中編6
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譲れない者 1

彼女は幼なじみの親友で、先輩の彼女。

ゴールデンウイークなのに暇していた深夜の出来事。

キキーッ!!

山のカーブをタイヤの悲鳴を響かせ猛スピードで下る先輩の車。

彼女『助けてー!!』

助手席に座る彼女は、パニック状態で叫んでいる。額には汗が・・・

僕『くそ!なんなんだよ!』

先輩『つかまっとけ!!』

運転する先輩も僕の額にも大量の汗が・・・流れていた。

飛ばして下る車の後ろから追い上げてくるモノから逃げている。

先輩『つかまれ!!』

ギャャ ギャャ

タイヤの悲鳴が山に響き渡る。

     30分前

僕『暇、暇、暇やん』

ただ、暇だったから街をトロトロ走っていた。

スポーツ系の車なのに、2速に入れたままだ。

彼女『あ、バス!』

僕『ん?バスがどうした?』

彼女の視線の先には、バス停に停車するバスが見えた。

でも、ずっと真っすぐな道路の距離にして200Mは離れていた。

彼女『バスって深夜1時前に走ってる?』

僕『12時くらいは、あるけど・・・あれ回送なんじゃない?』でも、回送にしても時間的にはだいぶ遅い時間だ。

トロトロと片側2車線の左側を走っていた僕は3速にいれた。

徐々に停車中のバスに近付く。

バスはハザードを付けてバス停で停車していたが、ハザードをやめて走り出した。

彼女『回送がバス停に停車する?しかも、ここ田舎の方だよ』

確かに、この先の交差点を左に曲がれば山だし田舎。

さきほど止まっていたバス停は、山の入口のバス停になる。

僕『追い越すか・・・』

僕は片側2車線の右車線に出て、バスの追い越しをしようとしていた。

彼女『どこ行きって書いてないよ・・・』

僕『え?』チラッと右車線から斜め前を走るバスの上あたりを見た。

何やら行き先を表示する部分が真っ黒な紙で覆われている・・・初めて見た。

そこで、はっ!と気付いたことがあった。このバスは・・・どこのバス会社だ??

見たことない・・・。

バスの色は古ぼけた白。テールランプの形状やタイヤのホイールからして古そうな感じだ。所々錆びている。・・・と、グーッと空気が重たくなり始めた。

僕『まさか。』

車はバスと並んだ。

人は乗っていないようだが、こんな夜中に気味の悪い・・・。

僕には、霊感が少しあるようで時々 みんなが見えていないものが見える。そのつど色々な形で体に異変を知らせてくれるのだが・・・

今回は空気が、どんより重たくなってきた・・・最悪のパターンだ。

以前、城跡で下半身のない女に追いかけられたパターンと同じ【空気の変化】が見られた。僕の中で空気の変化は、かなりやばい!ことを示す変化。

そして、僕はバスの運転席あたりまで追い上げた。しかしバスの運転手がいない。

僕『えっ!!』

バスは無人で、走っている。まさかが的中した。

びっくりして、スピードを緩めてバスに追い越された。

彼女『どうしたの?』

僕『いや・・・』彼女に、運転手がいなかったことを言っていいものなのかわからなかった。

バスを後ろから見ると、無人のバスに子供が乗っている。女の子だ。

女の子は、バスの一番後ろに座り僕たちを見ている。しかし、鼻から上しか見えていない。多分身長が足りないようだった。

彼女『なんか、気味悪いね・・・』と、言う。

彼女は女の子が見えていないが感覚で気味が悪いと思ったようだ。

もちろん、運転手も乗客もいなかったバスの中に女の子がいる時点で人間ではない。

トロトロ走る僕らの車を置いて、女の子を乗せたバスは交差点を左に曲がり山へと向かった。

僕らは、右へ曲がって街へ向かう予定だったのだが・・・

さすがに、あの奇妙なバスを見たらちびりたくなるよな。僕はトイレに行きたかった。

左に曲がれば、すぐそこにコンビニがあるので左に曲がった。

バスがいない・・・

僕も彼女も目を合わせた。『やっぱり・・・』と曲がるとすぐ50M先の右手にコンビニが見えてきた。

ガリガリ・・・

彼女『な、何?何の音?』

僕『なんだろ・・・』

ガリガリ・・・

なにか、何かを削るするような音が聞こえてくるのだが、どうも外からじゃなくて車の中から聞こえてくる。

僕『バスの次は虫か?』

コンビニの駐車場に頭から突っ込みエンジンをかけたまま車を停めて、車内を見る。

するとズンッと、また空気が重くなった。

彼女の方を見ると彼女は、左の窓から外を見ている・・・と、彼女の膝あたりまでのスカートの中から黒髪の女の子が、小さな頭と細い右腕を出して手首から先の自分の指を、貪り食っていたのだ。

貪り食う指には、すでに肉がなく骨が剥き出しになりその骨をかじっている音だった。

ピチャ・・ガリガリ・ハフッ・

僕の脳はこの状態で、彼女を助けることが出来ない上に、この危機を脱する可能性がないと判断した。

しかし、体がそれを拒絶するかのように大胆にも僕は左腕で女の子の髪を引っ張っていた!

