双子の兄 匂いと臭い 9

中編3
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双子の兄 匂いと臭い 9

「列車が目前に迫っても目を閉じず、頭が割れても気を失わなかった悪霊の正体が、これだ」

兄は色褪せた、一枚の写真を俺の前に置いた。

あどけない顔をした少女が微笑んでいた。

「可愛いだろ?小学校の修学旅行で遊園地に行った時撮ったものらしい」

・・・・・・・

「3年後に、この娘列車に飛び込むんだ。ちょうどY(妹の名)と同じ年齢だ。たまんないよ」

「この娘がもしもYだったらと思うとなおさらな」

!!

「Yだったら俺、いじめた奴探し出してぶっ殺すかも知れない」

〈ぶっ殺す〉兄らしくない言葉に思わず頷いてしまう自分に少し恐くなる。

「なら俺は、大悪霊の仲間入りだな」

「天国と地獄なんて、まさに紙一重の差だと思わないか?誰がいつ悪霊になってもおかしくない」

・・・・・・・・

「俺、ずっと気になってて調べたんだ。その娘、30年近く前・・・・」

兄が声を詰まらせる。

俺も胸が一杯になり視界がぼやける。

長い沈黙が続いた。

「その写真、その娘の母親から預かったものだ。もう、見た感じおばあちゃんになってた。いかさま霊媒師じゃないって分ってもらうのに1年近くかかったよ」

・・・・・・・

「俺はその娘を救いたい!何としてでも!!あの年老いた母親の為にもだ!!」

!!

「お前、中学ん時、俺の霊感は凄い!ってみんなに言いふらしたろ?」

「だからそれは、何度も謝っただろ」

「いや、実は、感謝してるんだお前のこと。今はな」

「中学の同級でTっていたろ?」

「親がや○ざって噂の?」

「(笑)実は高2ん時スポットに誘われたんだ」

「へー、で?どこ行ったん?」

「Tの実家の裏山」

「まじ?」

「俺実は、あの踏切の一件以来、そういうとこ行くの止めてたんだ」

「怖くなったんだろ?」

「それもある。悪霊にはファブ○ーズが効かないって分かったしな(笑)」

「当然だろ!俺、病院で兄貴の話聞いた時、別の意味で心配したもんな、兄貴のこと」

「いや、霊がいい匂いに反応するのは確かだ。ただ、やばい霊になればなる程、反応は鈍くなるみたいだけど」

「霊体が曇ればそれだけ、匂いを感じなくなるってことなんだろうな」

・・・・・・・

「だから俺、Tの誘いも当然断るつもりだった。親がや○ざだろうが何だろうが嫌なものは嫌だからな」

「兄貴は確かにそういうとこあるよな」

「だけど、奴の話聞いて興味が湧いたんだ。子供の頃見つけた、山奥の廃神社の事が気になって仕方なかったらしいんだな」

「いかにも何かありそうって感じだな」

「そもそも、祠だけとかなら分かるけど、山奥に神社建ててどうすんの?って思ったわけさ。そんなとこ、一体誰が参るのよって、単純に」

「確かにな」

「まじで、不思議な所だった。天国と地獄がお互い干渉し合わずに、静かに佇んでるって感じで」

??

兄とT、Tの彼女が裏山に入ったのは朝の10時。

兄はその山を仰ぎ見た時から既に、かなりの霊気を感じていたという。

(大勢の人間が殺されている)

すぐにそう思ったらしい。

恨みや苦しみの念が凄まじく山に入るのを一瞬躊躇したそうだ。

奥に進むにつれますます強くなる悪霊の気配。

TもTの彼女もそれを感じたのか、途中で「止めよう」と言いだした。

兄は二人を止めなかった。

(その方がいい)

と思ってむしろ山をおりる事を勧めたという。

「確かに怖かったが、俺ってある一線を越えると〈来るなら来いや!〉って気持ちになるんだな、不思議と」

霊の気配は濃厚になったが、何故か身の危険は感じなかった。

「悪霊といっても、その山、無惨に殺された霊たちの溜まり場なんだ。伝わるのは痛みや苦しみだけで、殺意はあまり感じなかった」

それは突然目の前に姿を現した。

鳥居の跡らしきものとそまつな祠があるだけの廃神社。

腐った土のような臭いが辺りに立ち込めていた。

次で終わりにします。長々とすみませんでした。ここまで読んでくれてる人が一人でもいてくれたら、それで充分です♪

怖い話投稿:ホラーテラー 双子の弟さん  

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