中編3
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封じられた力

『死んでも読みたい』を投稿した者です。

今回は弟の事を書きたいと思います。

俺は人より霊感が強く、今までいろんな霊を見てきたが…弟はさらに霊感が強かった。

例えば 霊感を10点満点で表すとすると、俺が5点弟が9点くらいな感じだろうか。

俺がぼんやりとしか見えない霊でも、弟は会話するくらいだった。

これは、俺が小学4年 弟が小学1年の時の話しだ。

弟の竜には、小さい頃から…いや、生まれた時から常に周りには霊がいた。

だから霊がいる事は、竜には普通の事だったのだ。

俺も幼い頃は

「あそこにいる人、なんで血だらけなの?」

「家の中に知らない人がいるよ。」

などと両親に言っては、困らせた事があった。

しかし、見えない人は何を言っても信じない。

ただ、気味悪く思われるだけだ。

それを早くから知った俺は、何を見ても誰にも言わなくなった。

例え、弟と一緒に見た場合でも……。

ある時から、弟が夜中に泣き出すようになった。

母親が抱きしめても、父親がなだめても、空が明るくなるまで泣きつづけた。

俺はその原因を知っていた。その頃、弟にしつこく付き纏っていた霊のせいだ。

そいつは女の霊で、何故か執拗に弟を付け狙っていた。

俺がいると少し離れているのだが、弟が一人でいるとすかさず近寄ってくるのだ。

四つん這いになり 弟の周りをグルグル回る。ニヤニヤしながら弟を上目づかいで見ていたあの顔!

今思い出しても鳥肌が立つ。

しかも奴は、グルグルまわりながらたまに弟の腹や背中を 引っ掻くのだ。

弟は痛くて怖くて、夜中に泣きつづける…。

不思議な事に、痛いと訴える弟の背中や腹の傷は、両親には見えない。

あんなにはっきりと 傷痕がついているというのに!

俺は弟と一緒に寝たいと言った。しかし両親は、夜中に弟が泣くから 俺が眠れなくなるから駄目だと言う。

俺は、一人で寝るのが怖いとしつこく食い下がったが お兄ちゃんなのだから我慢しろと言われてしまった。

それじゃあダメなんだ!

俺が一緒にいなくちゃ…!

でも俺は霊の事を言えなかった。

親に、変な子供だとは思われたくなかった…。

そのうち、弟を親戚の家に一週間程預けようかという話しが持ち上がった。

怖い女の人がいる…。そう言って泣く弟を、両親は心が不安定なせいかもしれないと思ったらしい。

親戚の家には弟が大好きな犬もいるし、自然に囲まれ、気分転換にはこれ以上ないくらいの環境だった。

なにより 子供がいない叔父さん達は、とても優しい人達だった。

確かにただの心の問題なら、それは良案だったかもしれない。

だけど、絶対それはダメだと 俺は確信していた。

あいつは確実に 弟を追っていく。もしかしたら竜は…死んでしまうかもしれない!

俺は両親に訴えた。弟の言っている事は本当で、その女の人を自分も見たと。 このままでは、竜は殺されると。

しかし両親は、弟を預けるのが嫌で 俺が竜の話しに合わせていると思ったらしい。

そりゃそうだ…。

今まで、竜が言った事を親に聞かれた時 俺は知らないと言い張ってきたのだから。

一体どうしたらいいんだよ…!

まだ幼い俺には、何も手立てがなかった。

三日後には、弟は親戚の家に行ってしまう…。

学校からの帰り道、弟と手を繋ぎながら 途方にくれた俺は泣き出してしまった。

弟も、そんな俺を見て泣いてしまう。

俺が手を強く握ると、竜も強く握り返してくる。

嫌だ!この手を、竜を、無くしたくない!

俺は竜に抱きつき、大声を出して泣いた。

その時だった。

俺達に、運命を変える出来事が起こったのは…。

怖い話投稿:ホラーテラー 雀さん  

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