中編6
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逆恨みの話

※このお話は人間の怖い話です。

これは僕が店長を勤めていたカラオケ店での出来事です。

僕の店舗では約30名のアルバイトスタッフが働いています。

清掃担当の主婦や、週末のみの学生スタッフ

バンド活動をしながらのフリーター等、多種多様です。

今まで起こった事件とは別に、従業員の入れ代わりが激しい職場でした。

そんな事もあり、僕が求人をかけ面接する人数は

年間100人近くにも及びます。

面接される方も緊張すると思いますが、慣れている僕も緊張します。

初めてお会いする方々の中には…

僕達の常識が一切通用しない人も居るのですから…

春先の季節でした。

学生スタッフが卒業シーズンを迎え、新たにアルバイトを募集する事にしました。

通常の流れだと、まず電話で面接を希望する旨を伝えて頂き、

面接の日時を決めるのですが…

ある女性が突然、面接したいとフロントにやって来ました。

腰まで届く黒いロングヘアーで、髪の毛はボサボサ…

まるで友人の結婚式に私服で出席したかの様な

派手なワンピース…

魔女の様に長い爪…

化粧は赤い口紅のみ…

身長は175センチくらいでガリガリの細身…

一瞬、幽霊かと思いました

一目で…あ、普通じゃないなとわかりました。

その時間はアルバイトが少なく、フロントを空けて事務所で面接する事が出来ない為

店内で1時間程、待って貰いました。

その間、彼女はフロント前のソファに座り

うつむきながらブツブツと独り言を言ってました。

僕「お待たせしました。コチラヘどうぞ」

と女性を事務所に案内し、面接を行いました。

僕「それでは履歴書を拝見させて頂きます。」

女性「…」

女性は無言で履歴書を手渡しました。

僕「×さんですね」

僕は一通り履歴書に目を通し、質問を始めました。

×さんは29歳で職歴無し、通信制の高校卒業でした。

僕「当店を志望された動機はなんですか?」

×「私は母と二人暮らしで、母が病気で倒れてしまい、私が働かないとダメなんです。雇って貰えないと困るんです。」

…?

僕「今までお仕事されていない様ですが、当店で頑張って行こうという気持ちはありますか?」

×「…わかりません」

……

僕「やってみないと分からないですよね」

僕「でも頑張らないといけませんよ?」

×「…はい」

僕「まず、働くには髪の毛を少し切らないといけません。その爪もです」

×「…」

僕「カラオケ店も一応飲食ですから」

僕「やる気があるなら髪の毛と爪を切って、明日また来て下さい。」

×「わかりました。」

×さんは席を立ち、挨拶もせずに事務所を出て行きました。

…まだ、社会を知らないんだな…

この店からスタート出来れば良いんだけど…

そう思ってた自分が心底、甘かったと思い知る迄…

時間は掛かりませんでした

…翌日になりました。

×さんは店に来ませんでした。

またかよ…

こういう事はよくあります。

従業員に今日来る予定の新人は来れなくなった旨を伝え、勤務に入りました。

閉店時間になり、車に乗って自宅に戻ろうとした時です。

!?

僕「あぁ!!」

衝撃の光景が目に飛び込みました!!!

僕の車のボンネットに大きな石が置かれてあります!

よくカラオケ店の前にのぼり(旗)が立ててありますね。

のぼりを差し込み固定する為の石…

その大き目の石です。

当時の愛車は無理して買ったアリスト(どノーマル)でした。

僕「くそ!誰がこんなイタズラを!」

僕はすぐさま石をどかそうとしましたが、重くて持ち上がりません。(僕はかなり筋肉があります)

おいおい…

どんな奴が置いていったんだよ…

仕方なく、ボンネットの上から少しずつズラしました。

…ギギィ!

僕「くうぅ!」

もちろん、ボンネットに傷がついていきます…

この時の怒りは言い現せません…

酔っ払ったお客さんがイタズラして帰ったんだろうと

その日の帰り、警察に被害届を出し、保険会社に電話しました。

次の日も仕事でした。

この事件の事を従業員に話しました。

ボンネットから石を引きずり落とした時のショックを面白ろ可笑しく話すと

従業員達から笑いを取れました。

僕はただでは転びません。

バイト「駐車場にも防犯カメラが必要ですね」

僕「社長に頼んでみるよ」

と談笑していました。

…しかし

その日の帰り…

絶対に防犯カメラが必要だと思い知りました…

今度は引っ掻き傷です…

一瞬、自分の車だとわかりませんでした…

車のボディにびっしりと引っ掻き傷があります、

それも硬貨や金属でつけられた傷ではなく…

人間の爪で傷つけた様な…

傷に混じって血まで付着していました…

僕「…マジかよ」

明らかに異常です。怒りから恐怖に変わった瞬間でした。

社長に連絡し、この事を伝えると有り難い返事を頂きました。

社長「君が個人的に恨まれてるんじゃないか?」

社長「会社として防犯カメラは必要ない」

…のやろう!…

仕方なく、次の日はアルバイトを一人増員し、

僕の車の近くに車を停めて、車の中から監視して貰いました。

犯人が見つけたら、すぐに僕の携帯に連絡する事になっていました。

深夜3時くらいでしょうか

パァーーー!

…と

駐車場からクラクションの音が鳴り続けています。

数人で駆け付けると、放心状態のバイトが車の中で震えていました。

ここからはアルバイトの話です。

深夜3時を過ぎ、うとうとしていたら

ポリタンクを持った女性が店長の車に近づいていた。

真っ暗闇で顔は見えなかったけど、身長が高く、髪の毛が異常に長かった…

すぐ電話しようポケットから携帯を取り出した。

すると!

バン!バン!バン!

女「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」

女「お゛ま゛え゛な゛に゛み゛でん゛だぁ゛!!」

とバイトが乗っていた車の運転席の窓を、両手で叩きながら叫んでいたそうです!

そして女は運転席のドアに手をかけ…

ガチャ!

ガチャ!ガチャ!ガチャ!

運よくバイトはドアロックしてたそうです。

女「あ゛げろ゛!あ゛げろ゛!」

と、今度は車を揺さぶりました。

車が横転するかと思ったとバイトは語りました。

バイトは恐怖のあまり、とっさに車のクラクションを鳴らしたそうです…

僕「…じゃ、顔は見たんだな?」

バイト「いえ…ビビっちゃて目をつむってて…」

僕(人選をミスった…)

しかし、女の特徴から

もしかして最近面接した×さんか?

と直感したのです。

次の日…

履歴書の住所から×さんの家に向かいました。

もちろん警察と一緒に…

×さんが居ました。

古い一軒家で×さんは一人暮らし、母親は入院しているそうです。

長い爪は所々割れ、剥がれていました…

僕は確信しました…コイツだ…

警察官が職務質問すると…

×さんはシレッと自分がやった事を認めました。

警察官越しに後ろにいる僕を見ながらニヤニヤしていました。

×さんは御用となり、僕も警察署に向かいました。

担当の刑事のお話です。

×さんは僕に不採用にされたと思い込み、犯行に及んでしまった。

×さんは精神病の為、立件は難しく、しかるべき施設に入ってもらう。

車に関して民事で損害賠償を請求出来るが、無収入の為、難しい。

一軒家は借り家で、何ヶ月も家賃を払っていない。

×の母親も精神病で入院している。

×家の中から見つかったポリタンクの中身は

灯油ではなくガソリン…

×の自供から、車だけではなく、

店を燃やそうとしていた。

しばらくして…

僕の店の駐車場に防犯カメラが導入されました。

怖い話投稿:ホラーテラー 店長さん  

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