短編2
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愛珠(甲)

皆さん、ドラゴンボールってご存じだと思います。

ご存じ、有名な漫画ですよね。

あのドラゴンボールに出てくる玉によく似たものをめぐって友人の玉造くんに不思議な出来事があったらしい。

ちなみに当然玉造という人間は仮の名前です。多少色はついてますが、ほんまもんの実話です。

‐玉造がその新居に越してきたのは前に住んでいたアパートの隣人とのトラブルで面倒なことになりこの家賃が前のアパートより少し高めのアパートに越す羽目になったのだ。

玉造は言う。

『あの、クソ女、今度会ったら顔面を思いきり殴りつけて原型をとどめなくしてやる。まあもともとスクラップみたいな顔だからな』と。

玉造のそんなセリフもまた一種の怪談だと僕は些か身震いした。

なんやかんやで日々は過ぎ、新居にも慣れてきた秋のはじめの小雨降る休日の朝、玉造はポストに新聞をとりに向かった。

すると、ポストに何通かの手紙やら怪しげな勧誘の書類何やらに混じって赤い便せんがあるのに気づいた。

その赤い便せんの裏を返すと差出人は『あなたの最愛の人』とある。

心あたりはもちろんない。

中学高校大学と彼女のひとり、ガールフレンドのひとりさえいない玉造には無縁すぎる宛名だった。

玉造は別に気にもとめず部屋に持ち帰り糊付けされた封を切りその中身を見てみた。

すると、同じく赤い紙に筆のようなもので『愛』と大きく書かれた不気味な字にひとつの玉が入っていた。

その玉はよくありそうなスタンダードなスーパーボールほどのサイズで玉にはちょうど真ん中に愛珠(あいだま)と書かれていた。

さすがに気味が悪くなり玉造はそれをまとめてゴミ箱に放り投げた。

それから何日かして同じ差出人からわけのわからない便せんを何時も何時もよこされた。

そのたび玉造は無視しゴミ箱に放り投げた。

そんなある日、秋も過ぎ冬と季節はもう一山を越そうかというとき。

雨続きの中、めずらしく晴れた一月の中頃、玉造はいつものようにポストに向かい新聞をとりに行った。

すると、階段の下、ポストの脇に背の低い小柄な女がひとり立っている。

歳は20…5、6といったところか、髪はボサボサでスエットに健康サンダルといったいでたちだ。

その女は今まさに玉造のポストに赤い便せんを入れようとしていた。

玉造はその時はじめて心の臓が止まりそうになった。

その光景を階段の踊場から一部始終見ていた玉造は、女が去るのを見計らいポストへ向かった

怖い話投稿:ホラーテラー 丑三つ時さん  

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