短編1
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鬼憑き

あれは私がまだ保育園に行っていた時だから、もう20年ぐらいは前になる。

しかし、未だに印象によく残っている話。

節分の日、保育園では大部屋に集まり豆まきの行事をやっていた。

顔に仮面をかぶって鬼に扮した格好の大人達が出てきて、みんなで一斉に豆を投げるというもの。

みんなが楽しそうに投げる中、変わり者だった私は豆を投げもせずに拾っては食べてばかりいたが。

そんなこんなで大騒ぎだったのだが、その空気がいつの間にか荒々しいというか良くない殺伐としたものに変わっていった。

鬼に扮していた大人の一人であるおじさんが、子供をつかまえて顔を思いきり叩いていた。

たくさんの子供が見ている前で、何発も何発も繰り返し叩いている。

それはもう、狂った鬼のようで周りは戦慄をおびていた。

他の大人が止めようとするが、まるで歯が立たず止められない。

だんだんと異常に気づきだした周りの子供達はそれを見てもう怯えきっている。

それが、どれぐらい続いたことか…

近くのお寺の和尚さんが入ってきて、おじさんに向かってお経を読みながら塩をまいていた。

すると、次第におじさんは静まっていき、やがて落ち着きを取り戻した。

後で祖母に聞いた話では、それは恐らく鬼に憑かれていたのだろうとの事だった。

まだ小さいながらも異常な雰囲気を感じて、とても怖かったのを今でもよく覚えている。

怖い話投稿:ホラーテラー geniusさん  

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