中編4
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仏像

この話を書こうと思ったのは仕事である死亡診断書を見てから。

死亡診断書には病死とあった。

自然死(老衰)や病死の場合私から質問することはないので遺族が話さない限りそのまま受理される。

死体検案書は他殺などの場合で遺族の傷に塩を塗るかのごとく質問をしなければならない。

今回は病死だった。

すぐ受理するはずだった。死亡診断書を持って来たのは母親。

母親は私を見て

「もともとは貴方ぐらいの体形だった。でもご飯を食べなくなって…。」

…今から約10年前。

私も食べれなくなってしまったことがある。

もともと運動が好きで食べても消費しやすかったらしくどちらかというと痩せているほうだった。

学生の時から体形はほとんど変わらない。

それがある日をきっかけに食べれなくなってしまった。

私の実家は少し変わっていて増改築を繰り返し井戸が家のほぼ真ん中にある。

すごく古い部分と新しい部分でミックスされている家だ。

ある日母の部屋の押し入れを探っていた。

(母の部屋は古い部分)

理由は…不思議な夢を見たからだ。

私は必死に押し入れの中を探っている。

私だけど私じゃない。

やがて鈴の音が聞こえてきた。。

チリーンチリーン

夢はそこで終わり。

所詮夢なんだけど

なんだか気になって…。

で、ひたすら奥を探っていたら冷たい感触があった。

ん?

なんだこれ?

…重い。

押し入れから這い出て手にしたものを見た。

!!!

たぶん…金。

金の仏像だった。

30センチぐらいの大きさ。

ずっしりと重量感があり価値のありそうな代物。

私の中では実家にあるもので一番値打ちがあるんじゃないかと思われた。

ただ問題があった。

…それは…仏像のお腹部分なにかで削られたみたいにえぐられてる。

綺麗にではなく乱雑にえぐった。という感じ。

はっきり言って気味悪い。

人の押し入れを探っていたことも忘れ私は母が帰宅してすぐ聞いた。

私「これ、何で腹えぐれてるん?」

母「!!!何これ?気味悪い」

母「どこにあったん?」

私「押し入れの中」

会話を交わして母が知らないのは一目瞭然だった。

母に手渡し私は友達と遊ぶ約束があったので家を出た。

父が帰宅して仏像を見せたが父にも分からなかった。

仏像の話はそれっきりでどこに持って行ったのかも聞かなかった。

それから1ヶ月経ったか経たないかぐらい。

私は食事をとるのが非常に面倒になった。

その頃私はクレーン車に魅せられ女なのに移動式クレーンの免許を取り建設関係の仕事をしてた。

クレーンを使わない時は汗水流して現場作業もしていた。

力仕事ゆえ体力はとても使う。

食べなければと思うんだが箸を持つことすら面倒。

始めの頃は無理に食べていたがだんだん食べる行為が嫌になってきて1日何も食べなくても平気になった。

比例して体重も1ヶ月ほどで一気に落ちた。

私は169センチと背が高い。

体重が30キロ切りそうだった。。

仕事をしていても何度も気を失う始末。

その度に鈴の音が聞こえていた。

チリーンチリーン

夢で聞いたあの鈴の音だ。

母が私に仕事を休めと言い私は大学病院に連れていかれた。

血液検査から始まり甲状腺の検査、果てには

「通販で海外の変な薬を購入してないか?」

「精神的に辛いことがあったか?」

など質問責めにあい丸1日かかってしまった。

食べようと思っても噛むという行為が面倒なのでアイスクリームやコーンスープなど飲み込めるもので高カロリーなものを取るんだけどそれだけじゃ身体は動くわけない。

結局自力で起き上がることすらままならなくなり仕事を休ませてもらうことにした。

家で寝ていると鈴の音が聞こえる。

夢なのか現実なのかも分からない。

母は心配して毎日バイクで私の家に寄り見に来ていた。

チリーンチリーンと鈴の音が聞こえる。

うるさいぐらいだ。。

チリーンチリーンチリーンチリーンチリーンチリーンチリーンチリーンチリーンチリーンチリーンチリーンチリーンチリーンチリーンチリーンチリーンチリーンチリーン…

…私は病院に居た。

ほとんど食べてないせいで思考回路が働かない。

しばらくぼーと天井を見ていた。

私は毎朝自分の手を見る習慣がついていた。

食べれなくなってから朝目が覚め手を動かし思い通りに動くかチェックする。

日が経つにつれ手の動きが鈍くなっていたからだ。

手を見た。

鈍いながらも動いた。

腕を見た。

点滴をされていた。

看護師が来た。

医者が来た。

母は泣いていた。

私は2日間生死の間を彷徨っていたらしい。

私は母に

「お腹減った」

と言ったらしい。

後で聞けば私が食べれなくなり病院での診断に納得出ない父は毎日仏壇で慣れないお経を読んでいた。

ある時父は仏壇に違和感を感じた。

見ると押し入れで見つけた仏像が仏壇の中へ入っていた。

母に聞くと母がどうしていいものやら分からなかったので置いていたそう。

父はその仏像を持ってお寺に行った。

住職さんは仏像を見てびっくりしていたがお預かりします。と言ってくれた。

目が覚めたのはその次の日だったとか。

食べることに煩わしさを感じていたことが夢だったように私は食事を普通に取り医者が驚くほどの回復力で退院した。

私が今の仕事に就いたのはこのことがきっかけだ。

何もかも心霊に関連付けるのは嫌だけれど否定出来ないことがあるのも確か。

今の私があるのは両親のおかげだと心から感謝している。

怖い話投稿:ホラーテラー じゅりさん  

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