中編6
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荒御魂 完

■シリーズ1 2 3 4

荒御魂3の続きです。

「朝がこない」

言いようの無い不安が僕たちを襲ってきました。

そんな中でBがポツリと喋りました。

B「やっぱりお参りしよう」

「・・・・・・・・」

全員が考え込みました。

C「まずAがいけよ」

A「・・・・は!?」

AとCの間で、再びケンカになりそうな雰囲気が漂いました。

僕とBがすぐに止めに入ります。

C「ここにいるのはAのせいだ!」

僕「やめろって」

B「Aが悪いんじゃないしょ!」

A「・・・・・・・・」

その時です。

A「・・わかったよ」

その様子を見ていたAが、自分からお参りすると言いました。

A「これで俺を許してくれる?」

C「う、うん」

そしてAを先頭に僕たち4人は「祠」に近づいていきました。

充分、近づくと恐る恐る後ろからBがAに聞きます。

B「なんていう神様?」

A「ちょっとまって・・ええと」

A「あら・・ご・・たましい?」

C「むずかしい漢字?」

A「読み方習ってない」

僕「名前なんていいよ。早く済まそう!」

Aが一人で前に立ち、その後ろで僕とBとCが3人並び、同時に手をあわせて頭を下げました。

次の瞬間でした!

A「わあああああああああ」

Aの悲鳴で僕たちは顔をあげ、Aの方を見ました。

!!!!!

