中編5
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無縁仏

ジョギングを始めたのは5年前。

学生時代フルマラソンに出たことを思い出し少し走ってみよう、ふとそう思い走ってみると風を感じとても気持ちがいい。

走り終えた後は適度な疲労感と爽快感。

以来私は毎日走っている。

先週試験があった。

ネットで解答速報を見た。合格していた。

私は嬉しさと試験からの解放でとにかく走りたかった。

ジャージに着替えスニーカーを履きいつも以上にテンションを上げ家を出た。

いつものコースを走ろうと思ったがなんとなく坂道の多い道を走りたくなりコースを変えた。

実家の畑は山のてっぺんにある。

私はそこを目指した。

いつも以上にペースを上げ畑に着く頃には息が切れ汗だくになっていた。

地べたに座りジャージの上着を放り投げタンクトップ姿でしばらく息をととのえた。

空を見上げると少し曇り空だったが鳥がさえずり試験勉強に追われ必死に勉強をしていた時間を遠い過去のように感じた。

畑を見渡し久しぶりに来たな。と思いながら汗が引き肌寒くなりはじめたので放り投げたジャージを拾おうと腕を伸ばした。

今まで私はこの畑に何度も何度も小さな頃から来ていたはずなのに気がつかなかった。

畑の脇に小さな無縁仏らしきお墓が3つあった。

草に覆われ全く手入れされていない。

寒さも忘れしばらく見続けた。

なんだか悲しい気持ちになり私は草を抜きはじめた。

同情してはいけない。

と何かで聞いたことがある。

でも私は草を抜き続けた。

どれぐらい時間が経ったのだろう。。

全ての雑草を抜き綺麗になったお墓を見て私は心底ほっとした。

ほっとする。という表現が一番適切な言葉に思える。

気分が良かったのでそのまま実家まで走った。

実家に着くと母が

「ここまで走って来たの?」と半ば呆れ顔で言った。

父を探したら漬物をあげていたので(あげる=取り出すという意味)父のもとに行き畑の話をした。

「畑にある小さなお墓。あれは誰の?」

父は答えかけ私の後ろに視線を向けた。

私もつられ後ろを振り返った。

…何も居ない。

父は話し始めた。

「あれはなぁ…お爺さんの代よりもっと昔からあるんんよ」

私「誰のものか分からないの?」

父「分からんなぁ…」

私「どうして畑にお墓があるの?」

父「畑にあがる途中墓がいっぱいあったじゃろ?下にある墓はきちんと参られてる墓。上に行くほど手入れされることなく隅に追いやられた無縁仏。」

…そう言われたら畑に上がる途中にお墓がいくつかあった。。

母がコーヒーを入れたお盆を持って来ながら口をはさもうとした時ふと止まり私の顔ではなく私の後ろを見た。

母の顔を見ながら私も後ろを振り返った。

…何も居ない。

私「なに?」

母「気のせいだろうけど人が居たように見えたから」

私「…冗談やめてょ」

父「あの墓から少し離れたところにも墓があるじゃろ?」

私「畑に?」

父「畑の桃の木の近く」

畑の隅に追いやられたお墓があること。

しかも無縁仏で存在すら分からなかったこと。

なんだか悲しい気持ちになった。

私は実家でシャワーを浴び帰ることにした。

ジャージを脱いでいる時足に違和感を感じた。

太ももを見ると赤くなっている。

どこかでぶつけたのかな。

そう思いながらシャワーを浴びていた。

髪を洗っているとドアが開く音が聞こえた。

ギギッ…

「ママ?」

…返事がない。

ドアを見ると閉まったまま。

気のせい?

そう言えばさっき母も気のせいとか何とか言ってたな。。

なんとなく気持ち悪さを感じ早々と出た。

タオルで髪の毛をふきながらふと鏡を見ると私の後ろにうつむき加減の白っぽい着物を着た子供が居た。

その時は男の子か女の子か分からなかった。

ただ恐怖心は無かった。

見えたのは一瞬だけで

なんだか悲しそうだった。

「さっき子供のおばけ見えた」

私が母に言うと母は

「気のせいかと思ったけど…なんか憑いて来たのかもね」

母は呑気にそう言い私は実家を出た。

帰り道ジョギングコースとして毎日通る神社に寄った。

家に帰宅しどっと疲れが出て私は横になった。

…どのくらい眠ったのだろう。。

部屋の中は暗くカーテンを閉めてなかったので月明かりがわずかに差し込んでいた。

携帯で時間を確認しようとした時誰かが居ることに気がついた。

「テン、テン…テンテン…」

歌?なんだか分からないが口ずさみ誰かが私の横で踊っている。

お風呂場で見た子供だった。

可愛い女の子で

手を叩きながら踊っていた。

唖然としながら、でも微笑ましく感じながら見ていると私の太ももあたりに来て引っ張ってきた。

なに?

女の子を見ると悲しそうな顔をして歌が止まった。

…これが夢だったのか現実だったのか明け方目が覚めた時よく分からなかった。

朝シャワーを浴びようと服を脱ぎ昨日のことを思い出して太ももを見ると更に赤くなっていた。

仕事に行く支度をしなければと思っていた時メールが来た。

父からだった。

『座敷わらし発見!

枕元で踊ってた。白い着物を着た子供。

あれは絶対座敷わらし』

父はとてもプラス思考。

でも昨日の私の出来事といい父の出来事といい気になって仕方がなかった。

仕事をしている間も頭から離れなかった。

仕事が終わったのが19時過ぎ。

外は暗くなっていた。

私は実家の畑に向かった。

畑に続く小道を足早に歩いていると

「テン、テン…」

空耳だろうか。

聞こえた気がした。

畑に着いた。

父の言っていた桃の木の近くもうひとつの無縁仏を探す。

ちなみに畑はぶどうの木、桃の木、柿の木、そしてたくさんの野菜を作っている為けっこう広い。

太ももを引っ張っられた気がして見ると昨日の女の子が太ももを掴んでいた。

そのまま引っ張って行く。

不思議な感覚だった。

寒いはずなのに寒さを感じない。

雨水を貯めるためのドラム缶の横にそれはあった。

畑の横は竹藪。

竹が倒れ雑草に覆われよくよく見ないと分からない。

ひどい有様だ。

竹をどけ雑草を抜き

気がつくと女の子は居なくなっていた。

お墓は2つあった。

綺麗になったお墓を見て私は帰宅した。

その夜女の子が歌を歌いながら楽しそうに踊っている夢を見た。

悲しそうな顔はしなかった。

太ももはいつの間にか治っていた。

これが良かったのかどうなのかは分からないが私も父に負けずプラス思考なので自己満足している。

ちなみに父は座敷わらしを信じて宝くじを買っていた。

怖い話投稿:ホラーテラー じゅりさん  

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