中編4
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家族団欒(半実話)

…コツ…コツ…

と、足音がする。

それは夜…寂れた裏路地を歩いているため街灯はない。辺りは暗い。

…コツ…コツ…

ゆっくり振り返るが誰もいない。もし僕に何かあっても、足にだけは自信がある。

マンションまで、あともう少し。だが急に足音が早くなった。

…コツコツ コツコツ…

僕は慌てた。そして僕も小走りになった。

…ハァ ハァ ハァ…

マンションの玄関は暗証番号を入力しないと入れないのだが、運よく女の人が入って行くのが見え閉まる前に滑りこんだ。

僕『ハァハァ…』

玄関が閉まる。しかし玄関から外を見るが誰もいない。天井とか壁を見た。やっぱり監視カメラはないので無防備と言えば無防備だ。

『…アノ…』

と、女性の声が聞こえた。びっくりして顔をあげると女性がエレベーター前から話しかけていた。

先にマンションに入った、さっきの女性だ。

女性『ど、どうされたんですか?』

僕『いや…なんか追われてた気がして…』

女性『まさかストーカーですか?』

僕『たぶん、そうですね…』

女性『私も最近、誰かの視線とか感じたりして…ストーカーかなって思うことあります。』

と、なんだか気が合った。同じ境遇に合うと親近感が増すようだ…。

エレベーターに乗った。

僕『あ、何階ですか?』と、ボタンに手をかける。

女性『6階です』

僕は6階のボタンを押して【閉】のボタンを押した。

まさか、この女性のストーカーが僕だとも知らず…

振り返っていたのは、誰もいないことを確認する為。足音は、この女性の足音。

獲物は目の前だ。

気持ちが高ぶり、呼吸が早くなるのを抑えた。ダメだ…今までの苦労が消えてしまう。

女性『どうかしました?』

僕『いや、さっき走ったから心拍数が上がって…ハハハ』と、話しをはぐらかし扉が閉まった。

お互い、隣り合わせに…しかも、密閉された空間にいる。あなたの吐いた空気を僕が吸う。この快感は、何度も体験してきたが飽きない。

時間を止める能力があったら何日でも君を眺めていたいものだ。そして、香水をつけない君の体臭を味わいたい…あー僕はなんて幸せなんだ。世界で一番幸せだろうな…。

でも、この女性は無臭だ…ま、しかたない。ハハハ

そんな妄想を働かせている間にエレベーターは動き出した。

女性『最近この辺りも、物騒ですね…』

僕『そ、そうですね…』

女性『あ、失礼ですが何階に住んでるんですか?私は6階ですけど…あなたは?』ふと、顔をあげると自分が行くべき階数のボタンを押していない。

僕『あ、すみません!7階なんですよ…ハハハ』

女性『あの女性にストーカーされてたから、動揺するのもしかたないですよね。』

え…

僕『エレベーター前で外を見たけど、誰もいなかったですよ?』

女性『いえ…知らない女性が、外に立っていました…よ…。見えませんでした?』

僕『いや…』

どうゆうことだ。ストーカーしている自分もストーカーされていたのか…

それなら、僕がここの住人でないことがばれてしまう。

何か事件でも起こせば、疑われる可能性が高いな…

この絶好のチャンスを逃すか…くそ!

頭の中で思考がフル回転した。

僕『あ、ポスト見てなかったから1階に戻ります。』

僕は、【逃げる】という選択をとった。屈辱だ。

女性『あ、そうですか…7階のボタン押していないから そのまま1階に下りたらいいですね』と言った。

僕『すみません、なんかお騒がせしてしまったようで…』

チーン

6階に着いてドアが開いた。

女性『失礼します…。』ドアが閉まった。

女性は、疑いもなしに6階の自分の部屋の鍵を開けた。

女性『疲れたわ…』 ガチャ

バタン

タッ タッ タッ

『おかえり!』と男性の声がした。

女性『あ、お父さんただいま』

母『あら、遅かったわね。』

女性『ちょっと残業で…』

女性『ふぅー。』と、ため息をついた。母が察したかのように

母『…また?』と呟く。

女性『うん、次は私をストーカーする霊だった。』

父『ハハハ!変わってるな』と、腹を抱えて笑う。

女性『はぁーお腹すいた。』

母『ごはん、作ってないわよ。』

女性『あー買ってきたから大丈夫よ。』

すると、部屋の隅っこのベッドにある布団が モサモサと動き始め…見知らぬ男が顔出した。

その男は、携帯電話で誰かと話ている。

『なんか、声が聞こえたり…ドアが開いたり、足音がしたり…助けてくれ…うぅぅ』と泣きはじめた。

薄暗い部屋にある鏡には、彼の姿だけ映し出されていた。

怖い話投稿:ホラーテラー 福岡県民さん  

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