B「あああああぁぁぁ!」

C「ひいいいいいい!」

僕「うわあああああ!」

全員が悲鳴をあげました。

「祠」のすぐ後ろにある大きな樹木の幹・・・・・

そこに僕たち4人の顔が浮き出ているのです。

その顔は苦痛に歪み、苦しんでぐにゃぐにゃ動いていました。

そして僕たちの方を見て…

樹木の顔たちが一斉に口を開きます。

「オギャアアアアアアアアアアアアアア」

「わあああああああああああああ!」

それを見た僕たちは泣きながら逃げ出しました。

もう後ろを振り向く余裕もありませんでした。

「まって!たすけて!」

誰かが、助けを求める声が聞こえてきます。

恐怖の限界を超えた僕は、その声を無視してひたすら逃げました。

無我夢中で走りました。

身体の所々を枝や葉っぱで切りながら走りました。

山を抜け、アスファルトの道路に辿り着いた時…

空は明るく、太陽は真上にありました。

僕「助かった!助かった!」

B「うわあああん!」

C「家に帰れるよお!」

僕たちは泣いて喜びました。

あの恐怖から生還できたのです。

B「ねぇ・・・Aは?」

C「・・・あっ!」

僕「さっき助けてって・・」

落ち着きを取り戻した3人はAがいない事に気がつきました。

僕たちは急いで、自分達の親に助けを求めに行きました。

玄関を開けると、母親が泣きながら平手で僕を殴りました。

母親「あんた3日間もどこいってたの!」

僕「3日間!?」

僕たちが行方不明になってから3日過ぎていたようです。

僕は若干パニックになりながらも裏山での出来事を母親に話しました。

母親はすぐにAの家に電話し、僕を車に乗せてA家に向かいました。

A家に到着すると、BとCとその親達もいました。

Aの親は半狂乱でしたが、僕たちの親に諭されて、すぐに助けに行くことになりました。

「場所はわかるな?」

親達に聞かれた僕らは頷き、一緒に山に入っていきます。

親達と僕らは、真っ直ぐ「祠」のある場所に向かっていきました。

昼間の裏山は明るく、鳥の鳴き声が聞こえるいつもの山でした。

20分くらいで頂上付近の「祠」に到着しました。

親達は躊躇することなく注連縄の中に入っていきます。

「お前達もこっちにきて探せ!」

親達は言いましたが、注連縄の外で僕らは首を横に振りました。

「いないぞ!本当にここか?」

親達はAを見つけられない様でした。

僕「・・・あそこにいるよね?」

B「うん・・・」

C「A・・ごめん」

僕たちの目には「祠」の後ろにある樹木の中で、苦しみもがいているAの模様が浮き出ているのが、確かに見えました。

しかし、それを親達に言っても信じて貰えませんでした。

その後、警察や僕たちの両親、学校の先生も協力して一ヶ月間に及び、Aの大規模な捜索が行われましたが、結局Aは見つかりませんでした。

そして生き残った僕たちも、原因不明の体調不良でずっと学校を休んでいました。

最初は僕たちの話を「子供の妄想」と思っていた親達も、次第に弱っていく我が子を見ている内に信じ始めてくれました。

それぞれの両親が集まり、相談した結果「御祓いをうけさせる」という結論になったそうです。

僕たちは車に乗せられ、近所のお寺に集められました。

久しぶりに見るそれぞれの顔に驚いていました。

僕もBもCも、それぞれガリガリにやせ細り、顔が青白かったのです。

両親から説明を受けた住職さんが、僕たちを睨みつけ一喝しました。

「お前達は許されない事をしてしまったんだぞ!」

その言葉で僕たちの中の蓄積されていたものが一気に噴き出し、僕たちは泣いて謝りました。

住職さんが僕たちを本堂に座らせ、お経を唱えています。

重かった身体が少しずつ楽になっていきました。

その後、住職さんと一緒に裏山の「祠」にいきました。

住職さんは祠の前で、線香を焚き、お経をあげました。

樹木の中でもがき苦しんでいたAの顔の模様は、どんどん小さくなり、安らかな顔で固まりました。

その直後です。

ポトポトポト

と上から何かが落ちてきたのを住職さんが拾いました。

「これを見なさい」

そう言って僕たちに見せたものは…

三つの木の実でした。

それは僕とBとCにそっくりでした。

胎児のような格好で丸まっており、ヘソの尾のようなものがあって、そこから切れて落ちてきたようです。

それを見た僕たちは恐怖で泣きました。

住職さんは「もう大丈夫だ」と僕たちを落ち着かせ、再びお寺に戻りました。

夜になり、Aの両親や僕たちの両親がお寺に集められました。

そして住職さんがこの事件の説明を始めました。

その昔、戦乱に巻き込まれてこの地域の住人が、皆殺しにされた事件があった。

大きな国に挟まれていた土地柄とはいえ、酷い虐殺あったのは後に先のもこの一度だけだった。

それは文献に残る程の惨い行いで、「人の業とは思えない」とまで記されていた。

そして虐殺行為をした国は数年後には滅亡した。

その国が侵攻してきた時、当時の住人達はあの山に集まり、信仰していた御神木に助けを乞うていた。

しかし、兵士達はこの山にいた住人達を次々と虐殺し、最後には火を放って焼き討ちにしたという。

もちろんここにいた住民達は、兵士ではなく農民だった。

焼き討ちにされても、燃え盛る山の中で御神木だけは燃えずに無傷で残った。

それに恐れを抱いた敵国の兵士達は、御神木だけは手を出せなかった。

そして再びこの地域に住みついた人々に、御神木は様々な災いを招いたとされ、これを恐れた人々は御神木を「荒御魂」(アラミダマ)として祠を作り祀り上げたところ、災厄は鎮まったという。

昔は神社がこの山と「祠」を管理していたが、100年ほど前に神社が無くなり、このお寺に委任されていた。

「荒御魂」は皆殺しにされた住人達の怨念と呪いが宿っており、その内容は「この地に住み込んだ敵国の者の命を奪い、再びこの世に生を授かる」というものだったらしい。

江戸時代には、この山に迷い込んだ者は帰らぬものとなり、生い茂る樹木の一つとなってしまうという伝説まであったそうだ。

今では違う名前になっているが、昔は「迷い死ぬ恨みの山」という意味の名前がつけられていた。

大人になった僕とBとCは、毎年Aくんの実家に行き、Aくんの仏壇でお線香をあげています。

最初は、絶対に許さないと僕たちを恨んでいたAくんの両親も「今では君達が実の子みたいなものだよ」と僕たちを許してくれいました。

しかし、Aくんへの罪悪感を一生背負っていかなければならない僕たちは、大人になっても2度と肝試しをする事はありません。

長いお話を最後まで読んで頂、本当にありがとうございました。

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怖い話投稿:ホラーテラー 見世永さん  

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