短編2
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ながちゃん

 以前『町内放送』という投稿を致しました者です。

 私の東北の田舎で起こった、小さい頃の思い出について、お伝えします。

 小学校2〜3年生の出来事と記憶していますが、近所に『ながちゃん』という方が住んでいました。近所といっても、隣の家まで100mほど離れているような田舎だったので、彼の住まいや家族構成などは曖昧です。

 『ながちゃん』は40代くらいの、汚い格好をしていて色黒で、顔の皺の多い男性で、夕方になると、どこからともなくやって来て、畑で農作業をして、暗くなる頃に帰るという暮らしをしている方でした。

 彼は少し知的障害があり、年中長靴をはいていることから、『ながちゃん』とからかって遊んでいた記憶があります。

 ある日、ながちゃんが猫の鳴き声を真似して、とうもろこし畑の方から私たちを誘き寄せようとしていました。それに騙され私たちは、無性に腹がたち、翌日ひどくからかってやろうと約束しました。

 明くる日、また同じように猫の鳴き声をしている彼に罵声を浴びせ、鎌を持って追いかけてきたら、寸でのところで逃げるというスリルを楽しんでいたら、友人のケン○チ君が転んでしまいました。

 ケン○チ君は、ながちゃんに両足を引かれて、あっという間にとうもろこし畑の中へ引き摺り込まれました。

  

 背の高く繁ったとうもろこし畑の中からは、ケン○チ君の叫び声が聞こえ、私ともう一人の友人は、一瞬目を合わせましたが、怖くなってお互いの家に全力で走り去りました。

 家の中では、いつながちゃんが訪ねてくるかと震えていましたが、しばらくして気持ちも落ち着き、いつしかテレビに夢中になって、さっきの出来事も忘れてしまいました。

 翌日、小学校に登校し、ケン○チ君に昨日の事を謝ろうと思いましたが、その日は休みでした。そして次の日から、彼が学校に来ることはありませんでした。

 学期の終わりに、先生から、『ケン○チ君が、遠い学校へ転校しました』と、一言だけお話しがありましたが、詳しい事情は伝えてもらえませんでした。

 ケン○チ君の両親は、まだ同じ家で暮らしているようでしたが、いま思い返して見れば、とても怖い思い出です。

ひとが一人いなくなっているのですから。

 喉に刺さった小骨が取れないような、幼い日の記憶です……。

怖い話投稿:ホラーテラー 佐高☆将棋班さん  

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