双子の兄 匂いと臭い 5

中編3
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双子の兄 匂いと臭い 5

今は大学に通っている兄は言う。

「あの父子、自縛霊というのとは少し違うかもしれないな」

「止まってるんだな、時間が。おそらく、自分の存在という自覚すらない」

??

「即死だからな2人とも。新聞によると運転していた母親も確か亡くなってる筈だ。ほぼ即死で」

「ほぼ即死?」

「そう、厳密に言えば即死じゃない」

???

「おそらく父親と子供は後ろの席で寝てたんだろう、まあ、想像だけどな」

・・・・・・・

「だが、母親は違う・・・突っ込んでくる巨大なダンプを見たんだ。迫ってくるダンプを・・・・目前に!さぞ怖かったろう」

・・・・・・・

「だけど、旦那も子供も気持ちよく寝ててそんな事知りもしない」

・・・・・・・

「母親には自分の死を覚悟した瞬間が確実にあった筈だ。(もう駄目だ!!)という瞬間が・・・・でも、後ろで寝てた2人は・・・・覚悟もないまま、死んだんだ。それこそ、(え?)という間もなく」

・・・・・・・

「彼女はその覚悟のお陰で自縛霊にならずに済んだ。だけど、皮肉な事にそのせいで、一番嘆き苦しまなきゃならなくなる」

???

「自分の死を覚悟の上死んだら、例え不慮の事故でもすぐに霊として生まれかわれるんだ。まあ、最初は生きてる事にかなり戸惑うだろうけど・・・・でも」

(でも?)

「後ろで寝ていた2人、例えて言えば、瞬間冷凍されたようなもんだからな」

(瞬間冷凍??)

「死んではいないが、脳味噌も凍ってるから思考力ゼロなんだな」

・・・・・・・

「あの父子の霊、並んで立ってた、って言ったけど、実は、並んで飛んでたんだ、宙に浮いてたしな。ただ、見た所どこにも怪我をした様子がないんだ。軽がペシャンコになるくらいの大事故だったのに」

「母親の霊は、どこ行ったんだ?旦那と子供がすぐそばにいるのに」

「意識すら無い存在に気付くもんか。母親が可哀想だったのは・・・・一度死んで目覚めた時、そこがまだ、自分の肉体の中だったってことだ」

「こうなると悲惨だ。彼女の霊体、死んだ時のまんまになるからな」

!!!

「お前には言わなかったけど、俺、実は一度見てるんだ。バスの中から、母親の姿・・・・」

「それはいいわ、聞きたくない」

「半狂乱になって今も必死で探しているだろう、主人と子供を。まあ、普通なら永久に見つからないよな、なんせ、探す相手は脳死状態で意識すら無いんだから」

「・・・・で、ファブ○ーズ登場ってわけか(笑)」

「俺、霊体を構成してる成分ってのが、たぶん、断言していいと思うんだけど・・・・本質的に、いい匂いを求めているんじゃないかって思うんだ。ちょうど植物が日光を求めるように」

・・・・・・・

「あの父親の霊、何年もびくともしなかったのに、反応したからな」

(ファブ○ーズにねえ・・・・)

「死んで何年も経つんだ。その間、いろいろな〈におい〉が彼の前を通過した筈なんだ。だけど、冷凍を解かすには至らなかった。止まった秒針を動かす事は出来なかったんだ」

・・・・・・・

「まあ、別にファブ○ーズじゃなくてもいいと思うんだけど、要は爽やかな、いい匂いなら何でもいいんだ。でもなあ・・・」

「俺、たぶんあの父親、地獄に叩き落としちゃったかもしんない。ありゃあ、いくらなんでも撒きすぎだ。消える寸前、狂ったように頭抱え込んでたからな」

(うへー!!!!)

怖い話投稿:ホラーテラー 双子の弟さん  

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