短編2
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パルメザンチーズ

Bさんは一人暮らしを始めてから、空腹時にはチーズの粉末を食べて気を紛らわせていた。

スパゲティを食べるときに振りかけるパルメザンチーズだ。容器から直接、口に向かって振りかけて食べるのがBさんの食べ方だった。

「夏の終わり、大学のサークル仲間と旅行に出かけたときに、肝試しをすることになったんだ」

Bさん一行が泊まった旅館は海に面し、逆側には小さな鳥居のある山があった。

肝試しは、昼間のうちにその鳥居の中に線香花火を置いておき、夜に二人一組でそれを取りに行く、というものだった。

そして、そのときに憑かれたのだという。

「鳥居まで登る途中で、何か踏んだんだ。足元を確かめたけど何も無くて、でも氷水に足を突っ込んだみたいな感じだった」

旅行から帰ってから、自分の体が異様に生臭く感じた。友人は全く臭わないと言ったが、いくらシャワーを浴びてもBさんはその生臭さに悩まされた。

いざ寝ようとしてベッドに横になると、何かがうごめくような、呟くような音が聞こえた。

「なるべく誰かと一緒にいるようにしたさ。さすがに怖かったからね。その日も、友達と夜遅くまで飲んで帰ったんだ」

ほろ酔い気分でアパートに帰ってきて、チーズをひと振り口に含んだときだった。Bさんは、チーズと間違えて味塩の小瓶を掴んでいた。

「一気に酔いが冷めたようだったよ。舌の上いっぱいに塩が乗ったんだから」

普通なら吐いてしまうだろうが、酔っていて正しい判断ができなかったのだろう。塩を吐き出さず、そのまま何杯も水を飲んだ。

その夜、Bさんは不思議な夢を見た。

体から赤い蛇が出て行く夢だった。Bさんの腹の上でしばらくウネウネしたあと、窓から外に出て行った。

翌日、Bさんの身体から生臭さが消えていた。寝るときに聞こえていた音も、それ以来無くなった。

「きっとあの蛇が憑いてたヤツだったんだろうな。」

今では、Bさんは旅行から帰ったときは塩を撒くようにしている。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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