短編2
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私には2つ下の弟がいる。

弟は小学生の時脳挫傷で昏睡状態に陥り死にかけた。

自転車の転倒だった。

その時の様子は今でもリアルに覚えている。

友達(K)が泣きながら走って我が家に来た。

「隆くんが…隆くんが…」

泣きじゃくり何を聞いても埒があかない。

父は何かを感じた。

物凄い勢いで

「どこに居る?」と聞いたかと思うと裸足で家を飛び出した。

母は不安な顔をし玄関の前で父が走り去った方角を見つめていた。

現場は家からすぐ近くの緩やかな坂道だった。

父は弟を抱き抱え家に戻って来た。

弟はグニャリとし失禁していた。

声をかけても何も反応がなく目を閉じたままだった。

父は母と救急病院に行き

小児科の先生に見てもらった。

その時も弟は目を閉じて無反応だった。

小児科の先生は

「打撲ですネ。気を失っているだけです」

と言った。

納得出来ない父は先生の胸ぐらを掴み

「なめとんか、われ!!!きちっと診察せえ!!!」

小児科の先生は脳外科の先生を呼んでくれた。

脳外科の先生は一目見るなり危険だと感じたのだろう。

弟はすぐレントゲン室に運ばれた。

(小児科の先生はレントゲンすら撮ってくれなかった)

頭蓋骨骨折、そして頭の中で出血が起こっている。

今日が山です。

と先生は言った。

当然ながら父と母は帰って来なかった。

次の日Kのお母さんが来て弟が危険な状態だと祖母が話すと泣いていた。

祖母も泣いていた。

Kのお母さんは夕方Kを連れてまた我が家に来た。

「自転車で坂道をおりてた…僕が先頭で隆くんが後から……」

そう言うとKは震えていた。

父と母は次の日もその次の日も帰って来なかった。

着のみ着のまま出ていったきり帰って来なかった。

私はその時やっと事の重大さが分かってきた。

弟に会いたくてたまらなくなった。

…5日目の明け方母から電話があった。

「目を覚ました」

母はその日の夕方戻って来た。

憔悴しきっていたが笑顔が見れた。

荷物を詰め込み再び病院へ行った。

幸い後遺症がなくこの先も心配ないだろう。

先生はそう言ったそうだ。

祖母はKの家に電話をかけ意識が戻ったことを伝えた。

Kの母親は間もなくして我が家に来た。

良かった。良かった。

我が子のように喜んでくれた。

その後言葉を選ぶように祖母にこう言った。

「…Kがあの時のことを話してくれたんです。あの日坂道をKは先に自転車で下りました。隆くんが来るのを振り返って見たんです。隆くんは「待てよ〜」と言いながら自転車をこいで坂道を下りてきました。すると…突然髪の長い女性が隆くんの前に居て…隆くんは慌てて避けて…。」

弟が退院して元気になった頃私はそっと聞いてみた。

私「自転車の前に誰かいた?」

弟「…あまり覚えてないけど…おいで。って聞こえた」

怖い話投稿:ホラーテラー じゅりさん  

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