中編6
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荒御魂 1

■シリーズ1 2 3 4

僕が小学生の頃の話です。

僕が肝試しをしたのもこれが最初で最後となりました。

僕は山に囲まれた自然の緑豊かな街で生まれ育ちました。

小学校は山の麓にあり、少し足を運ぶと自然の遊び場が沢山あります。

その中でも僕たちがお気に入りにしていた場所がありました。

裏山の中腹にある自然の木々で出来た天然の秘密基地です。

蔓がドーム状の空間を形作り、直径3メートルくらいの大きさでした。

僕たちはその中にビニールシートや玩具などを運び入れ、本格的な秘密基地として1年間使っていました。

夏休みのある日。

家庭の問題で友達のAが家出をしました。家出先は、僕たちがよく使っていた裏山の秘密基地でした。

家出した日、僕の家をAが訪ねてきました。

ピンポーン

僕「あれ?どうしたの?」

A「あのさ。おれ裏山の秘密基地でしばらく暮らすから、内緒で食べる物もってきてくれない?」

僕「えぇ!マジで!」

こんな調子でAは何人かの友達の家をまわっていきました。

僕たちの中で、そんなAは英雄でした。

家から飛び出し、しばらく秘密基地で暮らすという生活は、そんな事をする勇気がない僕たちにとっては憧れであり、彼が冒険家に見えたのです。

Aが非現実的な行動をする事にワクワクし、色々な良識やその生活の危険性を考えずに、僕を含めた何人かの友達がAの冒険生活に協力しました。

何回も家出をしてきたA。今までは友達の家に泊まり、数日間くらいで両親に捕まっていました。

Aが家出したその日の夜。

友達の僕とBとCは、お菓子や缶詰を親にばれないようこっそりバッグに入れ、Aが待つ秘密基地にいきました。

A「よくきたな!ありがとう!」

満面の笑顔でAが感謝してきました。

少し日が暮れ始め、辺りも暗くなってきたので、さすがのAも心細かったんでしょう。

僕「何日くらい泊まるの?」

A「ずっとだ!」

B「灯りはあるの?」

A「・・・忘れた」

C「夜めっちゃ怖いじゃん!」

A「今日はずっと一緒にいてくれるよな?」

僕・B・C「むりむり!」

それはそのはずです。僕たちはAの応援にきただけであって、親から外泊の許可などもらっていません。

しかしAは、予想外の僕たちの裏切りに腹を立て、わめき散らしました。

A「お前ら怖いんだろ!あの場所が!」

Aが言っている場所。それは山の頂上にある小さな祠でした。

そこは僕たちの間でも有名な怖い場所で、注連縄で中には入れないようになっています。

樹齢の高い木々に囲まれ、どんなに日が昇っていても太陽は木々の葉で遮られ、夜のように薄暗いのです。

その中央には不気味でひときわ大きな樹木があり、樹木の下には苔が生えた小さな石の祠がありました。

小学生だった僕たちはそこを発見しても、恐ろしくなり一目で逃げ出すような雰囲気だったのです。

その場所は、秘密基地から10分くらい裏山を登った所にありました。

僕たちがどんなに「親に怒られるから」と言ってもAは僕たちを帰す気はありませんでした。

A「じゃあ、証拠を見せろよ!」

と僕たちに肝試しを持ちかけてきました。

今思えばAの本音は「こう言えば帰れないだろう」と考えついたもので、肝試しをやりたかった訳では無かったんだと思います。

B「あそこは関係ないよ!家に帰らないと怒られる!」

A「ほら言い訳はじまった!」

僕「親に言ってないからさー」

A「嘘つけ!怖いんだろう!」

C「Aいいかげんにしろや!」

こんな押し問答を30分くらいやっていました。

そしてとうとう僕たちが折れ「肝試しをしたら帰るからな!」という結論を出してしまいました。

Aも真っ青な顔をしていましたが、言いだしっぺなので引き下がれなかったのでしょう。

とうとう僕にとって最初で最後の肝試しが始まってしまいました。

僕たち4人は蔓でドーム状になっている秘密基地を出ました。

