短編2
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光の射す方へ3

少し足早に進むと銃声が三発聞こえた。すぐに身を屈めた。洞窟の中での発砲は鼓膜が破れそうだった。

じいちゃんは二人に

「大丈夫ですか?」

と聞くと、

「大丈夫ですよ」

「大丈夫だよ、おじちゃん」

それを聞き安心した。

中は外と違い肌寒かった。洞窟の中は真っ暗で何も見えず、時折指に痛みが走った。

尖っている岩に指をぶつけていたからだと思う。

ふっ、とじいちゃんはある事に気付いた。

前の二人は光もなくよく道が分かるなと。

光もなく手探りだけで前に行くのは不可能。不思議に思った。

後ろを振り返ると微かな光はまだ見えていた。身の危険を感じたじいちゃんは先を急いだ。

「急ぎましょう」

その声でじいちゃんは振り返ると闇の中に一瞬二人の形が見えた様な気がした。それを見て少し安心した。

少し進むと前の二人が小さな声で会話を始めた。

聞く気はなかったが洞窟の中はほんの小さな咳でも「普通に」聞こえてしまうほど。

「母ちゃん、お腹が痛いよ」

「お母ちゃんもお腹が痛いけど、兵隊さんはお国の為に戦って下さっているんだから我慢しなさい。」

やっぱり親子だったんだ。それと同時に二人は腹を負傷しているみたいだった。

じいちゃんは言った。「お腹の方は大丈夫ですか?」

お母さんが、

「ええ、大丈夫ですよ。気になさらないで下さい。」

じいちゃんは絶対に無理をしてると思い、

「ちょっと休憩しましょう。」

と、言うとすかさずお母さんが、

「捕まったら殺されるだけです。一刻も早く逃げましょう。私達は本当に大丈夫なので。」

それを聞いた女の子が言った。

「でも、母ちゃん…」

「もう少しで出口だから。あとほんのちょっとよ。兵隊さんを届けたら二人で行きましょうね。」

行く?どこかに用事があるのかと思い、申し訳ない気持ちになった。こんな情けない自分をお腹を悪くしているのに助けてもらって…情けなかった。

じいちゃんはせめて女の子に謝りたかった。名前を聞いた。

「ゆり子って言うんだよ。」

「ゆりちゃんごめんね。おじちゃんの為に。歩けない位痛かったらおぶってあげるから遠慮なく言ってね。無理しちゃだめだからね。」

「うん。ゆりは大丈夫だよ。」

「おじちゃんの為に申し訳ない…」

「戦争で頑張って戦うおじちゃんの為にもゆりは頑張る。」

その健気な答えに唇を噛んだ。

怖い話投稿:ホラーテラー 万年みひろ命さん  

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