A fame
「駄目だ………ひょっとしてドアが分厚すぎてこっちの声が聞こえてねぇんじゃねえのか?」
「…なるほど。」
「ニック!てめぇ、実は始めから気付いてたんだろ!?」
「ドアを開ける方法を考えないとな。」
「あれだけ無駄な事させといて…その上シカトですか…」
鉄製のドアに取手は無く、辺りにはドアを開けるための装置すら見当たらない。
「このドア、暗号式のロックか?それとも単純に中からしか開けられないのか?」
ドアの周りを探っていたニックが、どうやら何かを見つけた様子だった。
「ビリー、一度入口まで戻って何かスイッチがないか調べてきてくれ。そしてもし、スイッチらしい物があったらそれを押してくれ。」
「……お、おお。わかった。見てくるよ…」
ビリーは怪訝な面持ちで来た道を引き返していく…
そして、入口まで来たとき、閉まったトイレのドアの内側にスイッチがある事に気付いた。
ドアの内側にあるのだから、入る時には気がつかなくて当然だろう。
ビリーはスイッチを押した。 その瞬間、今まで薄暗かった廊下が明るくなり、階段の通路全体が見渡せるようになった。
ビリーは、それを確認すると急ぎニック達の元へと走った。
「ニック、ペナン。やったな、電気がついたぞ!ドアは開いたのか?」
「…ああ。自動ドアだったみたいだ…」
「有り難う、ビリーさん!」
ペナンはビリーに感謝の言葉を述べると、ドアの向こうへ走り出した。
ニックとビリーもペナンの後を追った。
ドアの中は20畳程の空間になっていて、その中には大きなテーブルがあり、それを取り囲むようにして10人ほどの椅子に座った人々が居た。
「パパ、ママ!!」
「おお!感動の再会ってやつか…泣けるなぁ。な、ニック?」
「待て…ビリー…
何か様子がおかしい…」
ペナンが近付いて来たというのに、彼の両親と思わしき2人は微動だにしない。そしてそれは、その2人だけではなく、残りの数人も全く同じだった…
驚くニックとビリーの2人を他所にペナンだけは、両親との再会にはしゃいでいる様だった。
「なぁ…ニック。何かオカシイよな?この状況…」
「そうだな…」
「ニックさん、ビリーさん!
どうしたの、こっちへ来なよ!パパとママが2人にお礼を言いたいんだって!!」
その瞬間にニックは、ペナンが精神的におかしくなっているのだと気付いた。
「…ビリー。ペナンをここから連れて外に出るぞ。」
「お、おぉ。その方が良さそうだな…」
「ねぇ、2人ともどうしたの?こっちへ来て、早くパパとママとお話ししようよ!」
「ペナン、その前にちょっとこっちへ来てくれないか?」
「何で…?やっとパパとママに会えたのに…」
「ペナン、頼むから言うことを聞いてくれ。その後に、俺達が君のパパとママと話をする。いいだろ?」
そう言うニックに、ペナンは口元に薄笑みを浮かべながら答えた。
「……ニックさん。気付いてるんでしょ?ここに居る皆がもう死んでること…」
ニックの表情が強ばった。
「ニックさん。……皆、生きているよ…僕の奴隷として………」
ペナンがそう言うと、椅子に座っていた人々が一斉に立ち上がった。
赤く光る眼光、よたつく体…、総てが普通の人間のそれとは違う。
「……来るぞ、ビリー。」
「言われなくても分かってる。」
ニックとビリーが戦闘体勢に入った…
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話