い…と、いうより不思議な体験が多い。

そんな僕が祖父の家で体験した話です。

その頃、母方の祖父はまだ生きていた。

昔から焼酎が大好きで、無口だけど優しい祖父でした。

祖父は

口癖があり、

『あ、うん。あ、うん。んーそう、うん。』

まーとにかく『うん』の多い人でした。

そんな祖父が亡くなった。

自殺だった。

【アルコール依存症】

この病気のせいで、首を吊り 楽になった。

やめたくても、やめれなくて周りの説得なんて無視していた祖父が

とうとう周りの人達に危害を加えるようになった。でも更に周りの人間達は禁酒させる為に縛りつける。

観念した祖父は、引きこもりになった。

そして、死んだ。

周りの人間は、みんな自分達がしてきたことを後悔した。

どうせ死ぬなら、好きなことをやらせてやればよかった…

言い過ぎたよね…

そんな声が、通夜の席で言われた。

そんな通夜の席で、遅れて登場したのは

祖父の娘(長女)家族だった。

僕の母は次女だ。

遅れて登場するなり、禁酒をしなければよかったんだよ。

自分は、祖父の唯一味方だった。

お前らが悪い。

長女と、その夫は

みんなを敵だと、祖父の敵だと罵った。

そして通夜の席で、放心状態の祖母に

『農業は、うちがするからね…』そう言う長女の口は笑っていた。

それに気付いたのは、僕と父だった。

祖父は農家をしていた。

持っている土地は10兆坪以上…

僕には、どんだけ広いかわかりませんが…

長女は、それを狙っているようでした。

1坪1円で売れば、10兆円。

でも、山や田畑が多いから買う人はいないと思うけど

農業したい人や、資産が欲しい人はいいのかもしれない…

死んだ祖父の土地を、祖母にねだり

遺産を全部頂く…そういう風にしか見えなかった。

それを黙って見ていた父が故人の前で遺産の話をするなんて非常識だと、言った。

しかも、父からすれば義父だ。

その場は、とりあえず納まりましたが

葬儀が終わってからが大変でした。

うちの親と、長女家族との遺産を巡った争いが始まった。

うちの父親は、遺産は祖母に全て渡すべきだ。

長女は、面倒見てきたのは私だから遺産は私のものだ。

意見が食い違う。

祖母は、好きにしろ。そんな感じだった。

僕も、どっちでもよかった。

残された祖母よりも、みんなは遺産に執着した。

それから遺産の話は進展することなく、半年が過ぎた。

長女の夫が、遺産が手に入るだろうと市議会に立候補していた。

そんな時、祖父の手帳が出てきたそうだ。

しかも6つも。

祖母が発見したらしい。

親戚一同集まった。

鍵付きの厚い辞書のような手帳だった。

鍵屋を呼び、ピッキングのような要領で手帳を全て開けた。

そこには、遺書があるんじゃない…

遺産は誰に…そんな話ばかりしている。

僕には、一切興味はなかった。

遺産なんて(土地)あっても福岡で働くことが決まっていた自分には必要なかった。

弁護士も到着し、いざ弁護士が手帳をあけると目を見開き口をポカンと開けた。

10分くらい読んでいた弁護士は

部屋の端っこにいた僕を呼ぶ。

まずは、あなたから読んでください。

父でも母でもなく、長女家族の誰と言うわけでもなく僕が最初だと言う。

みんなが不満そうに僕を見た。

その分厚い手帳を手にとり、読み始めた。

そこで、すぐ気付いた。

日記だ。

そこには、その日あった出来事や仕事のこと、孫や娘のことなど

祖父の思っていることや心情が記載してあった。

読みすすめると、どうも毎日書いていたわけじゃなく2、3日に1回とか毎日書いてたり、1週間くらいあいたりなどまちまちだった。

僕のことが、よく書いてあった。

僕が読んでいる手帳には、僕が幼稚園から小学生になるあたりのことが書いてあった。

どんな気持ちで孫を見ていたのか、小学生になったときにランドセルをプレゼントしたら喜んでいたとか、将来が楽しみだとか…

小説の主人公のように、僕を中心にして書いているようだった。

僕以外にも孫は4人いる。でも、僕を中心に手帳は書いてあった。

だから、弁護士も…

