短編2
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大会中に

先日、アパートの屋根裏を投稿した者です。

今回は、私が高校生の時に遭遇した出来事を書きます。

当時、私は武道を習っていました。

道場は各23区毎に開かれており、私は某区の連盟に所属していました。

事の発端は、同じく道場に通っていた女性です。

彼女は美人でハツラツとした性格のため、非常にモテていました。確かその当時で20代半ばだったと思います。

私にはステキな大人の女性という印象でした。

ある日、新しい生徒として自衛隊員の男性が入門してきました。

彼もまた、彼女の魅力に次第にはまり、端から見ていても好意を寄せていることが、見て取れるようになりました。

しかし、噂ながらに彼女は、その自衛隊員を嫌っていると耳にするようになり、彼もまた、次第に稽古に来なくなり、姿を見なくなりました。

それから暫くたち、ある大会が開催されました。

都大会のため規模は大きくも、競技人口は少ないので、観客もまばらでした。

試合コートは、成年部と少年部に二分されており、私は少年部での出場。

彼女は成年部での出場でした。

私は早々に負けてしまい、先輩方の応援をしていました。

そして、彼女の試合が回ってきました。

審判の「始めっ!」という掛け声と共に、彼女も「ヤッー!」と威勢よく、相手方に踏み込んでいました。

これは勝てると、私は余裕の気持ちで応援していました。周りも同じ思いでした。

ところが、鍔迫り合いで方向転換を図った刹那、突然彼女が悲鳴をあげたんです。

何というか半狂乱でした。

試合会場は騒然とし、慌てた審判員三人と、先生が駆けつけましたが、一向に治まらず、とうとう彼女は不戦敗とされました。

私達は子供ということで、なにも出来ず、彼女はそのまま会場を後にし、それきり道場に来なくなりました。

それから暫く経ち、もう時効だからと先生が教えてくれたのは、驚愕の事実でした。

以前の自衛隊員は、実はノイローゼで除隊され、リハビリの意味で、道場に通っていた(親の勧めにより)。

しかし、彼女に惚れてしまい告白するも、フラれたため、ショックが大きく道場を辞める。

しかし精神不安から程なくして、彼は自殺。

親から先生方へ挨拶があった。

それから、あの大会の話になるのですが、彼女が試合中に鍔迫り合いで方向転換した際、突然観客席が目に入ったそうです。

そこには、笑顔で手を振る、その彼が居たそうです。

見間違いかと見直すと、彼女の視線に合わせて、彼が立ち上がり手を振った為、パニックになったそうです。

自殺の原因は、親御さんから詳しくは聞いていないそうですが、恐いので辞めたいと、彼女は去っていったそうです。

それから、彼女がどうなったかは誰も知りません。

怖い話投稿:ホラーテラー 都民さん  

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