中編4
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毛玉【二章】

あの日から毎夜夢に見る

化け物にCが追い掛けられる、そんな夢。

「箱」に詰まっていた真っ黒い髪の毛を、人が埋まるほどの量を集めたような大きな球体

中心には、痩せこけた老人の顔。口を大きく開けて笑っている

ヒャッヒャッヒャッヒャ、と、あの笑い声が聞こえる、もう直ぐ後ろに

顔の丁度、真横から長い長い両手が生えている

和室が続く屋敷を、幾重も立ちふさがる障子を開きながら逃げるC

化け物の動きは遅い、ズズ…と音を立てながらナメクジの様に進む

しかし、いくら障子を開けても出口は無い

徐々に距離が詰まり、Cは追い詰められて行く

初めの頃見た夢では、もっともっと余裕が有ったはずだ、今では化け物の指先が、Cを捕まえそうな距離に…

今回は此処で目が覚めた

あの箱を開けてから1ヶ月、私とA、Bは同じ夢を見続けている

そしてCは、あの日以来目を覚まさない。呼吸はしているが、意識が回復しないのだ。

病院のベットで眠るCは、見る度に痩せていった

もう時間は無いのだと何かからの警告を受けている様な、強い焦燥感ばかりが募る

学校に着いて直ぐ、私たちは屋上へ続く階段で落ち合った

人が多く居る教室で話すような内容では無いし、部室はあれ以来開けて貰えずに居たから

私「もう少しで捕まっちゃうよ…今夜だって危ない」

私達は同じ夢を見ていたが、進み方が違った。一番進みが早いのが私、その次にA、そしてBの順番だ

全員がすっかりと目元に馴染んだクマ、毎夜深い眠りにはつけず、体力的にも大分参っていた

このまま、もしかしたら全員がCの様に…そうなると、まず私からの筈だ。背

筋が冷たくなるのと同時に、逃げようは無いのでは無いか、と妙な諦めが心中に宿り初めて居たが、Bだけは違った。

B「明日の朝、学校じゃなくて家に来てくれないか?箱見てくれるって人が見付かった。それでどうにかなるかってのは、分からないんだけれど」

A「本当か…?」

思わずAと顔を見合う

正直、何の手掛かりも無かった私達にはそれはまさに蜘蛛の糸のような、拙いが強い希望に思えたのだ

その日は二人との会議はこれっきり、後は通常通りの授業を受けて、放課後も集まる事なく別れた

そして何時も通り、夜が来る

その日私は眠るつもりは無かった、夢の続きを見るのが恐ろしかったのだ。

私はリビングで電気をつけたまま、ひたすら興味のないテレビを見続けた。

夜は強い方だ、朝まで起き続ける自信はあった、だが、この日は何か違ったのだ。単純に疲れているだけ、とは違う。強烈な眠気に、私は机に顔をうつぶせる形で眠りに落ちてしまったのだ

そして、何時もの夢が始まった

出だしから今回は何か違う、と気付いた。…逃げている筈の、Cの足音が聞こえない

薄暗い部屋の中、シルエットだけで分かる、化け物はそこに居るのに、Cは…目をこらしてはた、と気付いた

Cは老婆の両腕に抱えられるように、既に捕まっていたのだ

目蓋は閉じられていた、まるで安らかに眠ってるよう見えるその顔

或いは死んでいるような…

私はCの状態をもっと詳しく確認しなければ、と足を踏み出す、畳が軋み、部屋に響く。

…此処でもう一つ、重大な異変に気付いた。

あくまでただの夢であったはずの空間に、私自身が投影されていた。

Cをあやすかの様、ゆったりと動いていた化け物の動きが止まる

気付かれた!!

逃げなければ。そう思っても、私は動け無い。恐怖で足が竦んでしまっていた

ズズ…、と化け物が此方を向く

それでも、動けない。気持ちばかり焦る、早く早く

目が合う直前、ようやく私の足は動いてくれた。扉を開く、其処は先程居た部屋と同じ、四方が障子に囲まれた和室、私は正面に見える障子をひたすら開いて逃げた

化け物の動きはそんなには早くなかった筈だ、私は一度振り返ってみた…思っている以上、凄く近い場所にそいつは居た。

ヒャッヒャッヒャッヒャ、あの笑い声がすぐ後ろに聞こえた、ズズ…と引きずるようなあの音も、心なしか早い。

もう追いつかれてしまう、そう思った私の背中をドン、と誰かの手が押した…

目が覚めるのと同時に、突っ伏した机から跳ね起きた

ヒャッヒャッヒャッヒャ、とあの笑い声から耳から離れない

いや、聞こえていた

辺りを見回す、化け物の姿は見えない

テレビは砂嵐で、そんな笑い声が聞こえる要素は無い

ヒャッヒャッヒャッヒャ、

しかし聞こえるんだ、あの笑い声が。息苦しい

ようやく気付いた、この音は私自身の口から聞こえているのだ。

吐き出す空気はもはや、無いに等しく。視界が薄ぼやけてきた、このままCと同じ様に…いや、今私の周りには誰もいない、止めてくれる人が居ない。

死を覚悟し始めたその時だった、喉の奥に異物感があった。

喉の動きに合わせて蠢く何かにうえっ、とえづく。瞬間、呼吸をする事が出来た

喉の奥から異物感は消えなかった、何度もえづいても出てこない

私は喉の奥へと直接指を突っ込んで、どうにか異物を捉えた

思いの外長い、視界に見え始めた瞬間、私は恐怖に目をむいた、黒く長い髪の毛だった

どうにか、髪の毛を全て引っ張り出した。長さにして40センチはあったと思う

私は震える手で、携帯を取った、タイミング良く着信音を聞いた、Bからだった

次回の三章で完結予定、出来るだけ早く投稿しようと思います。

宜しくお願い致します

怖い話投稿:ホラーテラー 動物嫌いさん  

  

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