中編7
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世捨て村 2

世捨て村 1の続きです。

森の奥へと消えていった「小さな女の子」を追いかけて、Aが森の中に走って行く。

そして俺はAの背中を必死に追いかけていた。

俺「おい!A!待てって!」

Aは俺に声に反応しない。

それどころか、さっきはAの身体に触れなかった。

あまりに常軌を逸した状況だったが、俺の中で「Aを見失ってはいけない」それだけを確信していた。

山の中、ガサガサと草木を掻き分けて30分ほどAを追いかけた。

その頃、もうほとんど太陽は沈み、森の中は薄暗くなっていた。

そして俺の息も切れ始めた時、Aが立ち止まった。

俺「おい!A!」

A「・・・?」

そこで初めてAが俺の声に反応した。

A「・・誰だ!」

どうやらAは俺の声が微かに聞こえているようだった。

しかし俺の声の内容までは聞き取れていない。

同じ場所にいるはずなのに、俺とAのいる空間がズレているみたいだった。

Aが俺を無視して、再びゆっくりと歩き出した。俺はAの後についていく。

少し進んだ所で、ひらけた場所に出た。

そこは奇妙な村だった。テレビのセットの様な昭和の時代の建物が数棟。

そして時代遅れの服を着た村人達は電気を使わない生活をしているようだった。

Aがその中の一つの納屋に入っていく。

俺はその後をついていく。

村人達は忙しそうに、自分達の家に戻っていくが、俺やAが見えないようだった。

納屋の中に入ると、ロウソクの明かりが灯っていた。

そこには、さっき森の奥へ消えていった「小さな女の子」がいた。

その子には、俺とAの姿が見えていたようだった。

なぜか酷く怯えている。

俺「俺達が見えるの?」

俺はAの前に出て、その子に近づき聞いた。

その子は怯えた表情で俺を見ている。

俺「恐がらなくていいよ、俺達迷っちゃって・・・・」

そう言いかけた時、その子が「何」に怯えているか気づいた。

焦点が俺を突き抜けて、後ろを見ている。

俺が振り向くと

Aが片手斧を持って、そこに立っていた。

俺「お、おまえ何してんだ!」

次の瞬間、Aは俺の体を通り抜け、その子の頭に斧を振り下ろした。

女の子の悲鳴が納屋の中で響き渡った。

斧は無常にも女の子の頭に突き刺さり、顔の半分まで一気に切り裂いた。

そして鮮血がそこら中に飛び散る。Aは返り血を浴びて真っ赤に染まっていた。

俺の体を飛び散った血が突き抜け床に落ちる。

俺だけがこの中で存在しないように・・・・・

俺は悲鳴をあげながら、腰が抜けてその場に座り込んだ。

すると悲鳴を聞いて納屋に駆けつけた数人の村人達が、この凄惨な光景に絶叫した。

Aは女の子の頭から斧を抜き取り、納屋の扉を開けた村人達に次々と襲い掛かる。

俺は納屋の中から動けなかった。

外からは次々と悲鳴が聞こえてくる。

Aが他の村人達の家を襲っているようだった。

あまりの狂気と異常さに頭がグワングワンと回り始め、俺は納屋の中で吐いた。

一時間くらい経った頃だろうか。

静寂が辺りを包み込み

Aが再び納屋に戻ってきた。

返り血で、全身が真っ赤に染まったAはまるで別人のようだった。

俺は恐ろしさのあまり、声を出すことができない。

やはり俺が見えないようで、Aは「小さな女の子」の死体を担いで外に出ていった。

俺は何故か「この後を見なくてはならない」そう思った。

恐怖で腰が抜けて、上手く歩けなっかたので、這いずりながらAを追いかけた。

納屋の外に出た時、俺はその光景を見た。

殺された村人立ちの死体が、山の様に積まれていた。

そしてその横にある井戸の中に、Aが死体を一つずつ放り込んでいる。

全ての村人達を井戸に放り込んだAは、今度は大き目の石を上から落としていった。

石で埋めることによって、村人達の死体ごと井戸を塞ぎ、封印していたんだ。

俺「なんてことを・・・」

俺が不意にそんな言葉を口にした時、Aがこちらに気づいて近づいてきた。

A「あぁ、ひとり忘れていた」

Aが俺に斧を振り下ろし、鈍い「ゴキッ」という音と共に目の前が真っ赤に染まった。

・・・・・・・・・

A「おい!起きろよ!」

目が覚めると、俺は車の運転席に座っていた。

もちろん、頭は割れていない。

助手席に座っていたAが心配そうに声をかけている。

Aの話によると、Aを置いて一周した時、しばらく俺が戻ってこないのを心配したAが少し歩くと、俺は車を停めて寝ていたらしい。

声をかけたり、叩いたりしても俺が起きなかったので、仕方なくAは助手席で待っていたそうだ。

辺りはすっかり朝になり、寝ていないAは目の下にクマを作りながら俺に話してくれた。

俺「ごめん。恐い夢を見てた」

A「こんな状況でよく寝れるな。とりあえず前を見てみろよ」

そう言われたので、俺は明るくなった道の先を見た。

