短編2
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光の射す方へ

前に「てんとう虫」を投稿した者です。じいちゃんの戦争中に体験した不思議な話をもう一つ。

その日は激しい銃撃戦だった。死体はいたる所に転がり、あちらこちらで爆発の音がする。火薬と焦げた臭いが鼻をつく。

その日はまさに生きるか死ぬか…朝からそんな一日だったらしい。

戦況はというと、米軍が徐々に占領してきていた。

当時の日本は敵に背をむけ逃げる事が許されなかった。それをしてしまえば愛国心を否定する行為に等しく、つまり非日本人扱いとなる。帰れば罰が待っている。

友が一人、また一人と命を散らせていく。

逃げ出す人ももちろんいた。

銃撃戦が開始されてから何時間か経った後、じいちゃんの弾が底をつきそうになった。

長期戦にもなれば頭を使って計算しながら行動しないと、後に生死に関わってくる。

が、基地本部に戻ろうとしてもかなり遠く、この銃撃戦の中をかいくぐるのは難しかった。

四方八方塞がれた状況だった。敵がジリジリ前方から攻めてくる中塹壕で一人、正座の姿勢で冷静になり考えた。一刻の猶予さえない。

頭の中で選択肢は2つ。

自決か銃剣の剣部で体当たりをするか…

「お国」の為ならどちらにせよ、「正当」な行使方法だった。

じいちゃんは後者を選んだ。

理由は一人でも敵兵を殺れるなら…そう思い構えた。

必ず銃撃戦にも「間」がある。ほんの一瞬だけ静寂を包む時が。それは相手が弾を補充したり、無駄撃ちをなくす為に。

その時をただひたすら待つ。あとは飛び出すタイミングを待った。

何分経っただろう。

それまで耳をつんざくけたたましい音がピタッと鳴りやんだ。

「間」ができた。

じいちゃんは勢いよく塹壕から飛び出した。

待ってましたといわんばかりに銃弾がじいちゃんめがけて降り注ぐ。

できるだけ当たらないようにジグザグに走る。

10メートル位走ったとこで足に痛みが走り、バランスを崩しながらその場に倒れこんだ。

弾がふくらはぎをかすめた。倒れたとこは運よく大人一人分すっぽり隠れられる岩場だった。じいちゃんの頭上を銃弾が飛び交う。

倒れたとこは良かったが、状況はさっきよりも最悪だった。

敵との距離が縮み、足に負傷をしてしまったからだ。

仰向けの状態から迷う事なく覚悟を決めたじいちゃんは自決を決意し、腰に装着してある短剣を取ろうとする。

が、それはなかった。

怖い話投稿:ホラーテラー 万年みひろ命さん  

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