長編9
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燃えろ燃えろ

これは俺がサークルに入っていたときのことです。

ちょっと長いので、ご注意を。

もともと少人数のサークルだったので参加していたのですが、

次第に人数が増えてやめました。大人数って苦手なもので。

人数が増え始め、私がやめる1ヶ月くらい前の話ですが、

秋合宿をやろうという話になりました。

「大人数でいく合宿なんておもしろくもねえ。」

何せメンバーは50人を越えてます。

と最近参加率の悪い俺に、周りのメンバーはしきりに誘います。

「今度の場所、お化け出るらしいよ!だからカイン君行こうよー!」

「カイン君霊感強そうじゃん!いつも怖い話して盛り上げてくれてるじゃん!」

「…余計に行きたくねえww」

そりゃたまに見えるけども、見たくて見ているわけじゃない。

そもそもそういう類のもんは気持ちがネガティブになった時に見えるもんだ。

お化けの類をワクワクしながら見ようとする奴らに見えるわけが無いだろ。

その場は断ったが、それでも皆しつこい。果ては授業中にメールが10通来た事もあった。

「…何かあるな。」

例えばドッキリとか。

結局その後サークルでも中の良かった男友達にもしきりに頼み込まれ

合宿に付き合うことになった。

車に1人乗れず、しょうがなく俺のバイクのケツに一人女(以後J)を乗せることになった

ツーリングは大好きだが、2ケツは重くなって曲がりにくいから嫌いだ。

目的の場所は大学のキャンパスから車で2時間の場所の山奥だった。

50人も泊まれる施設があるんかな?

予定では2泊3日。皆大荷物を担いでいるが、俺はボストンバッグを、

高校生のように背中に背負う。

しかしメンバーは山の経験が無いのだろうか、秋の山に半袖で来る始末だ。

ほとんど何もやる気は無かったが、参加した手前、極力付き合うようにはした。

しかしホント自由な感じで、鬼ごっこなんかをしている。

大き目のロッジのベランダに横になっていると、Jが俺のほうにいきなり走ってきて。

「はい!タッチ!」

(゚Д゚)は?

