中編4
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修学旅行の夜

数ヶ月ぶりの投稿です。

かずよしといいます。

僕は数年前、中学校現場で働いていました。

その時は飛び込みで(他の学年からいきなりその学年の担任になること)3年生の担任を持つことになりました。

新しい担任は4月1日に人事異動を踏まえた上で決めます。

3年生を卒業させたばかりの僕は、1年生の担任になるものとばかり思っていました。

しかし、色々な事情が重なり、再び3年生の担任。

気持ちを切り替えて1学期に臨みました。

昨年は授業にも行っておらず、あまり馴染みのない生徒達との最初の行事が始業式から10日後の修学旅行です。

3年生でいきなり修学旅行というのも珍しいですが、僕の地域では行事や祭の日程の都合上、この時期にあるのが普通です。

不安はありましたが、生徒と近づくチャンスと思い、準備を進めました。

この学年は僕が前に担任していた生徒の弟や妹がいる学年だったので予想以上にやりやすく、また、僕が放課後たまにする怖い話の噂を知っていました。

初日の夜の自由時間、生徒達は僕の所にやってきて 「怖い話をしてください」とお願いをしてきました。

早く生徒達との絆を作りたかった僕はいい機会だと考え10人ほどの人数が集まった部屋に向かいました。

部屋を暗くしてテレビの灯りだけを付け、以前このサイトで紹介させてもらった「麦わら帽子」や「R先輩」の話をする僕。

テレビの灯りは暗くなったり、突然明るくなったりと、それだけで人を驚かす効果があります。

怖がりながらも僕の話に興味を持ってくる生徒。

自由時間の残り時間が5分になり、最後の話を始めた頃でした。

一番後ろに座って話を聞いていた子が窓の方向を凄い表情で見つめています。

窓の外は小さな庭になっていて、白い砂利が敷き詰められています。

ブラインドが掛かっていますが、微妙に長さが足りずに20cmほど下の部分が開いています。

彼女の視線はその空間を見つめていました。

話を続けながら窓に目をやると、その空間には似つかわない

真っ白い足

裸足です。

その階は3階であるため、窓には厳重に鍵がかけられています。

上の階や隣の部屋からその庭に降りることは不可能です。

生徒達がそれに気付くと大変な事になると思ったので、視線を逸らしながら話を続ける僕。

動く事もなくその場に存在し続ける足

そのギャップで僕がおかしくなりそうです。

途中で話を強引に笑い話に変えました。

ほのぼのと終わる雰囲気とは裏腹にその子の表情は変わりません。

窓を見ると足は消えていました。

確認するために窓に近づき小さな庭を見ると、何もない。

足跡も残っていません。

その後はすぐに消灯時間になります。

不安を抱えながらも、生徒達を自分の部屋に戻らせ、就寝指導を行いました。

夜は一番生徒達がはしゃぎ、問題が起こりやすい時間帯です。

僕は男子の階のすべての部屋のドアが見渡せるホールに椅子を並べて横になって監視をしていました。

少しのお喋りくらいなら許しますが、騒いでいる部屋には厳重に注意をします。

深夜1時を回るとほとんどの生徒が寝静まり、静寂の空間が訪れます。

他の先生と交代でお風呂に入ることになった僕は、1人深夜の大浴場へ。

整備委員が綺麗に片づけた風呂場で1日の疲れをゆっくりと落とそうと、湯船に浸かり、天井近くの窓を見上げました。

月の明かりか、町の灯りか、うっすらと明るい外の光を遮るように窓に何か違和感を感じます。

はっきりと残っている手形

決して生徒の手が届く場所ではありません。

そして、手から垂れていく水滴。

その手形が付けられてすぐのものと分かります。

回りを見渡すと浴場への入り口のガラスや、洗面の鏡にも手形が付いています。

確実に言えることは、整備委員と一緒に点検した、さっきまでは無かったという事実

広い露天風呂、見渡す限りのガラスや鏡にある手形

さっき見た足が脳裏に浮かびます

入り口のガラスの向こうに足だけが見えた気がしました

どれくらいそのまま居たかは分かりませんが、僕がのぼせているのではないかと心配してくれた先輩が様子を見に来てくれました。

その時には足は消えていました。

次に入る先輩が怖がってはいけないと思ったので詳しい事は告げずに、生徒の悪戯みたいですねと伝え、僕は担当の階に戻りました。

時計を見ると2時過ぎています。

気を取り直して、最後の見回りに生徒の部屋を回ったとき、ある部屋のテーブルに作りかけのカップラーメンを発見しました。

わざと気付かないふりをして、部屋を出る僕。

3分後その部屋に戻ると出来上がって湯気を立てているカップラーメン。

とりあえず、怒鳴り上げ、カップラーメンを没収しました。

一段落して部屋に戻ると笑いがこみ上げ、今日の変な出来事を忘れかけた時、

僕の部屋にもある小さな庭に、またあの足が来ていました。

怖い話投稿:ホラーテラー kazuyoshi2006さん  

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