短編2
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誰?

中学生の頃に体験した話です。

当時、不思議と違和感は感じたのですが、怖いとは思いませんでした。

…しかし、最近、その頃の夢をよく見ます。

内容は……

部活動で帰りが遅くなった僕は、すっかり暗くなった河辺りの小道を、自転車のライト頼りに家路を急いでいる。

辺りは静かで、河の水の流れる音しか聞こえない。

自転車のライトが前方から歩いてくる人影を照らし出す。

「え…!?」

あの時も、最近よく見る、夢の中でも違和感を感じる。

冬の日も暮れた人気の無い河辺りの道を、その芸者の女性は1人歩いている。

口元にうっすらと笑みを浮かべ、だが、怖くは無い。むしろ、変にその女性を見ていると、心が落ち着いた…

そして、家に着いた僕は、玄関を開け、家の中へ…

あの時は、母親が台所で夕飯の仕度を、父親は居間で新聞片手に紅茶を飲んでいて、風呂場からは湯船に溜まっていく水の音がしていた…

だけど、最近の夢は違う…

誰も居ない。

静まり返った家の中。

台所には作りかけの夕飯、居間には飲みかけの紅茶、湯が出しっぱなしの風呂場…

総てがおかしい。

家の中を一通り両親を探してまわってみる。

見つからない。

変わりに、あの芸者が僕の部屋にいる。

口元にうっすらと浮かんだ笑みが、今度は気味の悪い雰囲気を漂わせている…

芸者の唇が僅かに動き、何かを呟きながら、僕の方へ滑るようにゆっくり向かってくる。

逃げたいのに何も出来ない。

芸者の白い両腕が、僕の身体を包む。恐ろしく冷たい…

そして、不意に、床が陥没したかの様な感覚が僕を襲い、そこで目が覚める。

目覚ましが鳴った。

そして、

「もう少しなのに…

もう少しなのに…」

部屋の何処からか聞こえるこの声があの芸者の声だと夢から覚めてもはっきり分かっている自分がいる。

最近、寝るのが怖い…

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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