弁護士は、まず血縁に近い親と長女側に2冊ずつ渡した。

1冊は、僕。

1冊は、弁護士が読んだ。

6つある手帳を、みんな黙々と読んだ。

どうも、祖母はこの手帳を知っていたようで

読もうとはしなかった。

僕は、後悔した。

こんなにも、こんなにも祖父に愛されていたのか…風邪をひいたとき、病院まで送ったことを書いてある。

僕には記憶にすらない。

でも祖父の気持ちは、何年たっても変わらなかったようだ。

祖父は、すごく優しかった。

無口だったけど誰よりも僕を愛してくれていたんだ…そして日記に綴り、思い出を風化させないようにしていたんだ…

そう思うと、涙が溢れてきた。

悪態をついたり、迷惑をかけたりしたこともあった。

それでも、嫌いになることなく

愛してくれた。

大きくなってから、話すことも少なくなり

祖父の家に行くことも少なくなった。

そんな時に、電話がかかってきたりしていた。

その度に面倒くさいと、一言二言で話を済ませていたことを、申し訳なく思った。

ひどいことをした。

なんで、その時に気づかなかったんだろ…

もっと、話ことはたくさんあったはず。

祖父の誕生日に何もしなかったけど、僕にはしてくれた。

思い返せば、思い返すほど後悔と申し訳なさで涙が止まらなかった。

ごめん。

ごめんなさい。

声が届くなら、謝りたかった。

そして、感謝してることを伝えたい。

人って、失って初めて気付くんだって実感した。

そして

僕も心のどこで気付いていた。

冷たくしていることを。

その時は、罪悪感とかなくて

かまってほしくない…それだけだった。

もう子供じゃないんだから…

そう強がっていた自分がいたんだ。

ごめんなさい。

何度謝っても、届かないのに…涙だけは止まらなかった。

自殺させてしまったのは、僕のせいだと錯覚してしまうくらい頭が混乱した。

そのとき、不思議なことが起こった。

警察が来た。

祖父の家に集まった親戚一同、僕も含めて何事かと思った。

庭に警察車両が2台入ってきたのだから。

みんな、キョトンとしている。

警察の方が、家に入ってきた。

『今、警察署に電話があり6ヶ月前に亡くなった○○さん(祖父)は自殺じゃなく他殺だと…』

半年前、警察が検証し自殺だと断定した。

なのに今さら他殺で犯人がいるなんて…

警察が続けて話し出した。

『ここに集まった人達の中に犯人がいるってわけじゃなくて…証拠があると連絡がありましたので…』

そこで、すかさず弁護士が持っていた6つの手帳の1つを警察に渡す。

『たぶん、これです。』

わりと新しい手帳だったので、死ぬ前に書いた手帳だろうなとは想像がついた。

そのあと警察に全部の手帳を渡した。

弁護士が、前もって電話したのだろう。

それから2週間後

長女の夫が事情聴取を受けた。

父から、真相を聞かされた。

【アルコール依存症】が苦しくて、自殺したのではなく

遺産で悩んでいたそうです。

長女の夫が毎日のように祖父の家を訪ねては、遺産を自分に渡せと精神的に追い込んだようです。

それが、あの手帳に記載していたようでした。

その後、遺書も見つかり遺産は僕のものになりました。

しかし、福岡にいる自分には必要のないものでしたが

祖父との思い出がつまった田畑で手伝いをしたことや

遊んだことを形にして手に入れたようなものでした。

僕には、思い出が遺産だった。

後日、弁護士に会い

遺産の手続きの話をしました。

弁護士が証拠だと核心して、手帳が見つかった際に警察に電話したものだと思って話をしていると弁護士は

『自分は電話をしていない。』

そう言った。

じゃ、誰が警察に手帳があると電話したんだろう…

今でもわかっていませんが、年輩の男性で

やたら うん、うんと言う人だったと

父から聞いたのは、それから 2ヶ月後です。

それは長女の夫が市議会選挙にかかった金を払えなくて破産した翌日でした。

日記が、長女の夫には誤算だった。

怖い話投稿:ホラーテラー ななしさん  

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