「カイン君が鬼だよー!のろまー!」

仕方なく参加することにした。

皆を追いかけている途中で、小さな一本道を見つけた。

ふとそっちの方向に歩いていく。

道といっても草むらを掻き分けただけの道だ。

しばらく進むとそこには石で組み上げられた祭壇のようなものがあった。

しめ縄が巻かれており、誰かが手入れしているのだろうか、綺麗な盃も置いてあった。

すると背後から肩を叩かれる。Jがいきなりわき道に逸れた俺を見つけて

追ってきたのだった。

「なにこれ?」

「俺が知るかよ。触らぬ神に祟り無し。何もしないほうがいいな。」

引き返しているとJは何故か大はしゃぎでこう言う。

「すごいもの見つけたね!肝試しはここにしようよ!」

「は?俺、夜には帰るよ」

「だ~め!泊まるの!」

「宿泊費もって来てないよ。」

「貸したげるから!」

BBQ参加して帰ろうと思っていたのに、Jが手回しをしたおかげで、

泊まる羽目になってしまった。着替えも無いのに・・・

そして夜が来た。

一応キャンプ場らしいので、キャンプファイアーをやることになった。

火がつくまでの間、怖い話をすることになった。

俺は話したくなかったので後ろのほうにいて気配を消していた。

が、やっぱり俺が話すことになり、適当な作り話をした。

やまんばの話をしたと思う。

中々火がつかず、仕方なく肝試しをすることになった。

男女のペアで行くことになり、俺はJと組む。

おせっかいにもJが昼間見つけた祭壇の話をしたので、そこに行くことになった。

懐中電灯片手に何組かのペアが先行していった。

ルールはありきたりで、あるものを最初のペアが持って行き、祭壇においてくる。

次からのペアが何があったのかを最初のペアに報告するといったもの。

途中キャーキャー!と声が聞こえた後、爆笑が聞こえもどってくる。

俺たちは一番最後になっていた。Jが、

「何置いてあるんだろうね!?」と待ちきれない様子だ。

いよいよ俺らの番だが、ちょっと様子が違った。

中盤辺り以降のペアの女の子が横になっている。何人かは平気だが。

出発して細い道を進む。夜間で回りは林なので明かりは一切無く、

懐中電灯だけが頼りだ。

Jはさすがにちょっと怖そうだった。祭壇に着いておいてあるものを見る。

俺たちがそれをもって帰る事になっているのだが、

「んだこりゃ?」

「あはは・・・」

そこにはコンドームが置いてあった。

・・・とにかくポケットにしまいこみ、祭壇を見てみると、昼間と少し形が違うようにも思えたが、

「・・・誰か、いじったのかな?」

「・・えろ・・・ろ」

「J、何か言ったか?」

「え、何もいってないよ。」

「・・・えろ・・・えろ・・・」

声はだんだん近づいてくる。祭壇の奥からだ。

中盤以降のぐったりと横になってた女子たちのことをハッと思い出し、

Jに向かって叫ぶ、

「J!走ってもどれ!早く!」

「え?・・・え!?」

「いいから早く!走れ!走れッ!!」

Jは俺の剣幕に押され、尻餅をついてしまった。

声が俺の脇を掠める、

「燃えろ・・・燃えろ・・・」

これはマズイ、Jにも何か聞こえたのか、ガタガタ震え始めている。

Jの手を引き走ろうとするがJが動かない。

なので抱きかかえ、来た道を走る。

広場にもどるとキャンプファイアーはようやく火がついたらしく、

何人かは火に見とれ、もう何人かは女子の看病をしている。

俺は皆を無視してロッジに入りJを横にする。

やはりJもぐったりして動かない。呼吸だけがとても荒く、

全身燃えるように紅潮しており、すごい熱だ。

俺は外に出て、最初に具合が悪くなったペアに尋ねる。

すると、祭壇の石をいじったらしいのだ。

今となっては発見してしまったことが悔やまれる。

俺は一人祭壇に向かうことにした。

祭壇に着くとそこにはモンペ姿の老婆がいた。

「あの・・・」

と俺が声をかけると、モンペ姿の老婆が振り返った。

「あんたがこの祭壇くずしたんかい?」

「はい、俺の仲間が動かしちゃったみたいで。」

「なんぞ起こらんかったかい?」

「女の子たちが高熱を出してるんです。」

「これはうちの娘の墓でね。戦争中に焼夷弾で全身焼かれて死んだんよ。」

「そうだったんですか。」

「町一番の美しい娘じゃったから、兄さんの連れの女性が許せなかったんじゃろ。」

「何とか鎮める方法は無いんですか?」

「そうじゃのう・・・」

老婆は少し考えてから答えた。

「以前もこの祭壇を興味本位でずらした男女がおっての。

 案の定、女子のほうが高熱をだしたんよ。」

婆さんは再び祭壇に向き直り、こういった。

「その女子さんは亡くなってしもうた。ワシにはどうしたらよいか分からんが。

 娘の怒りが治まるものをしんぜてみてはどうかね?」

「娘さんの怒りを・・・」

俺はしばらくうつむいて考えた。

女の人の喜ぶもの?違う違う!娘さんは全身焼け爛れて死んでしまったわけだから、

包帯とか?駄目だ、それじゃ何にもならない。

じゃあゲーベンとか?いや、そんなもの医者に行かなきゃ無いし、、、

老婆に尋ねようとしたら、もうそこに老婆はいなかった。

祭壇に近づいてみると、やはり声が聞こえる。

「・・・燃えろ・・・燃えろ・・・皆焼けて爛れてしまえ!

 私だけが醜いなんておかしい!恨めしい・・・生きている女子が恨めしい!!

 ・・・燃えろ・・・爛れろ・・・もとの美しさが分からぬほどに!」

もう俺もパニックに近い状態になってしまい、引き返すしかなかった。

次の日の朝、もう合宿どころの話ではなく、救急車を呼ぶか?