僕たちの空間である秘密基地から外に出ると、とたんに夜の山にいるという現実感が恐怖となって僕らを包み込みました。

部屋の中にいるような安心感は消え失せ、昼間の顔しか見たことがなかった裏山は、完全に夜の顔へと変貌していたのです。

さっきまでギリギリ僕たちを照らしていた日は暮れてしまい、月明かりと街の光で少し明るくなった夜空が山の斜面を照らしています。

車のエンジン音や街の喧騒は、森の木々に遮られ、裏山は無音の世界でした。

鳥や虫のなど生き物の鳴き声も聞こえてきません。

自分達が映画やテレビで見た怖い状況に、立たされている事を思い知らされました。

A「な、なんだよ。やっぱり怖いのか?」

恐怖を噛み殺した声でAが僕たちを挑発してきます。

C「べ、別に。怖くないよな?」

僕「う、うん。」

B「・・A震えてない?」

A「ばか!寒いだけだから!」

小学生の意地の張り合いは、怖いという感情を麻痺させ、4人の足を少しずつ山の奥へと導いていきました。

サクサク・・・・

僕たちが落ち葉を踏む足音だけが聞こえます。

「4人もいる」僕たちを夜の山から守っていたものは4人という人数の心強さだけでした。

サクサクサク・・・・

音も光もほとんどない世界で、僕たちの時間の感覚は麻痺していました。

しばらく歩いていると、Cがこっそり耳打ちしてきます。

C「・・・・なぁ」

僕「・・・ん」

C「何分くらい歩いた?」

僕「10分くらいじゃない?」

C「・・・だよね」

僕「・・・あ!」

僕とCは気づいてしまいました。

いくら恐る恐る歩いているとはいえ、こんな小さな山の頂上ならすぐに着くはずです。

しかし、山の頂上はまだまだ見えてきません。

それにはAとBも気づいているようでした。

15分くらい歩いた頃です。

A「・・・ごめん。やっぱ怖い。」

突然Aが立ち止まり、僕たちに謝ってきました。

その一言を誰か言わないか、みんながみんな待っていました。

C「だろ!やめよう!」

B「よかった!帰ろう!」

僕「Aも家に帰ろう!一緒に謝るからさ!」

僕たちは緊張の糸が切れたかのように、その場でワイワイ喋り始めました。

C「もう馬鹿なこと言うなよ?」

A「本当にごめん!」

僕「まじで怖かった!もういいよ!」

B「あそこは本当にやばいって!」

そして4人は来た道を引き返そうとしました。

ザアアアアアアアアアアアアアアアアア

全員「・・・・!」

突然、風がふいて木々の葉がざわめきました。

僕たちは思わず足を止めます。

B「ぁ・・あれ・・」

Bが僕たちが登ってきた道の暗闇を指差しています。

僕たちは無言でその先をみつめていました。

・・サク

・・・サクサク

・・サクサクサクサク!

地面を「何か」が這ってきています。

僕たちが見つめた次の瞬間!

暗闇から地面を這いながらこちらに近づいてくる

白い手が見えました!

「わあああああああああああああ!!」

僕たちは一斉に悲鳴をあげ、反対方向へと走り出します。

子供の直感で「あれから先は見てはならない」と確信していたのです。

A「神様!助けて助けて!」

B「怖いよおおおおおお!」

C「逃げろって!早く!」

僕「わああああああああ!」

ダダダダダダダダダダダダ!

サクサクサクサクサクサクサクサクサクサクサクサクサク!

ダダダダダダダダダダダダダダダダダダ!

サクサクサクサクサクサクサクサク…

・・・僕たちはどれくらいの時間を逃げ回っていたのでしょうか。

追いかけてくる「何か」はずっとついてきました。

僕たちは死に物狂いで走りました。

その「何か」を振り切るために。

…そして「何か」を振り切った時。

…僕たちは来たくなかった「祠」の場所にいたのです。

続きます。

■シリーズ1 2 3 4

怖い話投稿:ホラーテラー 見世永さん  

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