短編2
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和服姿の女

中学の時に体験した、不思議な話しです。

入試を控えていた僕は、夜遅くまで勉強をしていました。

一息つけようとベットに倒れ込み、雑誌に手を伸ばした時に、見てしまったんですよね…。

うつ伏せた状態で、ベットの脇にあるサイドテーブルの上の雑誌を取ろうと、顔をその方へ向けた時、サイドテーブルの奥に和服を着た女の人の下半身が……。

『えっ、何で?』

その存在が何なのかを確かめる為に、それの全体を見ようと体を起こそうとしたのですが、生まれて初めて金縛りと言うやつに掛かったみたいで、体を動かす事が出来ませんでした。

その初体験に驚いていて気が付きませんでした。

和服姿のそれが、少しずつ下へと下がっているのを。

なんとかして、この部屋から逃げ出したいと、必死に体を動かそうとするのですが、よく聞く金縛りの体験談と全く同じで、ピクリとも体を動かす事が出来ない事に戸惑いながらも、和服姿のそれが消えていなくなっている事を願い、目線を元に戻したのですが……。

願い叶わず、その姿はまだそこに有りました。

それも、最初に見た時よりも……。

相変わらずうつ伏せ状態で、体を動かせずにいる僕は、段々と和服姿のそれの姿が沈んでいくのに目が離せませんでした。

襟から首に、そしてアゴへ…。

『見ちゃいけない、見ちゃいけない』

段々と高まる恐怖心で、嫌な汗が顔に滲み出して来ました。

女の姿は、床に吸い込まれて行くように、ゆっくりと沈み続けていました。

その女の口、鼻、そして目………。

目を覚ました僕は、時計を見て呆然としました。

ベットに倒れ込んだ時は午前1時過ぎだったのに、今は午前3時半。

決して眠くは無かったのに、2時間半もの間意識を失っていました。それも、うつ伏せのままで。

ベットから起き上がり、部屋から出た僕は、一階の居間のソファーに横たわり、暫くの間天井を見つめていました。

目を閉じる事が出来ませんでした。

目を閉じると、又あの和服姿の女の顔が現れて……。

とても白く、透き通った肌。

頬は全く血の気が無く、そして目…。

大きく見開かれた目は黒く、その奥には闇が広がり、僕はその目を見ている内に気を失ってしまったのです。

祖母にその話をすると、祖母の母親。僕のひいばあちゃんの小姑さんっていう人が、ある日気が狂い、箸で自分の目を何度も、何度も突き刺したのだと聞きました。

「成仏出来んでおるんやろな…」

祖母は悲しそうに手を合わせていました。

その方はその後、原因不明の病気で亡くなったとの事です。

ありがとうございました。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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