短編2
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植木鉢

私の遠い親戚であるKさんの話。

一昨年の事。

Kさんは、仕事に通勤するため実家から離れて一人暮らしをする事になった。

通勤に便利でそこそこ安いアパートを見つけ、さっそく引っ越しをした。

それは引っ越しが済んでから数日後の事だった。

荷物や家具の整理も大体終わり、一息ついていた。

ベランダに出て、ふと下を見ていると何か見つけた。

引っ越しの時には気付かなかったが、エアコンの室外機の陰に植木鉢があった。

中身は空っぽ。

だいぶ古そうではあったが、丈夫そうでまだ使えそうだった。

ガーデニングも好きだったKさんは、他にも植木鉢をいくつか合わせて花を育てる事にした。

ベランダに植木鉢を数個並べて育てていると、妙な事に気づく。

同じ時期に植えた花なのに、一つだけ極端に成長速度が違っている。

そう…ベランダにあった、あの植木鉢だった。

他のはまだ小さいつぼみ程度なのに、その植木鉢だけ妙に大きく花を咲かせている。

肥料や土なども同じものを使っているはずだが…

そう考えながら、植木鉢の中の土を浅く手で掘ってみた。

ん……?

妙な手触りがあった。

ぐにゃりとした嫌な感触のものが、土の中に埋まっているようだった。

もちろん、土や肥料の他にそんなものは入れた覚えがない。

手にはかすかに、動物の屍臭のような嫌な臭いが…

思わず植木鉢の中身をぶちまけると、土の中に小動物の残骸のようなものがいくつも紛れていた。

ふと思いついたKさんは、塩を持ってきて振り掛けた。

すると溶けるようにして、残骸は消えていったという。

これは恐らくだが…

その植木鉢は、前の住人が小動物の死骸を埋めるのに使用していたのではないかという。

よく小動物を飼う人が、近くに墓を埋める場所がない時などに取る方法だ。

植木鉢に土を入れ埋めれば、小さい小動物の死骸なら十分に全て土に帰る。

しかし、その動物の念は消える事なく植木鉢にずっと染み付いて残っていたのかもしれない。

怖い話投稿:ホラーテラー geniusさん  

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