短編2
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換気扇

その日、僕は家のトイレでうなっていた。

下痢だ。

おなかの調子は全然良くならず、むしろどんどん痛みは増していた。

その時だった。

ふと天上を見上げると、一般家庭のトイレになら何所にでも着いてそうな普通な換気扇が見えた。

それはいつもどおり。

でも何かが違っていた。

僕は絶句した。

顔だ。

目の部分にぽっかりと黒い穴の開いた、無表情な男の子の顔が僕を見下ろしていたのだ。

恐怖に目を見開いている僕をよそに、その男の子の顔は頭突きでふたをはずし、そして、首をヌルリと伸ばしながら僕の方へと近づいてきた。

今日この家には僕一人。両親は二人とも出張だ。

助けを求める事も出来ず、あまりの恐ろしさに目を覆った僕の真横で、男の子の顔が何かをつぶやいた。

その途端、僕は自分の意識が薄れていくのを感じた。

目を覚ましたとき、僕は何かとても狭い場所に無理やり入り込んでいるような感覚を感じていた。

頭がもやもやして、物事をちゃんと考えられない。

方向感覚もないようだ。

と、視線の先にうっすら光が見えた。

よく見ると、そこはトイレのようだ。

知らない男の子が、便座に座っている。

僕は、それを上から見下ろす感じになっていた。

もっとよく見ようと、体をねじらせて光の方へとにじり寄った瞬間、男の子の顔が急にこっちを向いた。

そして、まるで恐ろしい何かを見たように、顔が恐怖に引きつるのが分かった。

僕の体は本能的に、この場所とトイレを隔てていた網目のあるふたを頭突きではずした。

どこかで見た光景。

でも、思い出せない。

頭の中のもやもやが広がっていく。

もう何も考えられない。

体が勝手に動き、まるで首の皮を無理やり伸ばされたような感覚が僕を襲った。

気づくと、男の子の顔が僕の真横にあった。

男の子は目を覆っている。

そして、僕はつぶやいた。

「ゴメンネ・・・。」

気がつくと、僕は自分の家のトイレに座っていた。

寝てしまったようだった。

「フツー、トイレなんかで寝たりするか?」

そう思ったりもしたが、現に僕は今、トイレに座っている。

「まぁ、いいや。」

そして僕がトイレを出ようとしたとき、急に誰かの鋭い視線を感じたような気がした。

振り返るが何もない。

「気のせいか・・・。」

そんな僕を、換気扇の奥から、人の形をした何かが見つめていた・・・。

長文失礼しました。

そして最後まで読んでくれた方、どうもありがとうございました。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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