短編2
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ドライブに連れられて

「ドライブへ行かないか?」

ある日の夜、Eさんは彼氏に電話で誘われた。

次の日は休日。

特に断る理由もなかった為、二つ返事でその誘いに乗った。

その後、しばらくして…

家の前から彼氏の車のクラクションが聞こえた。

急いで玄関を出て、彼氏の車へ乗り込んだ。

車が発車してしばらくたった頃。

「今日はどこへ行くの?」

彼氏に行き先を聞く。

「ああ…適当にどこか遠く」

彼氏は素っ気なく答えた。

ふーん…、とEさんは軽く相槌をうち窓の景色を眺めていた。

……車の中は静かだった。

いつもなら必ずラジオなり音楽なり聴くのだが…

「何か聴こうか?」

そうEさんが言っても「いや…」と彼氏は首を振るばかりだった。

会話もいつもと比べると異常に少なく、居心地の悪いような静けさだった。

そうして数十分は走っただろうか。

民家もあまりない、見たことのない田舎の山道の景色だった。

「ねえ、今どの辺りを走って……」

彼氏にそう聞こうとした時だった。

キキーーッ…ドガシャーン!

車が道端の大きな木にもろに突っ込んだ。

強い衝撃で車の正面がぐちゃぐちゃにへし曲がり、フロントガラスがヒビ割れた。

思わず目をギュッと閉じ、悲鳴を上げた。

……………

しばし沈黙の後、恐る恐る目を開けると、車の中に彼氏の姿はなくなっていた。

ドアを開けて外に出てみるが、どこにも彼氏は見当たらなかった。

ポケットの中から携帯を取り出し、彼氏に電話をした。

プルルル…プルルル…

呼び出し音が何回か鳴った後、彼氏が電話に出た。

「人を車に置いて、どこに行ったの!?」

そうEさんが怒鳴ると、彼氏は全く状況が飲み込めないというようにあっけらかんとしている。

彼氏の話では、Eさんを車で迎えに行こうとしたところ、車が駐車場から忽然と消えていたという。

どうしたものかと、Eさんに電話をかけてみても全く繋がらなかったと。

(じゃあ、さっきまで一緒にいたのは一体…?)

言われてみれば、違和感や不自然な点はいくつもあった。

さっきだって、車を出ていくドアの音も全く聞こえなかった。

Eさんは、途端にスゥッと血の気が引いていくのが分かった。

何とかタクシーで家に帰れたものの、それ以来彼氏とドライブに行くことは二度となかったという。

怖い話投稿:ホラーテラー geniusさん  

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