虫の知らせ「ユタカさん」

短編2
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虫の知らせ「ユタカさん」

先ほど「ドン」を投稿したものです。

私は過去に虫の知らせというものを

何度も経験した事があるので

印象的なものをいくつかお話ししたいと思います。

短大生の時の話しです

当時付き合ってた彼の車の中で

「島唄」のカバーを聞いていたら

「ウージの下で八千代の別れ」

というフレーズから、突然涙が溢れ、止まらなくなってしまいました。

彼もびっくり、私も自身の事なのに説明できず、

ワケも分からず。

感情と涙が抑えられず、嗚咽を漏らしてただ、ただ、号泣。

携帯が鳴りました。

父からの着信でした。

当時、私と父の仲は険悪だったので、

無視してしまう事もしばしばあったのですが、

その時は自然と電話に出ました。

私「グス…もしもし…」

父「ユタカさんが死んだよ。」

私は耳を疑いました。

電話の内容は、

葬式はうちでやるから早く帰ってきなさい。

ご家族の方が出てくるから失礼のないように。

…という内容だった。

私は、ショックでただうなずくだけだった。

ユタカさんというのは、

父の会社で昔から働いている従業員さんで

会社の宿舎に住んでるので、小さい時はよく遊んでくれたし、

居て当たり前のおじさんだった。

家族って言っても過言じゃなかったと思う。

だから出身がどこで…なんて考えた事もなかった。

私「ユタカさんのご家族って…?

  ユタカさんてどこ出身なの?」

私は、

私が産まれる前から私の事を知っている

ユタカさんの事を何にも知らなかった。

父は言った。

「沖縄」

その瞬間、ショックで止まってた涙がまたとめどなく溢れた。

ユタカさんは、

私に教えてくれたんだ。

そう思ったら、ユタカさんの愛情をそこらじゅういっぱいに感じた。

ユタカさんの死因は自殺だった。

詳しくは聞かなかったけど。

多分、更年期障害とかうつ病だったんじゃないかと思う。

遺書には「この世は寂しくて、辛い」みたいな事が書いてあったんだって。

私はユタカさんの死因を知って、

死ぬ前に、もっと話しを聞いてあげれば良かったと凄く後悔した。

しきりに兄と私を「ご飯食べに行こう」と誘ってきた事を思い出す。

私は当時、年頃の娘だったから…

兄とオッサンと食事なんてイヤ!

…とか思ってたけど、きっと「寂しくて、辛い人生」の中で、

私と兄を本当の子のように可愛がってたと思う。、

多分、生きがいだったんじゃないかな…

島唄いっぱいに感じたユタカさんの愛情が間違いじゃなければ。

そう思うと、本当に、本当に申し訳ない。

ユタカさん。本当に、親不孝な娘でごめんね。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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