中編4
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麻雀荘での事

麻雀荘で体験した話。

その日は久しぶりに麻雀を打っていた。

卓に入っていたのは、俺と、店のメンバーさんと、麻雀が大好きそうな前歯がないおじさんと、ヒョロリとした男だった。

この日の卓のメンツを見て、俺は、

(今日は勝ったも同然だな…)

と密かに思っていた。

なぜなら、メンバーさんは無茶をしない綺麗な打ち筋だからやりやすいし、ヒョロリとした男は、牌を揃えるのもたどたどしい素人さんみたいだったからだ。

マークするのは、歯のないおじさん一人だけだ。

それも、おじさんは俺の下家だから、俺の方が多少有利だ!

そんな恵まれた状況の中、麻雀をやっていたのだが、

信じられない事が起きた…

ヒョロリとした男が4連勝したのである。

まあ、運で3連勝・4連勝なんて事はよくあることだが、俺はこのヒョロリとした男に何か違和感を感じた。

たどたどしい手付きで牌を扱うのだが、この男…一回も振り込まないのだ…

何かがおかしいと感じた俺は、五回目のハンチャンで男の動きをしっかりと観察することにした。

麻雀中に男の動きをよく見ていると、男は確かにおかしな動作をしていた。

誰かがテンパイ気配の時や、リーチ時に、耳をしきりに触るのだ。

(ハハーン…こいつ何かやってるな…)

そう思ったが、確信がない。

なんの根拠もないのに文句の言いようがない。

とりあえず麻雀を続けていると、俺に最高の山場がきた。

高目倍満のデカイ手だ!

ヒョロリ男を見るとしきりに耳を触っている…

一体なぜ耳を触るんだ…

そんな事を思いながら俺は考えた。

(ここはリーチか!

いや…このスーピンはトイメンのヒョロリ男にあぶないか…どうする…)

歯のないおじさんが、俺をせかす、

「ニーチャン、はよ切れや、朝になってしまうがな!」

うるさいオヤジだ…

俺が迷っていると、どこからか女の声が聞こえた…

まるで頭の中で響くように、その女の声は言った。

「スーピンよ……

スーピン切りで…リーチよ…」

なんだこの声は!

俺は驚いたが、とにかく声の通り、俺はスーピンを切った。

すると、トイメンのヒョロリ男が静かに言った。

「ロン…えーと親ッパネです…」

そしてヒョロリ男は俺に向かって言った。

「このハンチャン終わったら、ちょっと話をしませんか?」

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結局、そのヒョロリ男は5連勝した。

5回目のハンチャンが終わると、俺とヒョロリ男は卓を抜けた。

外に出ると男は言った。

「ちょっと…その辺りで飲みませんか?」

丁寧な言葉使いだ。

俺は丁寧な言葉には丁寧に返す主義だ。

「いいですね。

しかし、あなた麻雀がお強いですね。」

そう言うと、男は苦笑いをした…

二人で近くの居酒屋に入ったのだが、

まあ…男の無口な事。

何も喋らない…

俺は自分から聞いてみた。

「5連勝、すごかったですね。しかし、俺は思ったんですが、あなたの強さには、何か秘密がある気がするんですよね…」

するとヒョロリ男は、苦笑いしながら、やっと口を開いた。

「見れば分かりますよね…僕が麻雀素人だって事は…

僕がですね、勝てる訳は…全て教えてもらってるからなんですよ。僕の肩辺りに、普通の人には見えない女がいて、その女が全て教えてくれるんですよ…

で、その女が言ったんです。

あなたに声をかける事が出来たって…」

にわかに信じられない話を聞いた俺は、驚きを隠せなかった。

女て…女に聞いていたって?

だから、しきりに耳を触って何かを聞いていたのか…

俺言った。

「信じられない話ですが…なぜ女はあなたに憑いたのですか?」

男は口ごもりながら答えた。

「僕の女房なんです…麻雀狂いで、借金作って自殺した…

僕の女房なんです…」

ガハッ…なんてことだ…

自殺した女房とイカサマ麻雀をやっていたのか…

俺はなんだか苛立った。

麻雀で苦しんだ女房にイカサマ麻雀をやらせるとは何事だろう…

供養が先じゃないのか。

俺は男に怒鳴った。

「ふざけるな!

お前に麻雀をやる資格はない!

イカサマ麻雀で稼いだ金を全て店に返せ!

そして、女房をしっかり供養するんだ!」

すると、俺の頭の中で女の怒声が響きわたった。

「テンパってんじゃねえよ!

こっちはピンフに話してるのによ!

お前は英雄気取りの、国士無双のツモりか?笑わせるな!」

キョトンとする俺に、ヒョロリ男が言った。

「女房が怒ってますわ…いえ、あなたの言う事はよく分かります。僕も女房を供養したいんですが…

女房が許してくれないんです…」

そう言うと、男は俺をおいて席をたった。

一人残された俺は呟いた。

(一体どっちが幽霊なんだか…)

と。

怖い話投稿:ホラーテラー ビー玉さん  

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