長編8
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とあるカラオケ屋で

皆さんの温かいアンコールを受けて、勝手に調子に乗りつつ再度投稿します。

私自身【何かの存在】に襲われたり、いたずらされたりがないので、「怖い話」の投稿にはそぐわないかもしれないけれど、大目に見てください。

時間軸が前後してしまうのですが、これも最近の話です。

私が深夜に働いていて、昼間はパチンコ屋に入り浸りだった・・・という話は前回書きました。

実は深夜勤というのは、カラオケ屋の店員だったんですね。

そこは大手の大型店舗ではなく、田舎道にひっそり立っている、一見個人経営的な店舗です(実はチェーン店なんですが)。

あまり詳しく書くと、どこだか特定出来てしまうので書きませんが、前回コメントくださった方の予想は非常に惜しかったです。

・・・で、そこは2階に数部屋と受付、トイレがあり、地下におりるようにして階段を下ると1階、ここには数部屋と狭いトイレがあります。

外光が入らないせいか1階部分暗く、ジメジメしていました。

隠すように大量のゴキブリホイホイが設置されていたくらいですから・・・。

・・・で、ここでの不思議体験。

まずお客さんがいろいろ連れてきちゃうんですね。

受付の決まりで、

「いらっしゃいませ、○名様でよろしいですか?会員証をお持ちですか?」

という接客マニュアルがあるんですが、

何といっても連れてきちゃってるもんですから人数を間違えちゃうんですよ。

「4名様でよろしいですか」

「えっ?」

「ご利用人数ですが・・・」

「えっ?3人ですけど・・・」

みたいなやり取りはしょっちゅう。

それが私だけじゃなくて、一緒にいるバイト君たちもやっちゃうんですよね。

前述にもあるように、私は何かによって嫌な思いをしたことが無いのですが、この店だけは例外。

入社当初から気持ち悪い空気を感じてました。

まず、勝手に閉まる扉。

部屋に向かって押すようになっている扉ですが、窓は封鎖されているため風が入ることも無い。

カラオケ屋なので防音の点から重い扉が使われてるんですよね。

それなのに人がいない状態でガチャンと閉まる。

しかもその部屋は、奥にモニター(テレビ)があるんですが、モニター台の足元にいつも花がたむけてあるように見える。

「あの花なんですか?」というお客様からの質問多数。

「えっ?無いですよ?」と言うと、

「あっ、本当だ。気のせいでした」というやりとり。

内心ヒヤヒヤ。

以前、女性二人のお客様を案内したときには、入った瞬間「ギャーーーーッ」と言って飛び出してきた。

「どうしたの?」と聞くと、

「あの部屋は入れません」との事。

見える人には強く見えてしまうらしい。

入口すぐ右手に男性が立っていたとか。

使っていない部屋は電気を消しており、お客さんが入室後自分で点けるシステムなので、さぞや怖かったと思う。

平日の深夜はお客さんも少ないため、スタッフも1人か2人しかシフトインしていない。

そんな体験を繰り返していたら、深夜のシフトに入りたがるスタッフなんて誰もいないよね。

必然的に平日深夜は私の一人シフトが増えてきました。

客数も少ないのでキツクは無かったんだけど、一人きりの雰囲気がチョット・・・。

どこの店舗も似たようなもので田舎道にある店は1人シフト、駅前にある店は2~3人シフトでまわしていた。

だから防犯システムは結構シッカリ備えられていたんです。

玄関チャイムもその一つ。

受付前に人が立つと「ピンポ~ン」と音が鳴るようになってる。

少人数でシフトインしてしてても別フロアの掃除とかに行けちゃうわけ。

鳴ったら階段を駆け上がれというシステムね。

そのシステムを利用してお客様がいない時なんかは事務所で書類整理なんかをしてるんだけど、そんな時に限って鳴っちゃうんだよね。

「ピンポ~ン」って。

廊下を走って受付に行っても誰もいない。

しばらくすると、また鳴るの。

「ピンポ~ン」

また走る。

誰もいない・・・。

さすがに3回目に鳴ったときには、私も頭を使ったわ。

防犯カメラで受付チェックをすることにした。

防犯の為に、

受付内側からお客様に向かって1台、

受付外から従業員に向かって1台、

入口のガラス扉に向かって1台、

その他、駐車場、1階・2階の通路、金庫、キッチンなどに設置されていて、それは事務所のモニターを切り替えて見ることが出来るの。

もちろん同時に録画もされていて、過去1ヶ月半のデータはとってある。

で、3回目のピンポ~ンが鳴ったときにカメラを見たわけ。

受付内側からお客様の顔をチェック!と思ったらいない。

「フンフン、そう来たか・・・」

カメラ位置を変更し、外側からの画像をチェック。

やっぱりいないね・・・。

画像を4分割にして入り口も見たところ、扉がスッと閉まるところだった。

重いガラスの扉、男性でも体をぶつけて開けることが多いのに・・・。

そのまま4分割の画像にしてまた事務作業を続けてた。

またピンポ~ン・・・

パッと見た、やっぱり居ない・・・

でも違和感

受付内部に設置してあるお客様撮影用の画像が乱れてる。

「あれ?」と思っていたら、

受付側を映す画像の下から毛の束がス~ッと上がってきた。

さすがにビビッたよ。

だって店の中に一人だったし、受付通らないと外に出られないし(泣)

