その日は夕方から雨が降り始め、俺が会社を出る頃には土砂降りになっていた。
家に帰る途中に300段程ある階段があり、帰るにはそこを通るしかないのだが晴れてる日はまだましだが雨の日となると水溜りができ、またすぐ横は山であるため夜は出来れば避けたくなるような道だ。
だがここを通らなければ帰れない。疲れた体を引きずり俺は階段を登り始めた。
100段程登っただろうか。小休止にと俺は立ち止まりタバコに火を付けて何気なく今登ってきた階段を見下ろした。
一番下の段に真っ赤なコートを着た女が立っているのが見えた。顔はこちらが上段にいるためカサで隠れて見えないが、格好で女だと判断した。俺が気になったのはその女は登るでもなし、ほとんど微動だにせず、ただ立っていたからだ。
もしかして他に人もいないから警戒しているのだろうか、、?
一向に動かない女を見ている内にそんな考えが浮かんだ。
それならば納得いくしさっさと登り終わってやろう、俺は吸っていたタバコを捨てまた登り始めた。
50段程登ったところでやはり気になり後ろを振り返った。女もまた何段か登った所でまた立ち止まっている。
、、、、、、?
前を向き直した一瞬目のはしに何か動く物がが映った。
階段を登る。後ろを振りかえる。女もまた何段か登った所で立ち止まっいる。顔は相変わらずカサに隠れて見えない。向き直した時さきほどよりはっきり見えた。
確かめるため今度は気づかれないようにそっと後ろを伺う。
女は髪を振り乱し、ものすごい勢いで階段を駆け上がってきていた。
ぎょっとして思わず振り返った。瞬間女は立ち止まりやはり動こうとしない。
、、怖い、そう思った。登り終わるまでのあと何十段がひどく遠く見えた。
さきほど見たのをまた見てしまうのも怖かったが、前を向き直した瞬間今度は真後ろまで駆け上がってくるのではないか、その想像も怖かった。
俺は濡れるのも構わず一気に階段を駆け上がった。家に着くまで走り続けた。想像ではあの女は髪を振り乱しピッタリ後ろをつけているように思えた。
今思えば何がそんなに怖かったのか分からないがあの時は無償に怖かった。人は納得できて初めて安心する生き物なのだと、そう思う。
怖い話投稿:ホラーテラー タカさん
作者怖話