短編2
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祖母の小言

つい半年ほど前の話。

金曜の仕事帰り会社の同僚Tと飲んでいると、こんな話をしてきた。

Tの祖母は、ずいぶん前に病を患い亡くなっていた…

Tがまだ中学の頃で、生前は結構口うるさく小言をもらったのだという。

憎たらしいほど元気だったので、早い死に驚きを隠せなかったそうだ。

「それで、つい最近の事なんだけど……」

夜眠ると、祖母が枕元に立ち、延々と何か小言を言っているのだという。

「あの顔は、昔よく見たから分かるんだ。間違いなく、小言を言うときのしかめっ面だね」

しかし、小言の内容はさっぱり聞こえなかった。

口をパクパクして何か懸命に言っているのだが、全く何の事だか分からない。

(久しぶりに出てきて、いきなり小言なんて憎たらしい婆さんだ)

そう思い、無視して目をつむった。

「それ以来、しつこく何回も現れるんだよ…」

Tはそれで困って、私に話そうと思ったようだ。

その数日後だった。

会社でいつものように仕事をしていると、Tの後ろに見知らぬお婆さんが…

会ったことはなかったが、先日話で聞いたTの祖母だなと直感した。

どうやらTや他の人には見えていないようだった。

お婆さんはこちらに気づくと、何やらTの脇腹の辺りを指差し訴えている。

脇腹に何かあるのか…?そう言えば、Tの顔色も何だか優れないような…

必死な顔で訴える様に、何かただならぬものを感じた私は、Tに病院で診査を受けてくる事をすすめた。

すると、Tの肺…その一部に小さな癌が見つかったのだ。

まだ発見が早かったため、なんとかTは無事治療を終えることが出来た。

「いやあ、びっくりしたよ…祖母が亡くなったのと同じ、癌だったんだから」

そう言って、私に何度も礼をしてくる。

「お礼だったら、お婆ちゃんにしてやりな…必死で教えてくれてたんだから」

私がそう言うと、Tは流れる涙をスーツの腕でゴシゴシ拭っていた。

それ以来、Tの祖母が現れる事は一度もないという。

怖い話投稿:ホラーテラー geniusさん  

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