短編2
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親父の失敗した手術

(親父…見ててくれ…今日が俺の初舞台だ!)

俺は正直、かなり緊張していた。

マスクの下の俺の顔は間違いなくこわばっているだろう…

ピピッピピッ

(大丈夫…全ては安定している…)

俺は自分に言い聞かせるように言った。

「それでは開始します。落ち着いていきましょう。では……メス」

俺の親父は、それは優秀な外科医だった。

なかでもオペなら、病院一と言われるほどの実力者だった。

だが…

親父はあるオペでミスをおかした…

患者の体内に、メスを一本残したまま縫合してしまったのだ…

幸い、すぐ気が付いた為に患者は無事だったのだが、親父のミスはマスコミにばれた…

マスコミに散々叩かれた病院側は、全ての責任を親父に押し付け、病院を辞めさせたのだ…

それから親父は、家に引きこもり酒浸りになった。

そして、当然のように体を壊し、去年…親父は肝硬変で亡くなった…

(親父…見ていてくれよ…)

メスを握る手に力が入った。

だがその時だった…

ピピッピピッピピピピッピーー…

嫌な空気が漂う…

なんだ…何が違う…

何かが違うのか…

パニック状態に陥った俺の耳に、どこからか声が聞こえてきた…

「大丈夫だ…自分を信じろ!

自分を信じてメスをさばけ!」

親父だ!

親父の声だ…

俺は落ち着きを取り戻した。

そして握りしめていたメスを見つめて、力強く言った。

「これは……これはメスじゃない!

これはオスだ!

こっちはメスか…

おっと、これはオスだな! 危ない危ないと…」

ヒヨコの仕分け作業の仕事を始めて一年。

ようやく一人前になれそうだ!

親父、ありがとう!

怖い話投稿:ホラーテラー ビー玉さん  

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不覚にも笑ってしまいました(>_<)