不思議なものはたくさん見てきたけど、ゾッとしたのは初めて。

ちょっとヤバイでしょ、と思って車で15分ほど先にある別店舗の店長に電話。

「今そっちの店バイトいる?じゃあ留守番させてうちの店に来てよ!!!!」

説明するのも嫌で、とにかく事務所の扉を閉め、これでもいいかと【蚊取線香】をたいてみた。

深夜で道が空いてたこともあり、原チャリ飛ばして10分ほどで駆けつけてくれた男店長。

事情を話し、録画していたカメラを見てもらった。

「これヤバイね」

「うん、ヤバイよね」

「俺もここから出られないよ、何てもん見せんるんだよ・・・」

そんなやり取りをしつつ、外が明るくなるのを待った。

2階にある事務所の窓から光が差し込み、店の前が賑やかになり始めた頃私たちは店を出た。

深夜から今まで約4時間、他の来客がまったく無かったのも恐ろしい話。

「大丈夫か?この店??」と男店長が言っていたが、実は私にも「潰れるんじゃないか?」という危機感はあった。

あの時、扉を閉めれば何とかなるなんてただの思い込みだろうし、ましてや蚊取線香で何とかなるもんでもないよな、と今になったら分かるんだけど、とにかくその時は大パニックになっていた。

結局、画像はCDRに焼き会社に提出。

一度お祓いをしてもらうということになった。

その日から深夜の一人シフトはやらないようにした。

さすがに怖かった。

後日開店時間を遅らせて、午前中にお祓いに来ていただいた。

結構有名な方を手配してくれたようで、お弟子さんみたいな人を数人ひきつれており、ちょっと大袈裟かなっていうくらいキチンとした儀式になっていた。

その人(師匠)曰く、倉庫の中に大切なものが入っていると言う。

店には2ケ所倉庫があり、一つは使わなくなった機材などを入れていた。

もう一つは手をつけられない部分に垂れ幕をかけて目隠しし、半分のスペースに書類を保管していた。

その目隠しを外して探索したところ、ゴミの山の下から壊れた神棚が出てきた。

取り出そうとしたとき、その師匠が「触るな」と言った。

女性は触っちゃいけないらしい・・・。

師匠が取り出してくれ、持って帰ってくれた。

全てのお祓いが終わって、お茶を出しつつ話を聞かせてもらった。

ビデオに写っていたものは何だったのか、ついでに蚊取線香の効能なども。

すると笑ってこう言われた。

「本来、この土地や建物を守ってもらうために置いていたであろうものを、粗末にしていた。

それじゃあこの土地で商売をしても失敗を繰り返すし、事故が起こって仕方ない。

守ってくれるものが無ければいろんなものが寄ってきますよ。

特にこの場所のような緑に囲まれた所は、悪意のあるものにとって住みやすいんです。

蚊取線香に効き目があるのは虫だけですよ。霊には効き目は無いけど、今回は貴女の後ろにいる動物たちが守ってくれたんですよ」

「へ?動物?」

「確認できるだけで、貴女の肩に大きな黄色い鳥、足元に2匹の犬、白い和猫、腕に蛇、そして貴女の背丈と同じくらいの足を持つ馬がいます」

【私ゃ、ラオウか!?】と内心突っ込みながら、

「でも動物って良くないって言いませんか?」と聞き返した。

「本来、獣憑は良くないです。でも貴女は非常に助けられていますよ。守られているし守っています。その証拠に分かりますかねぇ」と言い。カメラの画像を指した。

毛の束がユックリ通路を進み、事務所の扉の前で立ち往生(?)しているとの事。

でもその画像は私には見ることが出来なかった。

弟子さん2人も師匠の言葉に頷いていた。

「はぁ・・・(何も見えないけど)」とだけ答えた。

予定の合う店長たちは全員参加のお祓い。

全行程を終了し解散した。

その後も、この店ではまだ小さな現象が起きているらしい。

その原因は分かりません。

私は転職しちゃったし、当時一緒にいた店長たちにはこの件に関して噂をしないように会社から指示が出た。

風評被害が一番怖いから・・・というのが理由らしい。

今も残っているスタッフからは「ヘルプ」のメールが入るけど、「でしゃばった事は出来ない」とピシャリ。

私はただ見えるだけの人。

何かをしたり、成仏させたり、そんな芸当は持っていない。

お米さんの件で母に打ち明けたときに、この話しもしてみた。

案の定、妹から・・・

「ラオウかっ」という鋭いツッコミを受けた。

黒王号(馬)を従えたラオウの姿が、私のそれと重なったらしい。

人の背丈と同じ長さの足って・・・。

今回の件で思ったが、私は私自身に関する不思議なものは見えないらしい。

鏡を見たからといって何かが写っているわけでもない。

でも今回の一件を機にで、たまぁ~に耳に吐息だけを感じることがある。

あれは黒王号なんだろうか・・・。

今もあるこのカラオケ屋。

ある部屋のエアコンの送風口からいつも両目が光ってた。

あれはその後解決したのだろうか・・・。

さすがに怖かった思いは拭えず、辞めた後も遊びに行くことさえ出来ません。

この話も脚色無しの実話です。

怖い話投稿:ホラーテラー まるさん  

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