中編7
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馬魂碑と馬頭観音

■シリーズ1 2

これは僕が警備会社でアルバイトをしていた時の出来事です。

運送会社の雇用期間が終わった僕は「日給5000円」の警備会社でアルバイトをしていました。

警備内容は様々で、道路工事から下水道工事、建設現場の出入口の管理など…

よくデパートやパチンコ店、大型スーパーにいる「施設警備」

コンサートやライブ等の「イベント警備」とは毛並みが違います。

ほとんど工事の汚れ仕事専門の警備会社です。

もちろん制服がカッコイイ訳は無く…

灰色の微妙なモノでした。

制帽なんかありません。頭にかぶるのはヘルメットだけです。

警備員というか、ほとんど工事現場の作業員です。

そんな会社で、夏に限り唯一イベント警備らしき仕事が入りました。

…お祭りの夜間警備です。

正確に言うと、日を跨いで商売している出店が、

夜間、荒らされたり、盗難に遭わない様に巡回する仕事です。

…当然の事ながら

警備する場所は、神社やお寺です。

警備員の配置は4名…

1時間交代で仮眠をとります。

部長「誘導棒を振らない誰でも出来る警備だから…」

の一言で、僕を含む新人4名での警備となりました。

一応、リーダーが僕。

年齢はばらばらですが、全員が全員に敬語を使うという、ちょっと異様なメンバーでした。

(通常はベテランと新人がセットになります。)

街中より郊外に車を走らせる事30分…ようやく現場の神社に到着です。

夜の9時に神社に全員集合しました。

(話した順に振り分けます。AさんBくんCさん)

「…おはようございます!」

と挨拶し、雑談しながら仕事が始まるのを待っていました。

勤務は9時からですが、出店が全て閉店し、お客様が全員、外に出てからがスタートです。

出店は次々と閉店し、お客様がどんどん境内から出ていきます…

Aさん「…まだまだ人がいますね」

B「そうっすね…」

C「朝6時までですよね…長いな…」

僕「まぁ、0時からは交代で1時間ずつ寝られますから…」

と、メンバーの目に止まったのが、神社の奥でたむろする若者達…

地元の未成年軍団です。

男女15人くらいはいるでしょうか…

傍目から見てもめちゃくちゃ盛り上がってます…

C「あれ…帰らなさそう…」

B「うわっ!ウザそう…」

A「彼らを帰すのも俺達の仕事ですかね?」

僕「…聞いてないですよ?」

と、心配している内に…

警察官がゾロゾロ登場!

若者達は「ウゼーぞ!ゴラァ!」などと、

警察官の解散命令に激しく抵抗!

ワクワクしながら見ていると、一人が調子に乗って甘酒の紙コップを警察官に投げつけました。

B「あぁ〜バカだ…」

Bくんの言う通り、投げた若者は、すぐ警察官に取り押さえられました。

それを見た他の若者達は、蜘蛛の子を散らした様に逃げて行きました。

…どうやらこの光景は毎年のお約束みたいなモノらしいです。

メンバーで警察官の活躍を見ている内に、ようやく境内から人が居なくなり…

僕達の仕事がスタートです。

部長から預かった、車用パトライトと、懐中電灯、トランシーバーを全員に渡しました。

まずはそれぞれの車の上に、黄色パトライトを乗せて境内に車を入れます。

…忘れてた!

トランシーバーのスイッチを押し伝えました。

僕「あ!部長から注意点があります!」

僕「神様が居る建物に絶対、車のケツを向けない事」

僕「車の正面を神様の方に向けて停めて下さい。」

メンバー「了解」

※警備員は「はい」の変わりに「了解」と言います。

全員が車を配置につけ、巡回スタートです。

仕事内容は簡単です。

1 決められたエリアの出店の間を縫う様にライトで照らしながら巡回。

2 出店のテントで、中に入れそうな店があった場合は、毎回中をチェック。

3 ごみ箱やごみ置場は1時間に一回、中をチェック(昔、何処かのお祭りで釘爆弾が仕掛けられていた為)

