短編2
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餓鬼

みなさんは『餓鬼』というものをご存知ですか?

私の祖母は昔から霊感があるらしく私を見ると「また憑いてきてるね。」などとよく言っていました。

私自身霊感などは全くないのですが霊が憑きやすい体質らしいです。

祖母いわく霊と言っても何か被害をもたらすというものではなく、ただ成仏できずにさ迷っている浮遊霊のようなものだそうです。

祖母の幽霊話はたくさんあるのですがその中でも特に印象に残っているものを紹介したいと思います。

昔、家族で温泉旅行に行ったときの話です。

その日は旅館に着いたらすぐにみんなで温泉へ向かいました。

そのあと夕御飯の準備をしている時、まだ少し時間があったので私は祖母と温泉街のお店を見に出掛けました。

はじめは「お土産何がいいかなあ。」などと呑気な会話をしていたのですが途中から祖母の様子がおかしくなりました。

しきりに辺りを見渡し、悲しいような表情を浮かべはじめたのです。

私は心配になり具合でも悪いのかと尋ねたのですが祖母は黙ったままでした。

私は不安に思いながらも隣を歩く祖母にしばらく着いていくと祖母はふとあるお店に立ち寄ったのです。

そしてそこでお饅頭を買うとまた黙ったまま歩き出しました。

仕方なく私も着いて行くと祖母は人気のないところで立ち止まりました。

そしてさっき買ったお饅頭を出すとそっと地面に置いたのです。

そして祖母は「少ないけどみんなでお食べ。」と言い優しく微笑むと私の手をひいて元来た道を戻り始めました。

私は祖母が何をしたのかわかりませんでしたが祖母に手を握られた時、とても切ない気持ちになったのを覚えています。

旅館へ戻る途中、祖母はさっきのことについて話してくれました。

祖母が見たものは餓鬼という餓死した人たちの霊でした。

上半身はあばら骨がはっきりわかるくらいがりがりに痩せており、しかし下腹部は尋常じゃないほどぽっこりとしているのが『餓鬼』だそうです。

何人もの餓鬼たちが温泉街にいるお客さんたちに食べ物をねだっているのですがほとんどの人たちは気づくはずもなく、しかしそれでも餓鬼たちはなんとか気づいてもらうために必死になっていたそうです。

そんな餓鬼たちを哀れに感じた祖母はお饅頭を買ってあげたそうです。

今となってはたくさんの人で賑わっている温泉街ですが昔は毎日食べるものがなく、空腹の中餓えていった人たちもたくさんいたのでしょう。

旅館に着き、晩御飯を食べたあと私と祖母はお線香ともう1つお饅頭を買ってさきほどの場所へ行きました。

その時なぜだが涙が止まらなくなり祖母に慰めてもらったのを覚えています。

今私たちが幸せに暮らせるのも昔生きていた人たちのおかげなのかもしれません。

以上、私が祖母とした体験でした。

全く怖くないですがここまで読んでいただきありがとうございました。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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