これよりお話するのは、私が中学時代に体験したある不思議な話です。
このお話を話すにはまず、私の隠れた特技についてお話しなければいけません。
当時私は、予知夢を見ることが出来ました。これは、小学生の頃いつの間にか身についたものでした。
例えば、夢である本の内容を見たとします。すると数日後、なにかしらの形でその本を手にしていることが多いのです。
夢が気になり自分で探してみる場合もありましたが、友人や図書室が紹介してくれたものの内容が夢と合致していたことが多かったように思います。
対象は本だけに留まらず、映画やテレビ番組、実際の出来事であった場合もありました。
こんな特技があった為でしょうか、私はここでお話する事以外でも様々な体験をしているのですが、それをお話するのはまたの機会としましょう。
私が中学二年の時でした。
校舎の建て替えに伴い、学校創立以来あった桜並木が伐採されることになったのです。
そこでその桜の木から生徒・先生の人数分のドミノを作り、裏に将来の夢やメッセージを書いて学園祭の際に並べ倒す、という企画が持ち上がりました。
こうして迎えた学園祭で見事にドミノは倒され、学園祭は無事幕を下ろしたのですが…。
数日後、学園祭で使用したドミノの返却が行われました。
ドミノには名前が書くことが義務づけられていたので、返却も容易な筈でした。
ところが。
ひとつだけ、余ったドミノがあったんです。
先生やドミノを企画した生徒たちが散々持ち主を探しましたが、何日経っても持ち主は現れません。
ドミノには、どんなメッセージが書かれているんだろう。
そんな興味を持った私は、先生に問題となったドミノを見せて欲しいとお願いしてみました。
そのドミノを預かっていたのは、私と仲の良かった若い女の先生でした。
これまで見たことのない強張った表情で見せてくれたドミノに、私も何ともいえぬ寒気を感じたことを覚えています。
『よっちゃんへ、幸せになってね』
ドミノにはただ一言、赤いボールペンでそう書かれていました。
「…これ、少し借りても良いですか?」
数秒の沈黙の後、私は先生にそう願い出ていました。
一体誰がこのメッセージを書いたのかを知りたい。
何故か、その時の私は強くそう思ったのです。
予知夢と過去視は違うものだとはわかっていましたが、それでも私は挑戦したい、過去を見たいと願っていました。
怖い話投稿:ホラーテラー 白桜さん
作者怖話