…いざ始まってみると

…不気味です。

お祭り会場の照明は全て消え、月明かりと手持ちの懐中電灯だけが光っています。

真っ暗闇です…

まるで、肝試しか罰ゲームです。

広い境内の中で、決まったエリアに分けている為

メンバーはお互いの姿を確認する事が出来ません。

ザクッザクッ

と自分が巡回している足音しか聞こえません。

もしも今、後ろから驚かされたら心臓が止まるかも知れません。

目が暗闇に慣れてくると…

夜空が多少、明るく見えてきます。

影絵のように浮かび上がる巨木のシルエットにますます不気味さを感じます。

…誰もトランシーバーで喋らないな…

と、心細くなった僕はスイッチを押しました。

僕「皆さん大丈夫ですか?」

メンバー「ビックリした!」

C「いきなりトランシーバー鳴ったからビビりましたよ!」

A「心臓に悪いですよ!」

B「マジでトランシーバーの存在忘れてたっす!!」

僕「すいません!」

…皆、怖かったか…

僕「あの〜、何か異常はありませんか?」

BC「こちら異常なしです」

A「あ〜…リーダー?」

僕「はい?」

A「俺のエリアに林みたいな所があるんですけど、巡回しないとダメですか?」

僕「いやいやいや!それは無理しなくていいですよ」

A「了解!よかった〜」

それから1時間に一度は、僕から定時連絡を入れる事になりました。

…いい加減、恐怖心も薄れて来た頃でしょうか…

僕は機械的に巡回していました…

お店の中をチェックします…当然、誰もいません。

ごみ箱の中をチェックします…当然、何もありません。

少し離れた所にビニールシートに大きい石で重しをしたごみ置場もチェックします…はい異常なし

…何かここだけ、毎回チェックするの嫌だな…

さて…

そろそろ定時連絡だな…

僕「定時連絡です。異常はありませんか〜?」

B「タバコが吸いたいっす」

C「足が疲れました〜」

A「寒むくないですか?」

…?

確かに今は深夜で、お昼よりは気温が下がります。

でもTシャツで大丈夫なくらいの温度はずです。

僕「Aさん?寒いんですか?」

A「こガ…は…ピガ…す」

僕「聞き取れませんよ!もう一度お願いします」

A「ガガ…ザ…ジジー…」

大丈夫か!?…トランシーバー壊れたのかな?

僕はAさんのエリアに走りました。

そこには…

僕より近いエリアで、一足先に駆け付けたBくんとCさんの姿がありました…

僕「…Aさんは?」

C「居ないです…」

B「これやばくないすか?」

Bくんが懐中電灯でAさんの靴を照らしました。

まるで今から飛び降り自殺するかの様に、

綺麗にAさんの靴が並べられています…

そしてその先には…

自然と三人の懐中電灯の光と視線の先が…

Aさんの言っていた「林」に向けられます…

…まさかあの中に?

暗闇に目が慣れた僕達の前に、

更なる深い闇がぽっかり口を開けて待っていました。

…数秒間

僕らは顔を見合わせました。

B「行くしか無いっすよ」

C「三人なら大丈夫ですかね?」

僕「ここは神社ですし、大丈夫でしょう!」

三人で林の中に入りました…

入り口で…

カラスが「ア゛ーア゛ー!」と鳴きました…

テリトリーに侵入した僕達を警告する様に…

すぐに懐中電灯の光で浮かび上がってきたのが…

沢山の石碑です!

僕らの身長よりも大きな石碑が沢山ありました。

…う!

良く見ると…

お祭りに来ていた人間の仕業でしょうか…

ゴミやタバコの吸い殻が散乱しています…

僕(考えが甘かった…)

他の二人も同じ考えでしょうか…

青い顔をしながら、押し黙っています。

自分の心臓が急激に高鳴って行くのがわかります…

無言で僕達は更に奥へと進んで行きました…

…うわ!

僕達の歩みを遮るかの様に「注連縄」が張り巡らされていました。

さすがに注連縄の意味くらい知っています。

それ以上、進む事も出来ずに中を懐中電灯で照らしました。

注連縄に囲まれたその中には1メートルくらいの苔が生えている古い石碑と、その横には小さな祠がありました…

その真ん中にAさんが倒れていました…

僕達は叫びました。

「おーい!Aさーん!!」

彼はぴくりとも動きません。

注連縄からAさんまでの距離は10メートル程です。

ここまで来ては、引き返せません!

恐怖を押し殺し、三人で一斉に注連縄をくぐり抜け…

Aさんに向かって走りました。

BくんCさん僕の順に…

一歩…二歩…三歩目は踏み出せませんでした…

…!!!

突然です!!

僕達の全身に、発狂するかと思う程の激痛が走りました!

それぞれがその場に倒れ込み、悶絶していました…

B「ぎゃあぁあぁ!!痛い!痛い!いてぇよぉ!いてぇよおおぉ!!」

C「う゛おぁああ!!殺して!!早く殺して!!殺せえぇぇ!!」

全身の血管や筋肉、腱や骨…ありとあらゆる組織が

引き裂かれる様な激痛でした…

突然の悪夢に僕は絶叫しながらも…

(これはやばい…死ぬ…!)

と、僕は地面を這いながら何とか注連縄の外に出ました…

すると…

先程までの激痛が嘘の様に消えていました…

しかし、中の二人はまだもがき苦しんでいます…

身体をジタバタさせながら…

悲痛な絶叫が…少しずつ…

狂気に満ちた笑い声へと変わって行きました…

ジタバタさせていた全身も次第にクネクネした動きに変わっていきました。

僕は彼らを助けにもう一度、中に入る事は出来ませんでした…

僕は彼らより、外側だったから助かった…

あそこまで行けば、間違いなく助からない…

…続きます。

■シリーズ1 2

怖い話投稿:ホラーテラー 店員番外編さん  

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