というところまで来ていた。

特に症状が悪いのはJだった。Jは美人で明るく、とても人気があり、

しょっちゅう男に声をかけられているそんな娘だった。

なんというか、ペアだった責任感か、一緒に発見してしまったことからの後悔からか、

俺はつきっきりで介護していた。

彼女はしきりに「暑い・・・暑い・・・」と繰り返している。

他の女の子の中には体調を回復した子もおり、うなされているのは、

比較的、顔の綺麗な女の子だけだった。

問題を起こしたくないのか、救急車はギリギリまで呼ばない方針らしい。

俺は昨日のことがあるので、救急車呼んだところでどうにもならないことは、

なんとなく分かっていた。

そんなこんなしているうちに、夜になった。

ベランダで煙草を吸う男子からの会話が聞こえる。

「Jちゃん、大丈夫かな。」

「なぁ、、、俺らが雑草だとすると、Jちゃんは一輪の花じゃん?」

花、、、花ねぇ、、、

女の子なら花は好きだよな。花でも進ぜてみるか。

でももう夜になっちまったしなぁ。

「J!何してるの!」

先輩の声で振り返る。

Jが顔を掻き毟り始めた。

「痛い!!痛い!!暑いよぉ!!」

俺はJの両手を押さえつける。

もう迷ってる時間は無い、花を見つけて進ぜてみよう。

他の男にJを押さえつけるように頼み。

俺はバイクにまたがって、山を降りる。

まだ8時。ギリギリ空いてるスーパーの園芸コーナーなら花があるかも!

山を降りきらないうちに通行人がいた。手には偶然か花を持っている。

譲ってくれと頼んだが、その女性は、

「そこの沢に下りて御覧なさい。」

と指を差す。指の方向にバイクのライトを向けると、確かに沢があり、

綺麗な花が咲いている。

振り向いて「ありがとう!」といいかけて、俺はビビッてバイクをこかしてしまった。

女性の顔は半分爛れていたのだ。

女はそんな俺を気にも留めず、軽く会釈をすると

数歩歩いて闇の中へ消えてしまった。

麦藁帽子に白いワンピース、明らかにこの世の人じゃない。

とにかく、沢にいって花をつむ。

黄色い花だった。水仙?だと思ったが。花には詳しくないので、

違ったら許して欲しい。

2つほど摘み取ると、大急ぎで祭壇のところまで行く。

相変わらず恨みの叫びが聞こえる。

俺はバイクのエンジンすら切らず、祭壇に走る。

祭壇の少し手前で立ち止まり、ゆっくりと歩み、そっと跪き、

花を2つ祭壇にしんぜた。

恨みの言葉が止んだ。しばらくして、

「・・・綺麗。」

俺の眼前からだ。

顔を上げると、髪の毛も無く、皮膚は爛れ、歯茎を露出し、

髑髏に筋肉を少しつけただけのような顔があった。

俺のほうをジッと見ている。怖かったが俺は視線をそらさずに、

「あなたは、この花を燃やせますか?

 あなたを焼いた心無い兵士と同じことを

 あなたはするつもりですか?

 どうぞ、心は美しいままでいてください。」

するとその女性は、顔を伏せ泣き始めた。

嗚咽の混じった、心から自分の行いを恥じている、そんな泣き方だった。

女性の背後から昨日の老婆が現れ、

「上手くやったみたいだね。さぁ、兄さんのお連れさんのところへ戻っておやり。」

俺はロッジに戻ることにした。

ロッジに戻ると、Jをはじめうなされていた女子たちは熱も引き、

落ち着いているようだった。

次の日、うなされていた女子たちは同じ夢を見たそうだ。

白い着物を着た美しい女性が、ごめんなさいね。とだけ言い。

近くにいた老婆と一緒に花を摘んでいるという夢だそうだ。

皆安心したみたいで、3日目は予定通り近くのテーマパークへ行くことになった。

俺は疲れたので帰る、といって山を降りた。

途中であの沢に寄り、花をボストンバッグ一杯に摘んで引き返す。

そして、祭壇一杯に花をしんぜてから帰る。

俺もその日夢を見た。

黄色い水仙に包まれた美しい女性が、両手にも一杯の鼻を持って

満面の笑みで俺に向かい、何度も、

「ありがとう、ありがとう、、、」

と繰り返す夢。

その後サークルを俺は辞めてしまったので、Jたちのことは知らないが、

後々でサークルの連中に話を聞くと、あの時のバイクの2ケツや肝試しは全て俺とJをくっ付けようとして、仕組んだんだそうだ。

・・・でもコンドームはねえだろ。

怖い話投稿:ホラーテラー カインさん

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