短編2
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背後に憑くもの

私の元同僚Hが高校の頃の話。

それを最初に見たのは、ちょうど夏休みが明けてすぐの日だったか…

同じクラスの男子Aの背中に何か憑いているのが見えたのだという。

それは、ずいぶんと背の小さいお婆さんのようだった。

ニコニコしながら、Aの事を眺めている。

(あれは…あいつの守護霊なのかな)

そう考えながらじっと見つめていると、お婆さんもこちらに気づいた。

ニコニコしながらこちらに小さくおじぎをすると、やがてスゥッと見えなくなった。

それからというもの、そのお婆さんはたまに見えるようになった。

大抵はニコニコしているのだが、テストの結果を返された時には何とも渋い顔をしていた。

それを見た時は、思わず吹き出しそうになってしまったという。

そんなある日の事……

いつものようにAの後ろにお婆さんが。

ただいつもとは少し違っていた。

鬼のような恐ろしい形相でAを睨んでいた。

(うわ……Aの奴、何かしたのかな?)

その時ばかりは、お婆さんになるべく目を向けないようにした。

しかし、少し気になった。

学校が終わると、Aをそっとつけてみる事にした。

帰り道、Aはこそこそと小さな路地裏に入っていく。

段ボールの中に入れた何かを見ている。

しばらく眺めて何かした後、Aはその場を去った。

Aがいなくなった後、段ボールの中を見てみると…

猫だった。

全部で5匹いた。

その全てが、逃げられないように針金で足をグルグルに巻かれていた。

さらに両目には小さな釘が打ち込まれている。

猫はまだかすかに蠢いているようだったが、恐ろしくなりその場を慌てて立ち去った。

次の日の学校。

相変わらずAの後ろのお婆さんは、恐ろしい形相でAを眺めたまま。

そしてしばらくすると、いつものように消えると思うと…

少し違った。

いつもは空中にフッと消えるのが、Aの中にスゥッと入り込むようにして消えていったのだ。

その翌日から、Aは学校を休みだしたという。

そして二度と学校に来ることはなく、学校をやめてしまったのだ。

詳しい話は聞かされなかったが、Aが突然発狂したらしいと近所では噂だった。

Aの近所に住む友人の話では、深夜に一度Aを見かけたのだという。

ズリズリ…ズリズリ…

家の近くを、くねくねと不気味に這いずり回っているAを。

それからAの家は引っ越していったため、どうなったかは分からない。

Aの背後に見たお婆さんとの因果関係は不明だが、今でもあの恐ろしい形相は忘れられないのだとHは話した。

怖い話投稿:ホラーテラー geniusさん  

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