中編4
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人間の醜さ

この話は、皆さんの周りでも起こる可能性があります。

オチとか何もありません。

以前の職場で、仕事上のトラブルが発生した。

分割払いで契約するということで商品を購入されたお客様の商品が原因不明の故障を起こした。

故障したのは購入されてから1年と2ヶ月後のこと。

全国で販売した商品が相次いで故障している事例はなかった。

メーカー保障の1年を過ぎていたため、お客様が修理にかかる費用を負担する…世間一般的な考えです。

しかし、故障品を売り付けたと激怒する年輩の男性はその商品を店舗へ持ってきて新品交換の要求をしてきました。

確かに壊れていましたが通常、交換しないし修理代金を弊社は負担しない。

それが弊社のマニュアルです。

しかし、いくらこちらが頭を下げても弊社の要望は聴き入れてもらえず平行線を辿りました。

警察沙汰まではいかないが、徐々に営業に支障が出始めた。

当時、店舗のリーダーだった自分を含めスタッフ8名のストレスが溜まるばかりだった。

毎日のように、店舗へ電話があり来店しては他のお客様へ不良品を販売する店舗だと騒ぎ立てた。

弊社の不手際ならクレームのお客様を【ご指摘】ということで今まで以上のサービス向上を図る。

だが【ご指摘】ではなく【クレーマー】へと変わっていった。

弊社の主要店舗ということもあり、内々に事をすすめる為に僕の判断でイレギュラー対応(優遇対応)をした。

お客様の要望通り新品に交換をした。

決して安くない商品の代金は全て自分が負担した。

顧客満足もあったが、何より金で僕やスタッフみんなのストレスや精神的なダメージがなくなるなら…と決断した。

しかし、条件付きを申し出た。

壊れた商品は分割払いなので、それは必ず払って頂くということ。

壊れた商品の回収。

次、壊れても無償で交換はしない。

この3点だった。

お客様了解のもと、新品交換の手続きをした。

全ての対応(対面)は僕が行っていたがお客様は会社が交換した…そう思っていたに違いない。

だが、自分の手出しで交換したとは言わなかった。

交換の手続き中は、かなり上機嫌だった。

そして交換した次の日に店舗の電話が鳴った。例のクレーマーだった年輩の男性からだった。

『お世話になったので、年賀状を送りたい。』

もうクレーマーではなくなり、うちのいいお客様として対応をしなければならなかった。

固定客になれば、誰かを紹介して頂ける…その可能性があったので通常はしないのだが12月始め…電話があったその日に住所を教えた。

1月8日。

少し遅い年賀状と小包が届いた。

例の年輩の男性からだった。

『昨年はお世話になりました。』的なことが書いてあり最後まで読まず小包を開けた。

そこには、現金30万円が入っていました。

年賀状の文面の最後に、

『現金は迷惑をかけた謝礼です。』と、書かれていました。

どうも、お金の問題ではなかったようです。

しっかり対応を、してほしい…その願いを受け止めて欲しかったのかもしれません。

僕は、手紙を添えて現金を返送しました。

『気持ちだけで十分です』と。

それから、1ヶ月後。

リーダー職から、異例の2階級特進でマネージャーになった。

今まで上司だった方が、部下になった。

有難迷惑な話だったが、給与は2倍以上になった。

本社の人事の方に理由を聞いたら、『○○様が君を昇進させるなら、投資をする。』と、クレーマーの男性が弊社に投資したそうだ。

人事は金額を明かさなかったが、何十万の金額ではないと思う。

そして、昇進して店舗勤務ではなく事務所勤務になった。

マネージャーは、いくつかの店舗を担当し売上管理、人事管理などの仕事をしなければならない。

しかし、誰もマネージャーの仕事を教えてくれる人はいなかった・・・

『あいつは、コネで・・・』とか『金で昇進した・・・』など言われるようになり、自分のいる場所はなくなった。

今まで支えてくれた上司は、助けてくれていた。しかし、築いた信頼関係は崩れかかっていた。

上司も、愚痴を言われるようになるんじゃないか・・・居場所がなくなるんじゃないか・・・

そんな不安があった。

それから、暫くして僕はおかしくなった。

バスで通勤していたのだが、いつも乗っているバスに乗れなくなった。

体が拒否するかのように、足が前に一歩出なくなった・・・それが始まりだった。

次は朝が苦手になり起きれなくなり、食べ物が喉を通らず、いきなり不安に押し潰されそうな感覚に陥ったりした。

夜になると、明日が不安で眠れなくなり一睡もせず仕事に行っても眠くならいくらい気が張り詰めていた。

そして・・・ある日、いつものバスに乗った。

そして気が付いたら家に帰ってきていた。時計を見ると朝に家を出たのに、もう昼前だ。

記憶がなかった。

携帯電話を開き、会社に連絡しようと電話帳を開くが指が動かない。

限界だ。

それから、僕は一度も会社に行くことなく辞めた。

通常は、1〜3ヶ月前に言うものだが・・・

医者から

『鬱病+失調症+メニエール病の合併症』と診断された。

それから、人間不信に陥り1年間 仕事をしなかった。

いや・・・出来なかった。

全てが恐かった。

皆さんも、気をつけてください。

怖い話投稿:ホラーテラー 福岡県民さん  

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