長編9
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彫師④

彫師③の続きです 首をきつく締め上げられながらも私は必死で抵抗はしました。

蹴り上げ、殴る……しかし私を締め付けるwさんの力は弱まらず時間にして僅か数十秒程度の事でしたがとても長く死を予感するに至れる程でした。 遠退きかけた意識の中で私は後ろポケットに忍ばせていた“モノ”を無意識に手に握り締めてました。

ヒュン

ゴッ!

私は出掛けに準備していたバールで力まかせに真一文字に振り抜きました。wさんの横顔に激しくヒットしそのまま勢いに任せてwさんのどてっ腹を蹴り抜きました。

私を締め上げてたコードからwさんの手は離れ約Ⅰメートル程うしろに吹き飛びました。

ガシャーン

激しくスチールラックにwさんの体は突っ込みました。私は涙ぐみ「ゼーゼー、ゲボゲボ」嗚咽混じりに精一杯の呼吸をしつつ手の中にあるバールをより一層強く握りました。

キッ!とwさんを見据えるとwさんは膝を抱え小刻みに震えながらうずくまっておりました……

私は距離をとりながらwさんに何度も声をかけましたが、wさんは一切言葉を発する事は無く震えて背中を向けたままでした。

私「……wさんオレいったん帰るわな………」

私「仕事もあるし……週末また来るから…そん時は全部きかせてや……」 そう告げて私はwさんの部屋を後にしました。玄関をでて車に乗り込むまでバールは固く握りしめていました……

帰路についてる私は恐怖と悲しみに包まれながらどうしたらいいのか悩んでいました……取り敢えず週末にOにもついて来てもらいもう一度行こうとだけぼんやり考えていました。……

しかし週末を待たずに再会する事になりました 二日後電話がなりました。見知らぬ番号でした。

「もしもしwの父ですが…」

私「え……?」

w父「R君のでしょうか?」

私「はい……そうですけど…?」

w父「wな…死んだんや…」

私「ハ?うそ……」

w父「ホンマや!ウソでこんな事いうかいな!!」

私「なんでなんですか!?」

w父「マンションから飛びおってな…最後までアホなやっちゃで…」

w父「明日お通夜やねんけど自分の事はよー聞いてたから都合あえば来たってほしいんや…」

私「わかりました…行きます…」

次の日休みを取りwさんの実家に向かいました。正直なところ頭の中ではまだ何が起こったか理解しきれてません。茫然としながらも必死で整理しながら向かいました……

wさんの実家に到着したのですが立派な家構えに反比例するかのように閑散としたお通夜でした。キョロキョロしていると一人の中年男性が声をかけて来ました……

wさんの父です。私の疑問を察したのか機先を制して「あーゆう子やったからね……」と言われました。

そして私はwさんの父と色々な事を話しましたが間際に気丈に振るまっておられたwさん父が俯き加減でボソッ囁いた「とすけもんが……」と言う声は今も耳から離れません……そして読経を聞いて帰宅しました。その道中にどうしても一つの事が引っ掻かりずっと考え込んでいました……

それは死因です

飛び降りに至った最大の原因は“覚醒剤”との事でした……

しかしwさんは当時は薬物を嫌っており、私の知る彼は覚醒剤なんかに溺れるような人では決してありませんでした!そんな彼がなぜ覚醒剤に蝕まれたのでしょう……?色々と想像を巡らせましたが答えのでないまま自宅に到着し床に臥しました。

………ん?何か聞こえる?

キイィーーーーン

キイィーーーーン

!!!!!!!!!

