中編3
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モラル

妹が中学生だった頃の話だ。

妹は中学にあがってから急に色気づき、オシャレだの流行りだのとうるさくなった。

ド田舎で必死に時代の最先端を追い求める姿は滑稽ですらあり、都会の情報にくねくねと踊らされる様は哀れでもあった。

日に日に容姿どころか言語までおかしくなり、家族でさえ何を言っているのかもよく分からない。

気付けば茶色いダダになった妹に畏敬の念を抱きながら、まぁヒマなんだろうと放っておいた。

そんな妹がある日、仲間をぞろぞろと引きつれて帰ってきた。

誰が誰だか区別がつかない。

たまたま仕事が休みで家にいた俺は、ちょっとイライラした。

休みかよウッゼェ〜という一言を残し、妹と仲間たちはドカドカと家に上がり込んだ。

居間を占領し、仲間の一人が何やらビデオテープを鞄から取り出す。

するとそのビデオテープに向かって、みんなワーワー騒ぎだした。

「ヤッベェ〜し!マジヤッベェよ!」

俺は彼女らの様子をただじっと眺めていた。

「イっちゃう?イっちゃう?はいイったー!!」

その掛け声を合図に、テープが再生された。

女だらけでAV鑑賞会じゃあるまいな…と若干の不安を抱きつつも、俺はちょっとワクワクしていた。

最初に画面に映し出されたのは、「赤ずきん」というタイトルだった。

陽気な音楽が流れ、文字が消えると同時にどこかの学芸会みたいな場面に変わった。

段ボールに景色を書いただけのものが所狭しと置かれている、幼稚園のお遊戯レベルの舞台。

観客がいるような気配もなく、音楽も止まった。

しばらくそのままの画面が続き、やがて誰かが両端から現れた。

一方は狼のお面をかぶった男性、もう一方はお婆さんのお面をかぶった女性だった。

二人が舞台の中央で寄り添うと、その会話らしき声が聞こえてきた。

赤ずきんちゃん、見ーつけた

見ーつけた

パパね、すごく心配したよ

ママもね、すごく心配したの

早く劇の続きやらなきゃね

今、迎えに行くからね

迎えに行くからね

迎えに行くからね

迎えに行くからね

迎えに行くからね

迎えに行くからね

迎えに行くからね

迎えに行くからね

迎えに行くからね

迎えに行くからね

気が付いた時には、目の前に母がいた。

妹もその仲間の姿もなく、テレビも電源が付いてなかった。

「あれ?えっ?どうしたんだっけ俺?」

「あー起きた?とんだ災難だったねーあんた。」

茫然とする俺に、母は険しい表情で事の真相を説明した。

「あんた達が見たのはね、故人の遺品だよ。〇〇〇のあたりに今も献花がされてる。お菓子とか手紙とかと一緒にね。そこから勝手にテープを持ち出してきたんだよ。置いてあったから気になったなんて、冗談じゃないね。あんなことになったのも自業自得。」

妹とその仲間は、後日丸刈りになって帰ってきた。

お祓いをうけたらしいが、見た目も普通の中学生らしいものに戻され、えらく地味になっていた。

また、遺族へ謝罪にも行ったらしい。

我が家とは全く関わりのないお宅だったが、母が調べて見つけたようだ。

快く聞き入れてもらえたのかどうかは知らないが、謝罪から帰ってきた妹は泣いていた。

落ち着いてから何となく妹に聞いてみたところ、ビデオに映っていた二人と思わしき人はいなかったそうだ。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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