短編2
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チョコの話

これはある犬の話です。

柴犬の雑種で毛色は茶色。

その姿から「チョコ」と呼ばれていました。

チョコは野良犬で、近所の子供達や住民に可愛いがられていました。

お腹が背中にくっつきそうな程、痩せていたので

皆が心配してエサをあげていました。

「飼ってやろう」という夫婦もいましたが、チョコは鎖に繋がれる事を嫌がりました。

そしてチョコはどんどん衰弱していきました。

「エサをあげてるはずなのに」

近所の住民は不思議に思っていました。

ある晩のことです。

以前「飼ってやろう」とした夫婦の寝室にチョコが入ってきました。

服を引っ張られ目を覚ました夫婦は驚きました。

「どこから入ってきた?」

チョコはしきりに服を引っ張り、夫婦を外へ連れ出そうとしていました。

「わかったわかった」

夫婦は着替えてチョコの後について行きました。

着いた場所は、放置された物置でした。

チョコが入り口の外で待っています。

「…ここだな?」

夫婦は中に入りました。

「これは…」

そこには丸々と成長している仔犬達がいました。

傍らにはチョコが胃から戻したエサがあります。

そしてチョコの亡きがらがありました…

仔犬達は死んだ母親に甘えていました。

「…ばかな。チョコは外に…」

夫婦はすぐに物置の外を確認しました。

そこには消えそうなチョコがいました…

夫婦に近づき、哀願するような目で見上げてきます。

夫婦は涙を流してチョコの頭を撫でました。

「…良く頑張ったな…」

「…もう大丈夫。この仔達は私達が育てるよ…」

チョコは幸せそうな顔をして消えていきました…

我が家のチョコの仔犬達は、元気に成長しています。

怖い話投稿:ホラーテラー あゆさん  

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怖くはないけれど、とても素敵なお話で感動しました。素敵なお話をありがとうございました。

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