劈く様な機械音で目を覚まされました。体全体から汗が滲み、全身を針金で縛られた時みたいに体の自由がききません……恐怖で今にも泣き出しそうな私の目に映ったのは血まみれで哀しい顔をしたwさんでした……

wさんはじっと私を見つめるだけで何もしません。 私は声も出せず徐々に息苦しい感覚に襲われプツリと記憶が途切れてしまいました……

気がつくと朝を迎えてました。

……夢か?色んな事が一気に起こったし無理もないわな………

等と考えながら着替えをしてると不意に異変に気がついてしまいました。墨が浮き上がってました…

入れ墨は体調の変化でミミズ腫れの様になり浮いて来る事がよくある事なのですが、今まで見たことない位に異様に腫れていました………

それもwさんに彫ってもらった画だけが 私はどうしていいか分からないまま時だけが過ぎて行きました。その間に週2~4回、wさんは枕元に現れました……

このままでわ気がおかしくなってしまいそうで、困り果てて非常に霊感の強い友人Nの母親に相談しました。Nの母は普段は霊感を家族以外に見せてくれずお酒が入った時だけ他人にも披露してくれるのです。

その為、私は焼酎を手土産にN宅を訪ねました。そしてほろ酔いになったN母に私は意を決し尋ねました……

N母によると私のもとに来ている霊は何かを伝えたがってる、後悔と謝罪の意識が強く悪意はないが負の感情が強い為に私にとって怖い姿で現れているのだと言う…

このまま放置し続ければ私に害を及ぼすであろうとも言われました。経緯を全て話すとN母はwさんがおかしくなった原因を知りなさい。私の心の中にある本当のwさんをもう一度蘇らせてから改めてwさんの供養に行きなさい。

と言われ早速行動に移しました。 まず私とwさんの空白の時間を知ってるであろう人物と連絡をとろうと思い付きました。スタジオCからwさんの所に移籍したBとYです。入れ墨関係の仲間をあたり二人の所在を調べると……

なんとスタジオCに戻っているらしいのです!……それもwさんが死ぬ数ヶ月も前らしいのです。直ぐにスタジオCに電話しましたが二人とも辞めていると言われ、連絡先を教えてくれと言っても取り合って貰えませんでした……

しかし他に糸口も思い付かずこうなったら直談判しようと思い立ち私はスタジオCに直接乗り込みました。スタジオCは以前と同じ雑居ビルの3階に在りました。中に入るとディスプレイ等に変化はありましたが殆どがあの頃と変わらぬままで、何処か懐かしさを感じました。

受付に立っていたのは見知らぬ店員でしたが私は開口するなりBとYの連絡先を教えろと詰め寄りました。しかし受付の店員は教えれ無いの一点張りです。そんな押し問答をしてると奥から別の人間が出て来ました。

「なんやー?どないしたんや?」そう言いながら出て来た顔には確かに見覚えがありました…

私「あれ!?A君!」

A「あーR君やん!久しぶりやんか~、どないしたんよ?」

私「実はBかYと連絡とりたいんやけど……」

A「んー……もしかしてなんか深い事情とかある?」

私「めっちゃアリアリや!教えて貰うまで帰られへんわ!」

A「わかった、次の予約で終わりやから3時間くらいまっといてくれる?」

私「OK~!じゃ時間潰してまた来るわ」

A君は私がスタジオCに通ってた時代の顔馴染みでwさんを通じて何度も遊んだ人でした。付近で適当に時間を潰していました。その間はわずか5分おきに時計を見てしまう私は急いていました。

頃合いになりスタジオに戻ると仕事を終えたA君に早速詰め寄りました。ところが

A「まーそっちの事情も聞きたいし飯でも食いながら話しよーや」

もどかしい気持ちを抑えながらも近くファミレスに場所を移し私は全てワケをA君に説明したのです。

A「そうか……実は二人とも今は連絡とられへんのや」

私「なんでやねん!?…ウソやろ…」

A「ホンマヤ…せやけどwさんの事はオレが全部知ってるから話たるよ……二人と連絡とられへん理由もな…」

!!!?…予期せぬところから事の真相が明らかになりました。

淡々と話すA君……食いつくように聞き入る私……

全てを聞き終えた後はしばらく放心状態でした…

スタジオCには守りが付いていました。これは珍しい事ではなく日蔭の絡むところにはよくある話です。

ただ、スタジオCに関して言うところの守りと言うのはよく言われるケツ持ちと言ったのとは少し意味合いが違って良く言えば経営者、悪く言えば搾取するモノでした…

wさんが独立するときも個人的な知り合いでCの守りより力のある人物のバックアップがあって成し得たものだったのです……

スタジオCは一番人気のwさんが抜けてからかなり売り上げが落ちたらしく特に指名の少ない彫師は生活が立ちいかない状況だったようで、BとYは更に守りに借金で縛られてかなりつらい状況だったようです。

