中編3
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箱に執着する人

あるカフェで友人を待っていたときのこと。

友人が来たら、そのまま居酒屋行く予定だった。

『あ、コーヒーを・・・』と、60代くらいの男性が隣のテーブルに座った。

僕は携帯で麻雀していた。

・・・ブーブー・・・

と、隣のテーブルに座る男性の携帯がテーブル上で鳴る。

『も・・・もしもし・・・』

携帯に不慣れなのか、携帯を両手で持ち話始めた。

『も・・・持ってきました。はい・・・はい。』

年輩の人が敬語を使う。

暇なので、麻雀しながら盗み聞きしていた・・・というより隣なので小さい声で話すものの聞こえてくる。

『でも・・・鍵が・・・そ、そうです。鍵がない・・そうです。』

何やら、金庫らしき話をしている。

『いえ、昨日持ち出すときに確認したのですが・・・見つからなくてですね・・・』

鍵がないらしい。

男性の顔は、ただならぬ形相で汗を額から流していた。

コーヒーお持ちしました。と、ウエイトレスが持ってきた。

『あ、すみません。』と受け取る。

『ち・・・ちょっと待ってくださいね・・・』と、横の椅子に置いた手提げのバッグから小さな箱を出した。

箱の大きさは、縦20cm 横20cmくらいの正方形の木箱で古びたダイヤル式の鍵がついていた。

『・・・いえ、ダイヤルの鍵です。・・・3桁です。』

鍵は3つの数字を入れれば開くらしい。

『え!ここでですか?・・・それは・・・』

話の流れからすれば、壊せ という命令のようだ。

『001から試していけば・・・はい・・・すみません』

男性は、箱を裏返しにして裏を見ている。箱の裏に焼印のような黒い模様が入っていた。

意味は、よくわからないけど【人】という字だった。

『ちょっと・・・ち』

どうやら、電話が切れたらしい。

『はぁ・・・』

男性は、ため息をついて箱をテーブルに置くと おもむろに立ち上がり奥のトイレに向かった。

なんなんだろ・・・

コトッ

箱が動いた?・・・いや、気のせいか・・・

コトッ

動いた・・・

箱の中に小動物でもいるかのように、カタカタと動いては止まり・・・また動く。

なんなんだ・・・

すると、家族連れで来ていた大きなテーブルの席にいた女の子が僕の隣にあるテーブルに来た。

箱を、じっと見ている。

カタカタ・・・カタカタ・・・

『ママ!これ、動いてるよ!』と声を出したと同時に、すごい形相でトイレから男が戻ってきたのだ。

男は、無言で箱をバッグに入れるなり頼んだコーヒーを飲むことなく店を出ていった。コーヒー代金も支払わずに・・・

それからすぐ、友人が来た。

待っている間の出来事を話したが鼻で笑われてしまった。

居酒屋の玄関先で、友人と別れて一人で家路を急いだ。

駅のホームで電車を待っていると、あの箱を必死に開けようとする若い女性がホームの椅子に座っていた。

どう表現していいのやら・・・とにかくがむしゃらに周りの目を気にせず開けようと必死になっていた。

それに気付いたサラリーマン風の男性が声をかけた。

男性が何を言ったのかは、聞き取れなかったが その後の女性の声は聞き取れた。

『開けなきゃ!開けなきゃ死ぬのよ!』と。

なぜ、開けようとしていたのかは今でも分からない。

何が入っていたのかも、わからない。

箱崎駅での出来事でした。

怖い話投稿:ホラーテラー 福岡県民さん  

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