中編4
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逃げられない悪夢

これは俺の友達の話です。

Jは会社に入ってから知り合った同僚でした。

年齢も同じくらいで、お互い一人暮らし。

趣味も合った俺達はすぐに意気投合して、友達になりました。

しかし、お互いの家で宅呑みするくらいまで仲良くなった頃。

俺はJの異変に気づいたのです。

そしてここからお話が始まります。

その頃Jの住んでいたアパートは、築20年くらいの木造2階建てで、階段が左右に一つずつ、合計8部屋の小さなアパートでした。

俺「Jさ。この前は近くのマンションだったよな。なんで引越したんだ?」

J「いやぁ。この話したらひくと思うし・・」

俺「お?面白い話?」

J「どちらかというと恐い話なんだけど、絶対にひかない?」

そう言ってJが重い口を開き、少しずつ話し始めました。

Jが昔の部屋で、ひとり深夜テレビを見ている時だった。

「・・・!・・・!」

かすかに話し声が聞こえてくる。

Jは気のせいかと思い、一応テレビを消して「話し声」の正体を確かめた。

最初はあまり、聞こえなかった「話し声」が徐々に大きくなり、その内容が明らかになってくる。

ドン!

「・・・・おまえが!」

ガガン!

「・やめてぇ・・・」

ガシャーン!

「・・なんだよ・・」

バタバタバタ

「・・・いやぁぁぁ」

それは隣の部屋からの怒鳴り声や、悲鳴だったそうだ。

声の主は3人。

内容や声から「父親」「母親」「息子」だと想像できた。

(なんだよ。隣のこういうトコわかっちゃうのも嫌だなぁ)

そう思いながらも、Jは自分の心臓の鼓動が、少しずつ高鳴っていくのを感じていた。

その怒鳴り声や悲鳴は徐々に大きくなり、内容がエスカレートしていく・・・

Jは固まりながらも、喉を鳴らし、怒鳴り声の内容に聴き入っていた。

手には携帯電話を持ち、いつでも警察に110番通報しようと思っていたらしい。

そして30分くらい経った頃。

その怒鳴り声は最高潮に達した。何かが壊れるような物音が激しくなる。

バタバタバタ

「こわくねーよ!」

ガシャーン!パリーン!

「なめやがってえええ!」

ダダダダダダ

「やめなさい!!ほんとうにやめなさい!!」

J(・・!?・・刃物でも持ったか?)

ドンドン!

「ふざけるなあぁぁぁ!!」

「きゃあああああ!!」

「わああああああああ」

「うわっ!うわあああ!」

「ひぃぃぃぃぃ!!」

「おまえのせいだああああ!」

・・・・・・

数分後・・・

隣からの怒鳴り声や悲鳴は消え

Jの部屋にも静寂が訪れた・・・

Jは事の顛末を知るために、隣の部屋に隣接している壁に耳を当てた。

「・・・が悪いんだ」・・・ザク・・グチャ・・メリ・・グチャグチャ・・ギチギチ・・ギギ・・ザク・・「ちくしょう・・・ちくしょう・・・」

ぼそぼそと父親の声が聞こえ、すぐに何か柔らかいもの刃物を突き立て、切り裂いている様な音を連想していた。

Jはすぐに壁から離れてトイレに逃げ込み、ブルブル震える指で携帯の110番を押した。

「こちら警察です。事件ですか?事故ですか?・・・」

Jは恐怖で震えながらも、懸命に今起こった事件を警察に説明した。

その時は上下の歯が自分の意思とは無関係にガチガチ合わさり、上手く喋れなかったという。

Jはなんとか通報を終え、この後やってくる警察の対応の為に深呼吸しながら、自分を落ち着かせていた。

そこに突然。

ピンポーン・・・

ピンポーン・・・

ピンポーン・・・

ピンポーン・・・

と部屋のチャイムが鳴り響く。

その音にJは一瞬ドキっとしたが、すぐに(ずいぶん早いけど警察官かな?)と思い、玄関のドアの覗き穴を確認した。

!!!

そこには俯きながら玄関の前に立つ。

「手に包丁を持った血まみれの男」がいた。

J(・・・ひっ!なんで?)

怯えながらも、チャイムに返事をしていなかったJは、居留守を決め込もうと、物音をたてないよう静かにドアから後ずさる。

・・・ジャリ

J(!!!)

そんな時に限って玄関の中に微量に落ちていたジャリを踏んでしまう。

Jは息を殺して、玄関を見つめた。

ピンポーン!

「・・・・いるんだろう?」

J「・・・・・」

ガチャガチャ!

「・・・助けてくださいよ」

J「・・・・・」

ドン!ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン!

「あけろ!あけろ!あけろ!あけろ!あけろ!あけろ!あけろ!あけろ!あけろ!あけろ!あけろ!あけろ!あけろ!」

J「ひぃぃぃぃ」

同じリズムで「包丁を手に持った血だらけの男」がドアを叩く。

それと同じリズムと全く変化しない抑揚で同じ「あけろ!」を淡々と繰り返す。

それはDVDみたいに同じシーンを繰り返しているようだった。

Jは腰が砕けながらも、震える手を押さえながらドアのチェーンを掛ける。

J「…ひっ…ひぃ」

…カチャカチャ

ドン!あけろ!

ドン…ドン…

・・・・・・・?

その直後、ドアを叩く音と「あけろ」の声が聞こえなくなった。

ドアを茫然と見つめていた時、何か動いていることに気がついた。

J「・・・え?」

・・・・カチャリ

J「うわああああああああああ!!」

掛けているハズの玄関の鍵が、外側からの力で回りだした。

ドアがもの凄い勢いで開いた!

「バン!」

・・・ガチャン!

さっき掛けたチェーンで不完全にドアが開く!

ガチャン!ガチャン!

「ここをあけ・・・」

J「うわああ…あ、あれ?」

隙間から見える制服・・・・

「ここをあけなさい」

ドアを開けたのは、警察官だった。

…続きます。

怖い話投稿:ホラーテラー 店長さん  

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