そんな折にBとYはwさんに助けを求め、またwさんも私の抜けた後釜としての気持ちもありBとYに助け舟を出したそうす。

まずBとYにお金を渡し全ての借金を清算させてその上でバックを間に挟みCの守りを納得させCを離籍したBとYを雇うという形で二人を拾ったそうです。

……ところが暫く経ったある日、wさんのバックについてた方が破門になりバックとしての力を失ってしまいました。そうなると待ってましたといわんばかりにCの守りはwさんに難癖をつけて来たそうです。

このままではどんな目にあわされるか分からない、特にBとYが危ない!そう思ったwさんは別の知り合いに掛け合って間に入ってもらうことになったのですが今度は全く力関係が逆転して、wさん側の方がCの守りよりも立場上は下になりかなり不利な状態の話し合いになるだろうと思われました。

相手の言い分は「BとYが辞めるという話は聞いているが辞めた後にwさんのスタジオで働くとは聞いていない」「最初から引き抜きのつもりだったんだろう!?」と言った内容だったそうです。

そこで突破口としてBとYに対してwさんがお金を貸しているという事実を元にその借金を返すために二人が働いて返すとなったという筋書きで交渉に持っていこうとwさん側では纏まりました。

そして交渉に臨んだののですが………

BとYは「wさんからお金を借りた事実はない」「Cを辞めれるように働きかけてやるからこっちで働け」「借金は間には言って口を聞いてやった仕事料として請求されて困っていた」

などと土壇場で二人はwさんを裏切ったのす!!借用書すら取ってなかったためwさんの側はどうしようもできませんでした………

結果、和解という名の制裁が押しつけられたそうです……

かなり不条理な内容を押しつけられたそうです。wさんは多額の借金を背負わされ、Cの守りのお抱えとして過酷な労働を強いられ、あまつには借金を返済するためと称して客などを相手に覚せい剤の売人までさせられてたそうです……

精神的にも肉体的にも追いつめられたwさんはやがてか薬に手を出していったそうです……

そしてwさんの死の後の出来ごとですがBとYのもとにもwさんが現れていたそうです・・・私のところよりももっと激しい様相だったらしく、スタジオに来たBとYは日に日に追いつめられてる感じだった様子です。

そしてBは失踪し、Yは実家に帰った後に精神病院に入院したとA君は聞いたそうです。守りの人間は殆ど会ってないのでwさんが現れていたかどうかわかりませんが数日前に事故で命を落とされたそうです……

全てを知った私は涙が溢れ、怒りや悔しさが渦巻いていました……

A君と別れ、翌日に私はwさんの実家を訪ね線香を供えさせて戴きお墓の方にもお参りをして供養させてもらいました…

その日の夜でした、また私は夜中に目覚めました……

チッチッチッ、チッチッチッ

チッチッチッ、チッチッチッ

あり得ない非日常的な音に起こされましたが恐怖はありませんでした。

落ち着いた気持ちでいる私の前に穏やかな顔のwさんが現れました……

私「ごめんな…つらい事何も知らんくて…助けられへんくて…」

そっとwさんがほほ笑んだ気がしました…

私がwさんの下を離れたあの日に私を見送ってくれたのと同じ穏やかで温かいwさんの顔でした……

あれから5年程たちましたが今でも命日にはwさんのお墓を参っていす。

命日が近くなるといつも夢に見ます、私が大好きだった音と共に優しい笑顔で私のところに現れるwさんを……

今年も命日が近づいてきたのでそろそろwさんが遊びに来いよ夢の中に言いくる頃でしょか………

チッチッチッ、チッチッチッ・・・・

 

最後まで長文・駄文で申し訳ありませんが読んでいただいた方に感謝いたします

怖い話投稿:ホラーテラー 919さん  

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