すると「緩やかな右カーブ」が続いていたはずの山道が、「緩やかな左カーブ」になっていた。

期待しながら車を走らせると、15分ほどで山道を抜けた。そこには文明的なアスファルトで舗装された道路があった。

クタクタに疲れ果てながら、俺とAはお爺さんの家になんとか辿り着けた。

Aは寝ていなかった為、すぐに寝室に案内して寝かせてった。

俺はお爺さんの顔を見て心底安心し、ここに来るまでの出来事を話した。

その話を聞いたお爺さんは、深刻そうな表情で俺に聞いてきた。

お爺さん「Aくんの苗字はなんていうんだ?」

俺「Aの苗字?〇〇だけど」

Aの苗字を聞いたお爺さんは相当、動揺していた。

そしてAが寝ているか、寝室を確認しに行った後で、こんな話をしてくれた。

お爺さん「お前達が通ってきた道の途中でな。昔、世捨て村ってのがあったんだ。お爺さんがまだ子どもの頃まではあった。そこは文明的な生活を捨て、自給自足で生活していた世捨て人と呼ばれた人達の村だったんだ。戦時中はそりゃお世話になったもんだ。なんせ、あの村に行って農作業を手伝えば、僅かながらも食料を貰えたからな。ただな、ある日を境にあの村の人間は神隠しにあった。突然、村の人間が消えたんだ。村の家も全部焼き払われてな。そしてAくんの苗字はその当時、お爺さんが良くして貰った村のお兄さんと同じ苗字なんだ。信じたくはないがね」

俺「Aのご先祖がやったっていうの?」

お爺さん「わからない。お爺さんも何十年もそこに行ってないんだ。これから確かめに行こうと思うが、一緒に来るかい?」

俺「うん。夢だと思いたい」

寝ているAをお爺さんの家に置いたまま、俺はお爺さんの車に乗って、再び同じ道にやってきた。

お爺さんが「ここから歩くぞ」といった場所で車を停めて、助手席から降りた。

「こっち」

!!!

俺がその声に振り向くと、「頭を割られ、血だらけになった小さな女の子」が村の方向を指差している。

昼間だった為、さほど恐怖心が無かった。

ゴシゴシと目をこすると、その子は消えていた。

お爺さん「どうした?」

俺「い、いや。なんでもない」

お爺さんと一緒に森の中へと入っていく、昨日の夜にAを追いかけた光景がフラッシュバックしていた。

一時間くらい歩いただろうか。ついに目的の「世捨て村」に到着した。

お爺さん「ここだ。確かに夢で見た場所か?」

俺「・・・え?」

そこは村だった頃の面影はほとんど無い、荒れた空き地だった。草や木が生い茂り、木造の建物は完全に消え去っている。

お爺さん「違ったか?」

俺「う、うん。違うとおも・・・」

そう言いかけた時、突然、俺は金縛りにあっていた。

ついさっきまで居なかった。

今、俺の目線のすぐ下に「血だらけの女の子」がいる!

その距離は50センチもなかったと思う。

恐ろしさのあまりに声が出ない。間違っても視線を下にやり、直視などはできない。俺は固まっていた。

「こっち」

「血だらけの女の子」は指差して左側を示していた。

俺の意思とは無関係に首が動く。

その先には、地面の上に大き目の石が無造作に積み上げられた場所あった。

そして目の前にいた「血だらけの女の子」は、いつの間にかその横で、大きめの石が積み上げられた場所を指差している。

「ここ」

井戸を囲っていた木の柵は、時の流れで風化していた。

地面に開いた穴を埋めるように、石が積み重なっている。

俺はそこから禍々しい怨念が立ち昇っているように感じた。恐怖が身体を支配したんだと思う、気がつけば走っていた。お爺さんも俺の後を追いかけてきた。

お爺さんの車に乗り込んだとき、俺は半狂乱で「だして!だして!」と言っていたそうだ。実際、逃げる時の記憶はほとんど無かった。

お爺さんの家に着いた時、俺は落ち着きを取り戻していた。

Aはまだ寝ている。

俺は数時間、お爺さんと話し合った。

結論としてAの為に、この話を封印する事にした。警察に話したところで、何十年も前の事件。そして俺の「夢」や「幽霊」の話をしても信じてもらえるわけが無い。

万が一、警察が動きAの先祖が犯人だったら、そのニュースが流れてAの一族はいたずらに「殺人者の子孫」として世間に晒される。

そして何よりも、

あの井戸を掘り起こした時「何が起きるかわからない」からだ。

数日後、お爺さんは知り合いの住職さんに頼み込み、内密で「井戸」の前でお経をあげてもらい、一応の供養をして貰ったらしい。

あれから数年の月日が流れた。

しかし

山の方を見ると

遥か遠くを指差している

「血だらけの女の子」が見える。

…………こっち

長文失礼しました。最後までお付き合いありがとうございます。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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