短編2
  • 表示切替
  • 使い方

天秤

昔、付き合っていた彼女。

その彼女が体験した話です。

彼女の爺ちゃんは、末期のガンだったそうです。

寝たきりで入院していた爺ちゃんは、余命2ヶ月だった。

ある雨の日、信号無視した車にはねられた彼女は爺ちゃんが入院している病院に運ばれたそうです。

彼女は頭を強打し意識不明。

しかし彼女は意識不明の中で、幽体離脱をしていたそうです。

自分を見下すように、宙に浮いていたそうです。

すると、体の頭の付近に黒い扉が現れた。

ドアがゆっくり開き、出てきたのは真っ黒な大きい犬だったそうです。

見た目は和犬で、首輪の代わりに数珠をさげていた。

その後ろからガリガリに痩せ黒いスーツを着た男が、重そうに錆びた天秤を肩にかついでドアから出てきた。

犬は、彼女に語りかけた。

・・・代償を払え・・・

と、テレパシーのように頭の中に語りかけたそうだ。

後ろにいた男が、天秤を床にドンッと置くと天秤は左に傾いた。

どうやら、代償を天秤にのせるようだ。

彼女は、どうしていいのかわからなかった。

・・・時間が過ぎると、代償も大きくなるがいいのか?・・・と問われた。

すると、突然爺ちゃんが自分同様透けて犬の前に現れた。

爺ちゃんは、無言で左腕だけ残し右足、左足、右腕を差し出した。

爺ちゃんが、むしり取った足や腕は天秤の上に置かれたが、まだ傾いたままだ。

『やめて!』と声を出したいが声は出ないし届かない。

・・・足りぬ・・・

・・・連れて行ってもいいのか・・・

犬は爺ちゃんの目を見ながら語りかけた。

すると、爺ちゃんは私を見て ニコッ と笑うと残った左手を身体の中に突っ込んだ。

ググっ・・・うっ・・・

と来るしそうな声を出しながら朱くて丸い石を取り出した。

それを、天秤にのせようとするが霧のように透けた身体がバラバラになり始めた。

彼女は、心臓を差し出したのだと悟った。

涙が止まらなかったそうだ。

天秤が平行になったとき、爺ちゃんは姿を消していた。

・・・では、戻れ・・・

と言う言葉で彼女は目が醒めた。『あ・・・あ・・』と声を出す。

周りを見渡すと家族が声に気付き涙を流していた。

『じ、爺ちゃんが・・・』と言うと同時に看護師が病室に駆け込んできた。

『おじいちゃんが、急変しました!ご家族は、集まってください!』と叫んだ。

みんな、私を置いて違う病棟の爺ちゃんの病室へ向かった。

全身打撲に、頭部を強く打っているので動けなかった。

1時間後

母親が泣きながら病室に戻ってきて一言。

『おじいちゃんが、あなたに・・・って最後の力を振り絞って』

一枚の紙切れを差し出した。

そこには、

・・・つよくいきて・・・

と、書かれていたそうだ。

怖い話投稿:ホラーテラー 福岡県民さん  

Concrete
コメント怖い
00
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