中編3
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続 封じられた力

先程はすみませんでした。とにかく、話しは最後まで書こうと思います。

これで最後なので、もう少しだけ 俺の話しに付き合ってもらえたら嬉しいです。

俺達が抱き合って泣いていると、どこからかしゃがれた声で

「何を泣いてるんかぁ?男っこが。

あんまり泣くと、トンビにさらわれるぞ〜。いいんかい?」

と聞こえてきた。

え…?と、俺達が顔を上げると、近くの石にお爺さんが 背中を向けて座っていた。

服はボロボロで、髪はぽやっとしか生えていなかった。

人がいたなんて、全然気づかなかった…。

俺達は泣いていた事も忘れて、お爺さんを見つめていた。

「あのなぁ、あんまり泣くと 皆が悲しくなるでなぁ?」

そう言いながら、お爺さんが不意に俺達の方に向き直った。

次の瞬間、俺達はがたがたと震え、弟は「に、兄ちゃん!兄ちゃん!!」と、痛いくらいにしがみついてきた。

俺も上手く呼吸が出来ないくらい パニクっていた。

霊的に怖かったんじゃない…。

お爺さんの、あまりに異様な風貌に恐怖したのだった。

単眼と言うのだろうか?

お爺さんは、眉間の辺りに大きな目が 一つしかなかった。

「そんなに怖がらんでええよぅ。

誰も取って食うわけじゃないでな?

泣いてるより、笑っている方が楽しかろ。」

そう言ってお爺さんは、ニッコリと笑った。

俺達は何故か、その笑顔を見た時 気味悪いとは思わず、ホッとした。

そしてまた、泣けてきてしまった。

お爺さんは、こっちにおいでと手招きし、おずおずと近寄った俺達の頭を、体に似合わない大きな手でわしわしと撫でて

「……可哀相にの。大きすぎる力は 不幸を呼ぶ。」

と言った。そして、

「お前さんは大丈夫じゃな。問題はこっちだのぅ。

見る事も、聞く事も、感じる事もできぬ者には 悪さもできんもんじゃよぅ。」

そう言うと、弟の眉間をコツンと指でつっついたのだ。キョトンとしている竜を見て、お爺さんはうんうん、と頷くと 立ち上がり チリンチリンと鈴の音をさせながら 立ち去って行った。

その夜、竜は泣かなかった。次の晩も、その次の晩も、竜が泣く事はなかった。

母が、竜も泣かなくなったし 久しぶりに皆で寝ようか?と言ってきた。

だからその日は両親の寝室で、俺 父 竜 母の順で 並んで寝る事になった。

夜中にフーフーと獣のような声?に起こされ目を覚ますと、女が竜に馬乗りになり 狂ったように引っ掻いていた。

驚いて竜を見ると、何事もないように すやすやと眠っている。

俺はそれを見てたら、なんだかおかしくて笑いが込み上げてきてしまった。

あいつはもう、弟に手は出せないんだ!

それどころか 存在さえ気づいてもらえないんだ。

俺に気づいた女は、悔しそうに歯を剥き出し ギチギチと歯ぎしりした。

しかしじきに 消えていなくなってしまった。

それから二度と、女が現れる事はなかった。

あのお爺さんに会ってから弟は、霊感が9点どころかマイナスになってしまったようで、全く感じる事はなくなってしまった。

普通の人でもここは…と敬遠するような場所でも、全然平気なのだ。

見る事も、聞く事も、感じる事もできない人には悪さができない…。

これは本当だった。

不思議な事に、竜はあのお爺さんの事も 今は覚えていない。

あのお爺さんは 何者だったのだろうか?

俺は今だに、その正体をわからないでいる。

怖い話投稿:ホラーテラー 雀さん  

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