うわぁぁ!!ちくしょ!!

彼女の、股から女の子が引きずり出される!

・・・ズルズル・・・

彼女『何!急にどうしたの?』

と、彼女が普通にびっくりしている。

女の子が見えていない!逆に、有り難い!今の状況が見えていたら完全にパニックに陥っているはず!

と・・・急に、左腕が軽くなった。『あれ?』女の子の髪を引っ張っていたのに、いつの間にか消えている。

良かった  はぁ

しかし、左手の中には無数の長い黒髪を掴んでいた。

心臓が、壊れそうなくらいバクバク鳴っている。

車内を見渡すが、さっきの女の子はいない。

・・・彼女に気付かれないように『一緒にトイレ 行こう』と、外に誘い出し髪を棄てた。

一体、なんなんだ・・・

今までの経緯をコンビニの入口あたりまで考えていた。

すると、コンビニの自動ドアに反射してさっきの女の子が映りこんだ!

はっ!と後ろを振り返るが、誰もいない・・・

今、確かに赤い服の女の子が手招きをしているように見えたが。

彼女は雑誌のコーナーへ行き本を読み始めた。

さすがに、コンビニ店員の前には現れないよな・・・と思い彼女を残してトイレへ。

1〜2分か。

用を済ませて、トイレから出ると雑誌コーナーにいた彼女がいない。女子トイレか?

女子トイレの電気がついている。トイレか・・・

僕も雑誌コーナーで彼女を待った。

するとすぐ

ガチャ  女子トイレのドアが開いて出てきたのはコンビニの女店員がだった。

女店員を僕を見るなり、不思議そうな顔をしていた。

・・・あいつはどこに?・・・

雑誌を投げ捨て外へ出て駐車場へ行き見渡すがいない。

コンビニに戻り女店員に問い詰める。『さっき女がいただろ!どこ行った?』

店員『あの・・・あなたと出て行きましたよ?』

誰だ?誰とだ?俺?店員の真剣な顔を見ると、本当のようだ。

ブロロロ

僕の車のエンジンが外から聞こえてくる。

しまった!車か!

慌てて、外に出た!車が、動き出した瞬間に助手席から彼女が飛び出してきた。

彼女は俺を見つけるなり、走ってこちらに向かってきた。

彼女は、『あれは人間じゃない!顔の左側は、あなただったけど右側は違う顔だったの!』と泣きながら抱き着いてきた。

一体なんだ・・・狙われる理由がわからない。

すると、車の運転席から男とも女ともわからない赤い服を着た子供が降りてきた!

『え?何?運転席が開いたよ!しかも、さっきの人がいない・・・』

彼女には、子供の姿が見えていないようだ。ここでコンビニに逃げ込めば逃げ道がない・・・意外と冷静に判断できた。

『に、逃げるぞ!』彼女の手をとり、必死でコンビニの駐車場から車を置いて走った。

『え?どうしたの!』と、彼女が聞いてくるが答える余裕なんてなかった。

なぜなら、あの子供が四つん這いになりゴキブリのように カサカサ と追ってくるからだ。

『いいから走れ!!』

後ろを振り向くと、背中から何本も腕が生えて追いかけてくる!

カサカサ

動きは、そんなに速くなかった。『逃げ切れる!』そんなことを思った直後に後悔した。

街へ逃げる直線の道に子供が何人もいる。反対側も。

みんな違う顔立ちで、男女とも区別できる。みんな同じなのは 白い袴を着ていること。みんな2歳くらいだということ。

ど、どうする・・・

後ろも、街も、ダメか!

勿論、右側も子供がいる。あとは左側の山の下にある森しかない。

体は自然と森へと逃げていた。そう、この森には僕と先輩しか知らない霊が近づけない場所がある。

先輩は、僕以上の霊感を持つ。

『急げ!』

続く

怖い話投稿:ホラーテラー 福岡県民さん  

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