短編2
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通り魔と親父

これは俺がまだ若い頃の話です

ちょっと長いです

夜中に近所のコンビニで買い物をして、家に帰る途中でした

普通に歩いていると

いきなり横から結構強めに「どん!」と肩を押され、

俺はよろめき向こうから来た通行人とぶつかってしまいました

「あっ、すいません」

軽くぶつかった人に謝り、

肩を押された方を睨みましたが、そこには誰も居ません

「ちっ!何だよ一体」

訳がわからないまま、また歩き出しました

一歩、二歩………

三歩目の足を地面に着いた瞬間、俺は膝から崩れ落ち

地面に平伏しました

「は!?」

パニックになっていると

ようやくその原因に気付きました

腹に果物ナイフの様な小さいナイフが刺さってました

「マジかよ?」

後ろを見ると、さっきぶつかった奴がこっちを向き、

携帯のカメラでうずくまった俺を撮影してます

「お前、ふざけんなよ!」

と、声を出そうとしても 激痛で上手く声が出ません

そのうち、一通り撮影し終えた野郎はダッシュで走り去って行きました

「やばいかも…」

この道は昼間でもそんなに人通りの多い道じゃなく

0時過ぎのこんな時間に誰かが俺を見つける可能性は限りなくゼロです

家まではまだ距離がある

ここは何とかするしかないと決心し、自分の携帯で救急車を呼びました

向こうから走ってくる救急車を見た瞬間に安心し、俺は意識を失いました

起きると病院のベッドで寝ていて隣には母親、弟の俺でもめっちゃビビってる元ヤンの兄、兄嫁などが心配そうに見つめてました

そこに俺の意識が戻ったという事で医者の方も交えて説明がありました

医者「やっぱりお若く素晴らしい瞬発力ですね〜。刺される寸前に体をぐっと犯人に寄せたのが正解でした」

「どういう事ですか?」

医者「いや、あれだけ小さいナイフでも垂直に刺さっていればかなり危険でしたよ。左から斜めに刺された事で腹筋なんかに阻まれて大事な臓器には届かなかったのが幸いでした」

そこで、刺される前に肩を押された事を言うと、

「きっと死んだお父さんが助けてくれたのよ」

と、母は泣き出しました

俺は正直親父が嫌いでした

警察に何度も世話になっている兄貴には何も言わず、俺にばかり厳しい親父でした

母が言うには、問題児でも自分の意見をしっかり持っている兄貴よりもフラフラしている俺の事をいつも心配していたそうです

何も知らず親父を嫌っていた自分を恥じ、俺も助けてくれたのは親父だと信じました

正直、逆の方に押してくれれば刺されずにすんだのにな〜などと罰当たりな事を思いながら

今も生きています

親父の分まで……

長文失礼しました〜〜

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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