短編2
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悪魔と願い事

俺は今30歳。

結婚して子供も二人いる。

どちらも俺に似ないでとてもかわいい。

仕事は大手の警備会社で社員として働いている。

何も不満のない生活…

何も…

だが…俺は何かが不満だった。

このぬるま湯のような平凡な暮らしに自分の魂を感じられないのだ…

俺は夜勤の仕事中に、ひとり呟いた。

「あーあ…悪魔が願いを叶えてくれないかな―」

すると、暗闇の影から男が現れた。

見るからにいかつい男だ。

男は俺に向かって低い声で言った。

「俺様は悪魔だ。

お前の魂と引き換えに願いを3つ叶えてやろう…」

俺は驚き声が出なかった…

驚く俺に悪魔がせかす。

「早く言わないと消えちゃうよ!」

俺は咄嗟に願い事を言った。

「じゃあ…えーと…

世界一の美人を俺のものにしたい!」

かくして俺は世界一の美女を手に入れた。

非の打ち所がない美人。

何をしても美しい女に俺は満足だった。

だが半年もたたない内に俺は不満を感じた。

悪魔の力で手に入れた女に愛を感じないのだ…

俺は悪魔に2つ目の願い事を言った。

「今度は金だ!

俺を世界一の金持ちにしてくれ!」

かくして俺は世界一の金持ちになった。

この世の中、金があれば何でも出来る。

全ての人が俺にへりくだり、頭を下げ、敬った。

欲しい物を手に入れ、行きたい場所へ行き、俺はこの生活に満足だった。

だが一年も過ぎると、何も楽しくなくなってしまった。

みんなは、俺に頭を下げているのではなく、俺の金に下げているのだ。

金・金・金…

そこには愛の欠片も感じられなかった…

俺は昔の妻の顔と子供の顔を思い出した。

あの頃は良かった…

平々凡々とした暮らしだったが、確かに愛はあった。

妻に会いたい…

子供に会いたい…

俺は悪魔に最後の願い事を言った。

「俺を…俺をあの頃に戻してくれ、平凡な会社員だったあの頃に…妻と子供のいたあの頃にだ!」

気が付くと俺は、夜勤の警備室の中にいた。

自分の机にもたれかかり寝ていたようだ…

何も変わらない日常がそこにあった。

まあ…でもこれでいいんだ。

平凡な暮らしが俺には一番似合ってる。

何も求めず、何も欲しがらず、ただ家族の事を思えばいい。

俺はアクビをしながら呟いた。

「あーあ、魂が無くなっちゃった。」

怖い話投稿:ホラーテラー ビー玉さん  

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